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「も、もふもふが……」
落胆を隠しもせずに俺が唖然としていれば、美丈夫もといテディが苦笑した。
「どうやらこちらの姿はお気に召さなかったようだね」
そうしてぽんっと再び栓が抜けたような音と共に煙に包まれたかと思うと、元のぬいぐるみ姿に戻りくるりと空中で一回転。綺麗にベッドの上に着地した。
「ご主人様~! ほら! 思う存分愛でて!」
きゅるんっとつぶらな瞳を輝かせたかと思えば、両手を広げ抱っこ待ちポーズをテディが決めた。
二面性がハッキリとしている。警戒心をにじませて見つめてみれば、
「見目相応の振る舞いってものがあるだろう?」
なんて言ってさらにあざとくきゅるるんっと可愛らしさをアピールしてくる。
これには流石の俺も抗えまい。再度テディを抱きしめ、俺は無心でモフりはじめた。
「うう……っ」
これだよこれ。このもふもふ感が堪らない。
「面白いご主人様だなぁ、普通ぬいぐるみよりも人型の方が喜ばれるんだけど」
そりゃあ、確かにお嬢さん方ならイケメンの方がいいだろう。でも残念ながら俺はおっさんで、求めているのは野郎ではなくもふもふなのだから致し方ない。
「……精霊ってなに?」
ある程度モフり満足した俺は話を元に戻すことにした。ちなみに、モフる事はやめていない。
「うーん。そこからかぁ……なんて言えばいいのかな? ご主人様は魔法が使えるよね?」
「うん」
「それぞれの魔法に属性があるよね?」
「……5属性のこと?」
「そうそう。精霊っていうのは、その5属性をさらに細かくした魔力が集まってできた存在だよ」
だからほら、とテディが片手を上げたかと思えば、パキパキっと氷魔法を使った時独特の音がして、その手の先にはよく俺が魔法の練習でつくっている氷の薔薇があった。
「ご主人様がよくつくってるのを真似させてもらったよ。こんな風に、精霊は自身の属性魔法を自由に使うことができる。もちろん、それぞれの精霊によって力の差があるのと、必ずし自身の属性魔法しか使えないというわけでもない」
今度はひゅんっと風の音がしたかと思えば、氷の薔薇が粉々に砕けた。光を反射してテディの周りが少しの間だけキラキラと輝く。
「で、ボクはそんな精霊の中でも格が高い大精霊というわけさ」
すごいだろう。とばかりにテディが小さな胸を張った。
「そう言われても……私テディ以外の精霊見たことないし」
「ううん、基本精霊って奴らはあんまり人前に出ないからね。それもしかたないか」
「そうなの?」
「実際ボク以外見たことないだろう?」
まぁその通りだから、素直に頷く。
「実は外に出てみるとそこら中にいるんだけどね」
なんでも普段は自分達と同じ精霊以外には見えないようにしているらしい。
そうして世界を漂って自由気ままに過ごしていて、たまに気に入った者に力を貸したりしている。
「そうしてボクがご主人様を気に入って力を貸したりしているってわけさ。氷魔法だけ、他の魔法を使う時よりも魔力の消費が少なくて済むだろう? まぁ、元々ご主人様が得意な属性だったっていうのも理由の一つだけど」
確かに言われてみれば魔法の練習に使っているとだけあって他の魔法よりも得意だし、魔力の消費量も少なかった気がする。
「なんで私がご主人様?」
「そんなの簡単さ!」
人型ならばきっと満面の笑みを浮かべているのだろう。そんな雰囲気を感じられる。
「ボク達精霊は面白いものや、綺麗なものが大好きなんだよ!」
ふふん、となぜか得意げにテディは続ける。
「その点ご主人様は少し変わり者で面白いし、魔力も美味しい。得意な属性だって一緒だし、何より見目麗しい!」
ボクの好みだったからね。なんて言われてもはぁ、としかいいようがない。
「でも私、テディと会ったときの記憶ないよ?」
「……それにはちょっと深い訳があってね、ボクは今このぬいぐるみの目の部分に宿っているんだよね」
