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大陸放浪編
英雄の回想~神託~
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その日、神聖エウロパ公国に立ち寄ったのはほんの偶然だった。
しかし、後々考えるとこのことも運命の導きだったのかもしれない。
教会に入り、祈りを捧げていた。
おかしいか?
おれは神様という概念どうこうというより、それを支えてきた文化やそれらに敬意を示す人々の意志を尊重している。
その英知の結晶の一つがこの荘厳な教会だ。
この静寂の中、自己との対話を行う。
これを祈りと呼べるかどうかは謎だが。
おれは瞑想を終え、立ち上がろうとした時、教会に老人がやってきた。
顔見知りと言えば、顔見知りである。
四十年ほど前、異教徒にこの教会を破壊されそうになった時に、守ったのはおれなのだから。
「ルーク殿、よくおいでになった。今しがた伝令を飛ばそうと思っていた。まあ、捕まるとは思っていなかったが……」
「お久しぶりでございます、教皇。私にご用件とは何かございましたか?」
教皇と呼ばれた老人は長い白い祭服を皺にならないようにゆっくりとおれの横に腰掛けた。
「神託が下った。世界樹が朽ちる。世界は眠りに閉ざされる。その期間はあと一年」
「なんと、世界樹が……」
世界樹が何たるかはおれも知っていた。
これでも結構読書好きなのだ。
しかし、そんなことはどうだっていい。
世界樹は西大陸の枢軸で天を支え地に根を張り、西大陸の生物に魔力を供給する存在である。
確かに一大事だが、教皇の表情にはそれだけではない深い悲壮感が刻まれていた。
「世界樹は軸を必要としておる。それは精霊や妖精と縁が深く、強い魔力を持ち、世界を愛する心を持つ者だけだ。そして今回選ばれたのはルーク・ハワード、そしてマヤ・クラキの二人」
「……わたしが、軸になれと仰るのですか?」
おれは息をのむ。
咄嗟に言葉が出なかった。
教皇は身を縮めるように身体をかがめ、小さく頷いた。
「二人のいずれかが世界樹に取り込まれなければ、世界樹は終わりでしょう」
おれはその瞬間『嫌だ』と思った。
そりゃあ、そうだろう?
世界のために死んでくれって言われたってすぐに納得できるか。
おれはおれなりに自分の人生を謳歌しているんだ。
「もう一人のマヤ・クラキとはどういった人物なのですか?」
「フローレンス王国にいる異邦人の娘だ。妖精王の加護を得ておる。しかし、今その力は万全ではない……会いに行く気かね?」
「ええ、このまま座して世界樹が朽ちるのを待つことはできません」
「そうさな。ルークよ、我が古き知己。しかし、時として運命は残酷な軌跡を描くであろう」
「我が友よ、私は幾多の試練を乗り越えてきました。世界の危機など大したことではありません。どうぞ、心安らかに、人々のため、未来のために祈りを捧げてください」
おれが静かに席を立つと教皇は祈りを囁いた。
こうしてフローレンス王国へと旅立った。
しかし、後々考えるとこのことも運命の導きだったのかもしれない。
教会に入り、祈りを捧げていた。
おかしいか?
おれは神様という概念どうこうというより、それを支えてきた文化やそれらに敬意を示す人々の意志を尊重している。
その英知の結晶の一つがこの荘厳な教会だ。
この静寂の中、自己との対話を行う。
これを祈りと呼べるかどうかは謎だが。
おれは瞑想を終え、立ち上がろうとした時、教会に老人がやってきた。
顔見知りと言えば、顔見知りである。
四十年ほど前、異教徒にこの教会を破壊されそうになった時に、守ったのはおれなのだから。
「ルーク殿、よくおいでになった。今しがた伝令を飛ばそうと思っていた。まあ、捕まるとは思っていなかったが……」
「お久しぶりでございます、教皇。私にご用件とは何かございましたか?」
教皇と呼ばれた老人は長い白い祭服を皺にならないようにゆっくりとおれの横に腰掛けた。
「神託が下った。世界樹が朽ちる。世界は眠りに閉ざされる。その期間はあと一年」
「なんと、世界樹が……」
世界樹が何たるかはおれも知っていた。
これでも結構読書好きなのだ。
しかし、そんなことはどうだっていい。
世界樹は西大陸の枢軸で天を支え地に根を張り、西大陸の生物に魔力を供給する存在である。
確かに一大事だが、教皇の表情にはそれだけではない深い悲壮感が刻まれていた。
「世界樹は軸を必要としておる。それは精霊や妖精と縁が深く、強い魔力を持ち、世界を愛する心を持つ者だけだ。そして今回選ばれたのはルーク・ハワード、そしてマヤ・クラキの二人」
「……わたしが、軸になれと仰るのですか?」
おれは息をのむ。
咄嗟に言葉が出なかった。
教皇は身を縮めるように身体をかがめ、小さく頷いた。
「二人のいずれかが世界樹に取り込まれなければ、世界樹は終わりでしょう」
おれはその瞬間『嫌だ』と思った。
そりゃあ、そうだろう?
世界のために死んでくれって言われたってすぐに納得できるか。
おれはおれなりに自分の人生を謳歌しているんだ。
「もう一人のマヤ・クラキとはどういった人物なのですか?」
「フローレンス王国にいる異邦人の娘だ。妖精王の加護を得ておる。しかし、今その力は万全ではない……会いに行く気かね?」
「ええ、このまま座して世界樹が朽ちるのを待つことはできません」
「そうさな。ルークよ、我が古き知己。しかし、時として運命は残酷な軌跡を描くであろう」
「我が友よ、私は幾多の試練を乗り越えてきました。世界の危機など大したことではありません。どうぞ、心安らかに、人々のため、未来のために祈りを捧げてください」
おれが静かに席を立つと教皇は祈りを囁いた。
こうしてフローレンス王国へと旅立った。
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