最強の聖女は恋を知らない

三ツ矢

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王国陰謀編

国際博覧会と恋の行方~閉会式と真の狙い~

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 そしてとうとう半年に渡った国際博覧会が閉会する日がやってきた。

多くの市民が詰めかけ、フェアリーライトパレスは場内満員となった。

そこに運営に携わった多くの有力者たちが前方の席に着き、王族の入場を待った。

定刻通り、ファンファーレとともに王が二人の王子を伴い、壇上に現れた。

王は市民の歓声に応え、大きく手を振り、静まるのを待った。

無事に初の試みとなる国際博覧会が成功したことを称え、各国の協力に感謝を述べ、これからもこの試みが広がっていくことを望むと語った。そして最後に一言述べて式をこう締めくくった。



「これらの技術が全ての国民に安寧と平和をもたらさんことを」





 王が退場しても名残惜しそうに市民たちが残っていた。それだけ、多くの人たちに影響を及ぼす催しになったことを私は誇りに思った。



(例え残り二か月で消えてしまうとしても、私はこのフェアリーライトパレスを、たくさんの文化や技術を残すことができた)



これはこれからの聖フローレンス王国、引いてはこの西大陸全体にとって産業や経済の発展のために大きく拍車をかけることになるだろう。私がフェアリーライトパレスを見ていると肩を叩かれた。



「マヤ君」

「リアン先輩……」

「四人で話したいことがあるんだ。例のレストランに来てくれないか?」



私は一瞬躊躇した後、頷いた。



リアンに連れられて私はレストランにやって来た。



「デヴィン・ハートウィックの連れだが」

「お待ちしておりました」



ボーイに案内されて私たちは奥の席に着いた。



「閉会式お疲れさまでした、先輩方」

「今日は国民ばかりで他国からの国賓はいなかったからね。私たちも手が空いていたんだよ。エヴァン君は?」

「少し遅れてくると。先ほど連絡が来ました」

「そうか、それじゃあ先に食事を頂こう」

「あの、私は一品で大丈夫です」



そう言うと二人が眉をひそめた。



「マヤさん、少し痩せましたよ。食べた方が良いです」

「そうだよ、マヤ君。食べられる分だけでいいからもう少し食べたまえ」

「本当にちょっと食欲がなくて……マナー違反ですよね、ごめんなさい」



肩を落とす私を見て、リアンもデヴィンも言葉を失った。

三人は無言で食事をした。ちっとも食の進まない私を気遣いながら、二人が様子を見ている。

その時、エヴァンが到着した。



「遅れた」

「エヴァン君、今、食事が始まったところだよ」

「そうか……おい、マヤ。飯食わないのか?」

「えっと……」

「お前、何か一人で抱え込んでいるだろう?」



私は答えに窮した。身を固め、視線を皿の上に落とした。



「どうせあのピンク頭が何か言ってきて落ち込んでるんじゃないか」

「……」



あたらずといえどもも遠からず。だけど、それだけが理由ではない。

私は既にこの世界に残ることをもう諦めている。

それでも、この世界にいたことをわずかでも残したいと思い、国際博覧会を見事やりきった。

それで自分の心を納得させようとしていた。



「図星か」

「マヤ君、あの後レイラ・ジラールが接触してきたのかい?」

「ええ、まあ」



私はレイラとの会話を三人に話した。



「レイラは自分が異世界の住人で、しかも魔女だと認めたんですね?」

「そう」

「それで、あの弱気な手紙はなんなんだ?」

「それは……言葉通りだよ。この世界でみんなのおかげで沢山のことを教えてもらったから、少しでも残りの時間で恩返しをしていきたいなと」



私は淡々と他人事のように説明した。それは偽らざる私の本心でもあった。



「残りの時間だと? 笑わせるな」



エヴァンが私の顎をくいっと持ち上げ、伏せていた顔を無理矢理上げさせられる。



「エヴァン先輩、乱暴は……」

「ちょっと黙ってろ……おい、マヤ。お前はそんな簡単に諦めるような女だったのか?」

「え……」

「優しい先輩と後輩は何も言えないようだから、オレが言ってやる。目を開け、顔を上げろ、腹から声を出せ。お前はこのままでいいのか?」



エヴァンの緑色の目が私を射抜く。



「お前の本当の望みはなんだ? 王国を救うために、バカみたいに努力し続けたお前はどこへ行った? 今回は自分一人が犠牲になれば終わるからそれで良いとでも思っているのか?」