目を手で指し示したが、指がないからただ手で隠しているように見えなくもない。
「これにはボクもびっくりしたんだけど、この目に使われてるの、すごく希少な魔法石だよ」
何せ弱っていたとはいえ、仮にも大精霊であるこのボクを宿しておけるくらいだからね。
ちなみに魔法石とは、魔法や魔力を宿すことができる石のことである。
「実はこの世界を漂っている間にちょっとヘマをやらかしてね。弱ってた時にたまたまこの宿石を見つけて、さらに魔力まで補給できるとなれば、……ね?」
ね? じゃない。
可愛らしく小首を傾げているが、やってることはめちゃくちゃだ。何せ無許可で俺の知らぬ間に魔力を頂戴してることになるのだから。
「その魔力って、もしかして私の?」
「そうそう。でもただ単に貰っていたって訳じゃないよ? 人の子にしては多い魔力を、溢れないようにボクが管理していたからお互いに損はない関係さ」
だから許して、とばかりにうるうる目をこちらに向けてきた。なんて卑怯な。
「それに弱っていたのも確かだしね」
俺が手にする前、リームを含めた使用人達が俺へのプレゼントとして用意していた時にはすでに宿っていたらしい。
そうして俺が受け取って、名前を名付けた時に契約完了。それから俺が10歳になるまでの5年もの間、回復に費やしたようだ。
「全盛期とまではいかないけど、ようやく自由に動けるようになったところなんだよ」
との話だ。
それならまぁ、しかたないことなのか? いや、それにしたって急すぎる。もう少しタイミングというものがあるはずだ。
「理解できた?」
「うん」
悔しいことに内容は確かにわかりやすかった。さすが大精霊なだけある。
「というわけで、またまた改めましてよろしくね! ご主人様」
そうあざとくポーズを決めたテディを前に、まぁ、今まで一緒にいたテディだし? もふもふだし? ……別によろしくしてもいいだろう。そう俺は自身に言い聞かせた。
落胆を隠しもせずに俺が唖然としていれば、美丈夫もといテディが苦笑した。
「どうやらこちらの姿はお気に召さなかったようだね」
そうしてぽんっと再び栓が抜けたような音と共に煙に包まれたかと思うと、元のぬいぐるみ姿に戻りくるりと空中で一回転。綺麗にベッドの上に着地した。
「ご主人様~! ほら! 思う存分愛でて!」
きゅるんっとつぶらな瞳を輝かせたかと思えば、両手を広げ抱っこ待ちポーズをテディが決めた。
二面性がハッキリとしている。警戒心をにじませて見つめてみれば、
「見目相応の振る舞いってものがあるだろう?」
なんて言ってさらにあざとくきゅるるんっと可愛らしさをアピールしてくる。
これには流石の俺も抗えまい。再度テディを抱きしめ、俺は無心でモフりはじめた。
「うう……っ」
これだよこれ。このもふもふ感が堪らない。
「面白いご主人様だなぁ、普通ぬいぐるみよりも人型の方が喜ばれるんだけど」
そりゃあ、確かにお嬢さん方ならイケメンの方がいいだろう。でも残念ながら俺はおっさんで、求めているのは野郎ではなくもふもふなのだから致し方ない。
「……精霊ってなに?」
ある程度モフり満足した俺は話を元に戻すことにした。ちなみに、モフる事はやめていない。
「うーん。そこからかぁ……なんて言えばいいのかな? ご主人様は魔法が使えるよね?」
「うん」
「それぞれの魔法に属性があるよね?」
「……5属性のこと?」
「そうそう。精霊っていうのは、その5属性をさらに細かくした魔力が集まってできた存在だよ」
だからほら、とテディが片手を上げたかと思えば、パキパキっと氷魔法を使った時独特の音がして、その手の先にはよく俺が魔法の練習でつくっている氷の薔薇があった。
「ご主人様がよくつくってるのを真似させてもらったよ。こんな風に、精霊は自身の属性魔法を自由に使うことができる。もちろん、それぞれの精霊によって力の差があるのと、必ずし自身の属性魔法しか使えないというわけでもない」
