最強の聖女は恋を知らない

三ツ矢

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王国陰謀編

魔女の呪い~ニューイヤーパーティー~

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 それから私が目を覚ますとやはりそこはあの豪華な客室のベッドの中だった。



「どうやら、夢だったわけじゃなさそうね」



窓を見ると空は夕焼けに染まっていた。しばらく王都の様子を眺めていると夕食が運ばれてきた。豪勢なメニューに驚いているとリアンがやって来た。



「こんなところで食事をさせてすまないね。でも、出来る限り君の存在を知る者は少ない方が良い。どうぞ、召し上がれ」



私はレンズ豆と鶏肉の煮込みを食べた。豆も鶏肉も柔らかく煮てあり、とても美味しかった。



「これから一体、どうするんです?」

「四日後、城でニューイヤーパーティーがある。おそらく、そこでレイラ・ジラールとアッシャー王子は何か仕掛けるだろう。そして、そのパーティーがライアン王子と接触できる最後のチャンスになるだろう」

「そうかい。皆さんにはとても良くしてもらっているのに、何も思い出せなくてごめんなさいね」

「いいや、構わない。私たちもレイラ・ジラールの魔法をかけられてあなたに冷たくしてしまった経験があるんだよ。私たちはみんな仲間だ。安心してくれ」



リアンという青年は怜悧な美貌を持っているのに、私の前ではとても優しく微笑む。こんな素敵な殿方と私は一体どんな関係だったのだろう。



「あの、私の元の世界ってどんな世界なのかい?」

「ああ、学生時代、君が話してくれたよ。とても平和で文明の進んだ世界で、魔法が存在しないそうだ」



その言葉で私はびっくりした。魔法が無かったら灯りもつけられないし、火だって使えない。それにも関わらず文明が進んでいるなんて。



「それでみんなどうやって生活しているのかい?」

「私も不思議に思って聞いてみたんだ。するとね……」



私は頭痛と戦いながらもリアンの話に耳を傾けた。リアンの目は好奇心で輝き、口元には微笑みが浮かんでいる。



「そんな世界に住んでいたのに、この世界で何故生きていこうと思ったのかね?」

「あなたは素晴らしい才能と能力を持って、この世界に感謝していた。常々こう言っていたよ、『この世界に恩返しがしたい』とね」



(そうか、私はこの世界が好きだったのか)



私は料理と共に今の言葉を咀嚼していった。その言葉はゆっくりと私の身体の中に溶け込んでいくようだった。



 次の日、リアンの屋敷にデヴィンが訪れた。連れてきた針子は、有無を言わさず私の採寸を始めた。



「もうパーティーは明後日ですから、セミオーダーになりますが、必ずパーティーに相応しいドレスを仕上げて見せますよ」

「こんなおばあさんが何を着ても変わらないよ」



私が自嘲気味に笑うと、デヴィンが真剣に反論してきた。



「そんなこと言わないで下さい。今だって綺麗ですよ」



その言葉に嘘や世辞は感じられなかった。それでも鏡の中には年老いた老婆の私と美しい青年が映っている。私は思わず恥ずかしくなり、鏡から目を逸らし、話を変えるためデヴィンに尋ねた。



「ねえ、マヤはどんな人だったんだい?」

「どうって……変な人でした。優しいを通り越してお節介で、努力家というよりワーカーホリックで、気配りは人一倍するくせに鈍感で……」



デヴィンの語るマヤとはなかな難儀な人間だったらしい。それでも、デヴィンの言葉には親しみと温かさがこもっていた。



「私ってそんな人だったのかい?」

「ええ、僕はずっと振り回されっぱなしでした。どんな逆境でも負けない強い人です」



その言葉には憧憬と尊敬の念が感じられた。



(ああ、私はこの世界で精一杯生きていたのね)



私の曲がっていた背筋がピンと伸びる。ここまでしてくれている彼らのためにも、私は過去の自分に恥じぬよう、老いた体に力を込めた。



 当日、私のエスコートは護衛を兼ねてエヴァンが引き受けてくれることになった。



「よろしくね、エヴァンさん」

「任せろ。何があってもオレが守る」

「今の私は魔力も記憶もないただのおばあさんなのに、こんなに素敵な殿方たちに大切にしてもらって。あなた方が迎えに来てくれてから幸せな事ばかりだったわ」

「お前と出会ってから、静かだった毎日が一気に騒がしくなった。だが、それも良い思い出だ」



エヴァンが馬車から降りて、私をそっと馬車から降ろしてくれた。



「安心しろ。お前が覚えていなくても今度はオレが忘れずにいる、さあ、戦場に着いたぞ」



その手の温かさに触れ、私の胸が熱くなった。でも、今はこれからのことに集中しなげれば。私は華やかな舞踏会の世界に雄々しく一歩踏み入れた。最終決戦の始まりだった。



 私たちは人波をかき分けてライアンとアッシャー、レイラの姿を探した。レイラ以外わからない私はいち早く見つけたエヴァンの指さす方向を見た。



「髪の長い方がアッシャー王子で、短い髪でレイラの隣にいるのがライアンだ」



私はライアンを見つけるとずきりと頭が痛んだ。それと同時にレイラと居る姿を見て、胸が塞がる思いがした。会ったことも覚えていない相手に何故こんな風に思うのだろう。

ライアンはレイラを伴い、二階から手を振っている。アッシャーも美女を侍らせて、にこやかに見下ろしている。最前列にいる私たちを見ても、二人は明らかに余裕の表情だった。そして、第二王妃とともに王が現れた。そこにボーイがやってきて、乾杯用のシャンパンを配った。



「レイラ様の故郷のシャンパンです。ライアン王子殿下が今日のためにお取り寄せしました。どうぞ」



会場のそこかしこで噂話が飛び交っている。



「ライアン王子とレイラ様、婚約の発表をするらしいぞ」

「まあ、お似合いのお二人ね」



ちっとエヴァンが小さく舌打ちをする。



「あの毒婦が。ライアンも誑し込まれやがって」

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