最強の聖女は恋を知らない

三ツ矢

文字の大きさ
149 / 198
大陸放浪編

戦地~打開策~

しおりを挟む
 その夜、私は女性将校用のベッドで眠らずに考え続けた。

そして明け方一つの考えが浮かんだ。



「地下資源の採掘場の入り口を封印する?」



ルークとエヴァンはその言葉を聞いた時、驚きと呆れたような表情を浮かべた。



「そうです。一度採掘場を封印してしまえば戦争をする理由がなくなります。そのタイミングで終戦協定を結んで、話し合いの結果が出たら解除するというのはどうでしょうか?」

「無茶苦茶だ」

「だが、効果的かもしれない。両国とも疲弊し、戦争を止める理由を探している今なら可能性がある……上層部に掛け合ってくる」



エヴァンは食事をそのままに席を立った。



「あんた、そんなこと一晩中考えて寝不足なのか?」

「え、わかりますか?」

「隈が出来てる……本当にどうしようもないな、あんたの人助け癖は」

「呆れましたか?」

「とっくに。今はもう慣れた。あんた前におれのこと過大評価しているって言ったけど、あんたこそ自分の能力を過信し過ぎだよ。ごっそさん」



そう言い残してルークは立ち去った。

私はすっかり冷えた食事を口に運んだ。
 その後、一時間ほどして帰り支度をしていた私の元をエレナ軍曹が現れた。



「至急、作戦本部にお越し願いたいとの伝令が入りました。こちらにどうぞ」



一際立派なテントにはずらりと連合軍の上層部が集まっていた。

連合軍らしくそれぞれ来ている軍服が違う。

その末席にエヴァンが直立不動し、手前の席にルークが座っていた。



「マヤ・クラキ殿、どうぞおかけください」

「ありがとうございます」

「それでは単刀直入にお尋ねしますが、エヴァン特務少尉から聞いた終戦案は貴方が考案されたということで間違いありませんか?」

「その通りです」

「短いながらも我々も検討した結果、有効な手段だという結論に達しました。しかし採掘場の入り口は、戦場の真っ最中にあり、両国が破れないほどの強力な封印を施す必要があります」



その言葉にルークはピクリと眉を動かす。



「それはもしや……我々に封印をしろと仰るのですか?」

「いかにも。青嵐の騎士ルーク殿と救国の聖女マヤ・クラキ殿ほどの魔力を持つ者は他におりません。この西大陸において最高峰の魔術師でしょう。ご助力願えませんでしょうか?」

「お断りします」



ルークの答えはにべも無かった。



「我々は西大陸の危機を救うべく、旅をしています。万が一のことがあれば、それはハーパー連邦とアーライ共和国だけに被害は留まりません。それは我々の任務ではなく、連合軍のなすべきことです。我々の旅の重要性をご理解いただきたい」



そこでルークは席を立った。



「ほら、行くぞ」



私にも離籍するよう促した。

私は黙ったまま、その場に座り続けていた。

ルークは苛立ったように私の手を取り、無理矢理立ち上がらせようとした。その手を振り払う。



「嫌です……ここでまた多くの人が死んでいくのを見るのは」

「まだそんなこと言ってるのか?」

「ペネロペ都市国家で嵐を食い止めた時、私は後悔しました。自己満足で行動してルークさんに迷惑をかけてしまったことを。だから、今度は自分でやります」

「あんたがいなければ西大陸全土が終わってしまうんだぞ?」

「命の価値は数で決まるものではありません。私が立ち向かわなければならないのは、いつだって未来のためです」



ルークは心底呆れた顔をした。



「わかったよ……それじゃあ、作戦会議と行きましょうか?」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...