今度はひゅんっと風の音がしたかと思えば、氷の薔薇が粉々に砕けた。光を反射してテディの周りが少しの間だけキラキラと輝く。
「で、ボクはそんな精霊の中でも格が高い大精霊というわけさ」
すごいだろう。とばかりにテディが小さな胸を張った。
「そう言われても……私テディ以外の精霊見たことないし」
「ううん、基本精霊って奴らはあんまり人前に出ないからね。それもしかたないか」
「そうなの?」
「実際ボク以外見たことないだろう?」
まぁその通りだから、素直に頷く。
「実は外に出てみるとそこら中にいるんだけどね」
なんでも普段は自分達と同じ精霊以外には見えないようにしているらしい。
そうして世界を漂って自由気ままに過ごしていて、たまに気に入った者に力を貸したりしている。
「そうしてボクがご主人様を気に入って力を貸したりしているってわけさ。氷魔法だけ、他の魔法を使う時よりも魔力の消費が少なくて済むだろう? まぁ、元々ご主人様が得意な属性だったっていうのも理由の一つだけど」
確かに言われてみれば魔法の練習に使っているとだけあって他の魔法よりも得意だし、魔力の消費量も少なかった気がする。
「なんで私がご主人様?」
「そんなの簡単さ!」
人型ならばきっと満面の笑みを浮かべているのだろう。そんな雰囲気を感じられる。
「ボク達精霊は面白いものや、綺麗なものが大好きなんだよ!」
ふふん、となぜか得意げにテディは続ける。
「その点ご主人様は少し変わり者で面白いし、魔力も美味しい。得意な属性だって一緒だし、何より見目麗しい!」
ボクの好みだったからね。なんて言われてもはぁ、としかいいようがない。
「でも私、テディと会ったときの記憶ないよ?」
「……それにはちょっと深い訳があってね、ボクは今このぬいぐるみの目の部分に宿っているんだよね」
目を手で指し示したが、指がないからただ手で隠しているように見えなくもない。
「これにはボクもびっくりしたんだけど、この目に使われてるの、すごく希少な魔法石だよ」
何せ弱っていたとはいえ、仮にも大精霊であるこのボクを宿しておけるくらいだからね。
ちなみに魔法石とは、魔法や魔力を宿すことができる石のことである。
「実はこの世界を漂っている間にちょっとヘマをやらかしてね。弱ってた時にたまたまこの宿石を見つけて、さらに魔力まで補給できるとなれば、……ね?」
ね? じゃない。
可愛らしく小首を傾げているが、やってることはめちゃくちゃだ。何せ無許可で俺の知らぬ間に魔力を頂戴してることになるのだから。
「その魔力って、もしかして私の?」
「そうそう。でもただ単に貰っていたって訳じゃないよ? 人の子にしては多い魔力を、溢れないようにボクが管理していたからお互いに損はない関係さ」
だから許して、とばかりにうるうる目をこちらに向けてきた。なんて卑怯な。
「それに弱っていたのも確かだしね」
俺が手にする前、リームを含めた使用人達が俺へのプレゼントとして用意していた時にはすでに宿っていたらしい。
そうして俺が受け取って、名前を名付けた時に契約完了。それから俺が10歳になるまでの5年もの間、回復に費やしたようだ。
「全盛期とまではいかないけど、ようやく自由に動けるようになったところなんだよ」
との話だ。
それならまぁ、しかたないことなのか? いや、それにしたって急すぎる。もう少しタイミングというものがあるはずだ。
「理解できた?」
「うん」
悔しいことに内容は確かにわかりやすかった。さすが大精霊なだけある。
「というわけで、またまた改めましてよろしくね! ご主人様」
そうあざとくポーズを決めたテディを前に、まぁ、今まで一緒にいたテディだし? もふもふだし? ……別によろしくしてもいいだろう。そう俺は自身に言い聞かせた。
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