楽園異能力者

那月いくら

文字の大きさ
18 / 28
3章 実技授業

16話

しおりを挟む
 『おい…もう少し自分を信じた方がいいぞ…でないとこの先痛い目見るぞ……。』琉乃愛の頭をかすめていたのは、彼の言葉だった。
 私は、気になり、樺音に聞いてみる。
 「ね…樺音、この前戦った、久我咲君のこと教えてくれない?」
 「うん…いいけど………、あんまり、いい人、だとは言えないよ?」
 「彼の名前は、久我咲龍桜くがさきりお。中等部唯一のランク2Sで、セイスティアだ。空間を自由自在に操る"空間スペース"のステラ。実力もあり、ステラが強すぎることから、攻撃サークルに所属。彼の性格からみるに、あまりいい噂は、聞いたことがないよ。」樺音が人の悪いところを話すのは、初めてだった。
 「へー………久我咲…龍桜ね。ありがと!樺音!」私は、Patを開き、彼の事をもう少し調べた。
 「ーー!!」私は、驚きの真実に動揺して、Patを手から滑り落としてしまった。
 彼の性格があんなになった理由も、全て記載されていたからだ。

 彼は、4歳にして、ステラで町全体を異空間に消し去った。当時は、意図的に行ったものだろうと思われていたが、彼の年齢を考えると、ステラのコントロール不能で起きた事件として片付けられたらしい。そのこともあって、彼は長いことステラに苦しめられていた。だから、誰にでも、心を開かない性格になってしまったのだ。
 
 この話は、彼のほんの一部に過ぎなかった。

 そうとは、知らない琉乃愛だったが、龍桜の気持ちには、少し、共感出来た。



     ※        ※           ※

 「琉乃愛ー今日、実技試験あるよー」私に泣きついてきたのは、蘭と迅だった。2人いるせいか、声が騒ぎ並にうるさいのだ。
 「ちょっと待って、実技試験って何?」2人は、キョトンとした顔をしていた。
 「ほら、先生がこの前言ってたじゃん。実技試験ってのは、実技授業で行ったことを活かすテストのことだよ。要するに、先生の用意した問題に合格するだけだって。毎月行われるらしいよ。」私は、と聞いた途端、不安を感じていた。琉乃愛は、今でも、ステラのコントロールを練習しているが、コントロールに成功した日は、数えきれるほどしかない。ましてや、先生の用意する問題に合格するなど到底できないと思う。
 「私、1人で練習してくる!」琉乃愛は、鞄を手に更衣室に向かった。動きやすい服装になるためだ。確か鞄には、訓練服と別に、もう1つ、学園仕様の体操服があったと思う。
 私は、体操服を着てみた。
 理事長の用意してくれていた体操服は、サイズがぴったりだった。

 琉乃愛は、更衣を済ませると、すぐさま、部屋を出た。体育館には、誰もいなくて、ステラ練習ロボットだけ置いてあった。
 ステラ練習ロボットとは、自分の実力に乗じて対戦をしてくれるロボット。自己修復がついているから壊れることはない。いわば、サンドバッグのような物だ。

 私は、早速、ステラをロボットにぶつけてみるが、どれも、人が殴ったような痕跡しか残らない。次に、ロボットの腕の関節目掛けて、ステラを使ってみた。すると、あの時と違って、ロボットの腕がとれた。少し上手くいって舞い上がりながら、次の攻撃を仕掛けた。

 その時だった。

 「え?ステラがでない……」私は、驚き、周りを見渡していると、体育館の入口に、龍桜がたっていたのだ。
 「俺と少し、対戦してみないか?」彼の顔は、ずっと真顔の状態だった。
 「いいよ……練習がてらやってあげる。」少し、上から目線だったが、彼は、気にしていないようだ。


 「本気でかかってきてよ……!」私は、自分の最大限を出し切ろうとしていた。今日が、試験なのに。そこまで考える余裕すらなかったからだ。

 彼は、私のステラを軽々と異空間に消し去り、空間を行ったり来たりして、攻撃してきた。攻撃の方法を見ていたが、彼は、ありえないことまで可能にしている。 空間の裂け目を利用し、カッターナイフのように扱っていたのだ。私は、その攻撃をステラで圧縮するので精一杯だったためか、背中に蹴りを入れられる隙を与えてしまった。
 「かはっ……!」 強い衝撃で、一瞬気を失いかけて、体がよろめいたが、何故か、彼が受け止めてくれた。

 「勝負………ありだな………。聞いたぜ、お前がここに来た理由。あのまま、子供を助けになんか行かなければ、ここに来ることにだってならなかったのにな…。まぁ、俺みたいにならないといいけど…。」彼は、それだけ言い残して、体育館を出ていった。同時に、私も、気を失ってしまったのだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...