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大陸放浪編
英雄の回想~苦悩~
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おれたちの旅は基本的に強行軍だった。
雨風は基本的におれの魔法で制御できたし、マヤは野宿でも文句を言わなかった。
思えばヨットの旅でもあんな質素な食事でも黙って食べていた。
いつもは上流階級の一人として豪勢な食事をとっていただろうに。
その日も大雨の中、おれたちは橋を渡ろうとした。
しかし、増水した川に流されて橋は跡形も無かった。
仕方なく引き返すことにしたが、一つ前の町の宿屋は満室だった。
この大雨の中、野宿するわけにもいかず、おれたちは同室で眠ることになった。
叩きつけるような大雨の音の中で、何となく眠れなかった。
野宿やヨットの旅で二人っきりなのは慣れているはずなのだが、かすかな呼吸や衣擦れの音すらも耳をすませてしまう。
おれはおもむろにマヤに声をかけた。
マヤも眠れずにいたようだった。
おれはずっと疑問だったことを尋ねた。
「元の世界に未練は無かったのか?」
「両親は優秀な兄と綺麗な妹が大切で、私に無関心でした。恋人もいなかったし、数少ない友人たちとも疎遠でしたし……この世界に来るまで気が付かなかったけれど孤独だったんです」
孤独か。
この世界でのマヤは地位も名声も得て、マヤを大切に想っている人間だっている。
それでもマヤが異邦人であることは変わらない。
その魔力も召喚能力も妖精の加護も、マヤを孤高の存在にしている。
そして、その全てのせいで軸の候補に選ばれてしまった。
「ルークさんのご家族はどうしてるんですか?」
「母親は死んだ。父親は顔を見たことも無い。母親は召喚士だった」
「アスターファさんですか?」
おれはその言葉には返事をしなかった。
「ある時国を追放された。それから行商人の護衛として、おれを連れていろんな国を巡った。だから学校にも行ったことは無い。母と周りの大人に言葉と算数を教わって、あとは本から学んだ」
その頃のことが脳裏に蘇る。
この髪といつまでも歳を取らないこの体質のせいで、随分気味悪がられた。
それでも人間というものを嫌わずにいられたのは、旅の仲間たちがおれを受け入れ、母が助けた人たちから感謝されたからだ。
「母親が歳を取って旅を続けられなくなって、最期を看取った。それからまた今度は一人で旅に出た……だから、誰かと一緒に旅をするのは本当に久しぶりなんだ」
老いた母を小さな平和な村で看取った。
最期まで優しく、おれの未来を案じてくれた。
母の葬儀を終えると、おれは家を引き払い旅に出た。
排斥された記憶からどこかに定住せず、母の影響で困っている人間を見放すこともできなかった。
おれもまた名声を得たが、孤独な旅路でもあった。
そんなことを思い返していると、マヤが口を開いた。
「つねによい目的を見失わずに努力を続ける限り、最後は必ず救われるって言葉が元いた世界にありました。私たちもこの大陸を絶対に救いましょう」
その言葉を聞いた時、おれは心の中で叫んだ。
おれかマヤのどちらかが死ななければ、世界が終わってしまうのだと。
欺き続けてきた罪悪感がおれの心に影を落とす。
それと同時にマヤと旅を続けたい、生き続けたいという気持ちが強く芽生えていることに気が付いた。
神様だか運命だか知らないが、そいつは残酷だ。
なぜ、おれとマヤを選んだのだろうか。
この西大陸には山ほど人がいるのに、どうしておれたちなんだろう。
おれの怨嗟は雨の音に消されて、マヤには届かなかった。
雨風は基本的におれの魔法で制御できたし、マヤは野宿でも文句を言わなかった。
思えばヨットの旅でもあんな質素な食事でも黙って食べていた。
いつもは上流階級の一人として豪勢な食事をとっていただろうに。
その日も大雨の中、おれたちは橋を渡ろうとした。
しかし、増水した川に流されて橋は跡形も無かった。
仕方なく引き返すことにしたが、一つ前の町の宿屋は満室だった。
この大雨の中、野宿するわけにもいかず、おれたちは同室で眠ることになった。
叩きつけるような大雨の音の中で、何となく眠れなかった。
野宿やヨットの旅で二人っきりなのは慣れているはずなのだが、かすかな呼吸や衣擦れの音すらも耳をすませてしまう。
おれはおもむろにマヤに声をかけた。
マヤも眠れずにいたようだった。
おれはずっと疑問だったことを尋ねた。
「元の世界に未練は無かったのか?」
「両親は優秀な兄と綺麗な妹が大切で、私に無関心でした。恋人もいなかったし、数少ない友人たちとも疎遠でしたし……この世界に来るまで気が付かなかったけれど孤独だったんです」
孤独か。
この世界でのマヤは地位も名声も得て、マヤを大切に想っている人間だっている。
それでもマヤが異邦人であることは変わらない。
その魔力も召喚能力も妖精の加護も、マヤを孤高の存在にしている。
そして、その全てのせいで軸の候補に選ばれてしまった。
「ルークさんのご家族はどうしてるんですか?」
「母親は死んだ。父親は顔を見たことも無い。母親は召喚士だった」
「アスターファさんですか?」
おれはその言葉には返事をしなかった。
「ある時国を追放された。それから行商人の護衛として、おれを連れていろんな国を巡った。だから学校にも行ったことは無い。母と周りの大人に言葉と算数を教わって、あとは本から学んだ」
その頃のことが脳裏に蘇る。
この髪といつまでも歳を取らないこの体質のせいで、随分気味悪がられた。
それでも人間というものを嫌わずにいられたのは、旅の仲間たちがおれを受け入れ、母が助けた人たちから感謝されたからだ。
「母親が歳を取って旅を続けられなくなって、最期を看取った。それからまた今度は一人で旅に出た……だから、誰かと一緒に旅をするのは本当に久しぶりなんだ」
老いた母を小さな平和な村で看取った。
最期まで優しく、おれの未来を案じてくれた。
母の葬儀を終えると、おれは家を引き払い旅に出た。
排斥された記憶からどこかに定住せず、母の影響で困っている人間を見放すこともできなかった。
おれもまた名声を得たが、孤独な旅路でもあった。
そんなことを思い返していると、マヤが口を開いた。
「つねによい目的を見失わずに努力を続ける限り、最後は必ず救われるって言葉が元いた世界にありました。私たちもこの大陸を絶対に救いましょう」
その言葉を聞いた時、おれは心の中で叫んだ。
おれかマヤのどちらかが死ななければ、世界が終わってしまうのだと。
欺き続けてきた罪悪感がおれの心に影を落とす。
それと同時にマヤと旅を続けたい、生き続けたいという気持ちが強く芽生えていることに気が付いた。
神様だか運命だか知らないが、そいつは残酷だ。
なぜ、おれとマヤを選んだのだろうか。
この西大陸には山ほど人がいるのに、どうしておれたちなんだろう。
おれの怨嗟は雨の音に消されて、マヤには届かなかった。
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