リアンもデヴィンを制止して事態を静観している。



「それは大間違いだ。人間は死ぬまで足掻き続けるべきだ。お前には足がある、手がある、力がある、そして仲間がいる」



私は枯れたと思った涙があふれてきた。



「戦え。最後の一秒まで」



私がポロポロと涙をこぼすとリアンがハンカチをそっと差し出してくれた。



「私も同じ気持ちだよ。君が望む限り、この世界にいてほしい」

「ほら、マヤさん。ご飯を食べましょう。スープが冷めてしまいます」



私はデヴィンに促され、スープを一口飲んだ。温かい液体が食道を通ってお腹へと落ちていく。



「あったかい……」

「悩んでる暇があったら、喰え」



エヴァンは大きな一口で前菜を平らげた。私は背筋が伸びるのを感じた。そして、改めてみんなの顔を見渡す。それぞれが優しく、心配そうな顔で私を気遣ってくれているのが伝わってくる。



「ありがとう、みんな。折角協力してくれたのに失敗しちゃってごめんね」

「僕らの事なんて良いんです。好きでマヤさんに協力しているんだから」

「話を戻そう……レイラ・ジラールの目的はなんだ?前の世界から逃亡してフローレンス王国への移住か?」



エヴァンが肉を大きく切り取ってフォークで突き刺しながら疑問点を挙げた。



「つまりマヤさんの地位を狙っているってことですか?」

「いや、それはレイラ・ジラールの目的であって、召喚させた契約者の望みではない……もしかして、狙いは最初からマヤ君じゃなかったんじゃないのか?」



デヴィンの答えを受けながら、リアンがさらに疑問を投げかけた。それはそもそもの前提をひっくり返すものだった。三人に衝撃が走る。



「私じゃない?こんなに大掛かりな魔法をかけておいて?」

「そうだ。マヤ君は邪魔だったんだ。本命であるライアン王子を排除するのに」



リアンは水差しから水を注ぎながら、冷静に分析した。



「ライアン様が狙い?」



私の声は動揺から微妙に震えていた。自分ではなく、ライアンが危険にさらされているというのだろうか?



「なるほど。ライアン王子を失脚させようとするとマヤさんを始め、僕らの存在が邪魔になりますね」

「そうだ。おそらくイーサン元先生の力ではレイラ・ジラールを留めておける期間は一年ほどだったのだろう。その間にライアン王子を籠絡する時間を稼ぐために、私たちに魔法をかけ、マヤ君の意識を逸らせた」

「それじゃあ、ライアン様は……?」

「レイラ・ジラールの言っていた相手の心を奪う魔法をかけられているんだろう。私たちと違って」

私は複雑な思いに囚われた。私への気持ちが消えたわけではないということの安心感とレイラに心奪われているという絶望感が折り重なるように襲い掛かって来た。

「そうなると、召喚させた人物は自然と浮かび上がってくるな」



エヴァンが肉を飲み込むと口を開いた。



「アッシャー王子」



四人は声を揃えてそう言った。



「アッシャー王子か・・・・・・なるほど。アッシャー王子は第一王妃が亡くなってから後ろ盾を失っている。その上、学生時代の一件でライアン王子の支持率も上がっている」

「ここでライアン王子にスキャンダルを起こさせて、それを解決し名誉挽回ってところですか」

「茶番だな。ライアンとマヤを排除して、アッシャー王子が王位につけばやりたい放題って訳だな」

「マヤ君、もう一度ライアン王子の心を取り戻すために戦ってくれるか?」

「・・・・・・もちろんです。必ず、呪いを解いて見せます」

「我々に幸運を」

「幸運を」



四人はグラスを掲げた。シャンデリアの光をグラスが反射して、私の心に再び光を灯した。
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