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127.モジャッターパオード再びだよ
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ウータは無事に三回戦を突破した。
審判と揉めたりしているので、厳密には無事かどうかは知らないが……順調に進んでいた。
「そういえば……僕って、どうして武闘大会に出場しているんだっけ?」
大きな問題があるとすれば……試合時間のための拘束時間が長すぎて、ウータが自分の目的を見失いかけていることである。
「いや……『土』の女神アースに会うためですよ。どうして、忘れているんですか?」
隣に並んだステラが呆れた様子でツッコんだ。
二人はミスリルバレーの大通りを歩いている。試合が終わったので、帰る前に屋台で食事でもと思って物色しているところだ。
「武闘大会に優勝することができれば、女神アースと謁見することができるんです。そのために、ウータさんは出場したんですよ?」
「ああ。そうだった、そうだった。すっかり忘れていたよ」
「しっかりしてくださいよ……本来の目的を忘れてどうするんですか……」
「うんうん、気をつけるよ。えっと……今が三回戦だから、ちょうど折り返しだよね。あと三人倒せば女神様に会えるね」
「はい、そのはずです……ただ、正直、風当たりは強いですよね。やっぱり、ドワーフ族の人達を応援している人の方が多いみたいです」
ウータが溜息をついて、どこか不快そうに眉尻を下げた。
「地元だから仕方がないとは思うんですけど……ドワーフ族の選手に対して、人間族の選手は判定が厳しいみたいです。ウータさんだけじゃなくて、他の出場選手もそうみたいですよ?」
「ああ、やっぱりそうなんだ。審判の人が意地悪だから、そうなのかと思ってたんだよね」
武闘大会の出場選手の大部分はドワーフだが、少ないながら人間など他の種族も出場している。
ドワーフ以外の選手は明らかに判定が厳しくなっており、ルールに縛られて敗北してしまう選手も多いそうだ。
「勝ち残っている選手は八人ですけど、人間の選手はウータさんともう一人だけですよ。次の対戦相手が人間みたいです」
「ああ、そうなんだ。それは楽しみだね……ところで、ご飯は何を食べようか?」
ウータがお腹を撫でながら、大通りを見回した。
大勢の人が行きかっている通りには多くの露店や屋台が並んでおり、店員が客引きをしていた。
どこからか、香ばしく食欲を誘う匂いも漂ってくる。ウータのお腹が「グーッ」と空腹を訴えてくる。
「そうですね。どこかに入りましょうか」
「あそこで良いんじゃない。美味しそうな匂いがしてくるよ」
ウータが屋台の一つを指差した。
屋台で肉が焼かれており、実に美味そうな匂いがしている。道に置かれたテーブルにはちょうど空席もあった。
「すみませーん。くださーい」
「はいよ。ウチにはモジャッターパオードしかないけど良いかい?」
「良いよね、ステラ」
「…………はい」
ステラが短い沈黙の後で、苦々しく了承した。
モジャッターパオード。
鳥でも魚でも野菜でもない食べ物で、モジャッターパオードはモジャッターパオード以外の何物でもない。それ以上でもなければ、それ以下でもない。要するに、得体の知れない食べ物である。
すでにウータもステラもモジャッターパオードの正体が生物ではなく、ダンジョンに生息している鉱物の魔物であることがわかっていた。正体がわかっているからこそ、食べづらいという考えもあるのだが。
「じゃあ、そっちの席で待っていてくれ。すぐに料理を持っていくよ」
「うん。僕の分は辛さ控えめでよろしくー」
ドワーフの店員が愛想よく言った。
金を支払ってしばらく待っていると、さらに乗せられたスパイシーなステーキ……っぽい料理が運ばれてきた。
ステーキの横には付け合わせにの野菜も盛られており、インドやパキスタンなど、アジア圏の屋台料理のようである。
「うーん、美味しい……辛いっ!」
「スパイシーですけど、美味しいですよ」
二人はピリ辛の味付けに汗を搔きながら、出された料理を完食したのであった。
審判と揉めたりしているので、厳密には無事かどうかは知らないが……順調に進んでいた。
「そういえば……僕って、どうして武闘大会に出場しているんだっけ?」
大きな問題があるとすれば……試合時間のための拘束時間が長すぎて、ウータが自分の目的を見失いかけていることである。
「いや……『土』の女神アースに会うためですよ。どうして、忘れているんですか?」
隣に並んだステラが呆れた様子でツッコんだ。
二人はミスリルバレーの大通りを歩いている。試合が終わったので、帰る前に屋台で食事でもと思って物色しているところだ。
「武闘大会に優勝することができれば、女神アースと謁見することができるんです。そのために、ウータさんは出場したんですよ?」
「ああ。そうだった、そうだった。すっかり忘れていたよ」
「しっかりしてくださいよ……本来の目的を忘れてどうするんですか……」
「うんうん、気をつけるよ。えっと……今が三回戦だから、ちょうど折り返しだよね。あと三人倒せば女神様に会えるね」
「はい、そのはずです……ただ、正直、風当たりは強いですよね。やっぱり、ドワーフ族の人達を応援している人の方が多いみたいです」
ウータが溜息をついて、どこか不快そうに眉尻を下げた。
「地元だから仕方がないとは思うんですけど……ドワーフ族の選手に対して、人間族の選手は判定が厳しいみたいです。ウータさんだけじゃなくて、他の出場選手もそうみたいですよ?」
「ああ、やっぱりそうなんだ。審判の人が意地悪だから、そうなのかと思ってたんだよね」
武闘大会の出場選手の大部分はドワーフだが、少ないながら人間など他の種族も出場している。
ドワーフ以外の選手は明らかに判定が厳しくなっており、ルールに縛られて敗北してしまう選手も多いそうだ。
「勝ち残っている選手は八人ですけど、人間の選手はウータさんともう一人だけですよ。次の対戦相手が人間みたいです」
「ああ、そうなんだ。それは楽しみだね……ところで、ご飯は何を食べようか?」
ウータがお腹を撫でながら、大通りを見回した。
大勢の人が行きかっている通りには多くの露店や屋台が並んでおり、店員が客引きをしていた。
どこからか、香ばしく食欲を誘う匂いも漂ってくる。ウータのお腹が「グーッ」と空腹を訴えてくる。
「そうですね。どこかに入りましょうか」
「あそこで良いんじゃない。美味しそうな匂いがしてくるよ」
ウータが屋台の一つを指差した。
屋台で肉が焼かれており、実に美味そうな匂いがしている。道に置かれたテーブルにはちょうど空席もあった。
「すみませーん。くださーい」
「はいよ。ウチにはモジャッターパオードしかないけど良いかい?」
「良いよね、ステラ」
「…………はい」
ステラが短い沈黙の後で、苦々しく了承した。
モジャッターパオード。
鳥でも魚でも野菜でもない食べ物で、モジャッターパオードはモジャッターパオード以外の何物でもない。それ以上でもなければ、それ以下でもない。要するに、得体の知れない食べ物である。
すでにウータもステラもモジャッターパオードの正体が生物ではなく、ダンジョンに生息している鉱物の魔物であることがわかっていた。正体がわかっているからこそ、食べづらいという考えもあるのだが。
「じゃあ、そっちの席で待っていてくれ。すぐに料理を持っていくよ」
「うん。僕の分は辛さ控えめでよろしくー」
ドワーフの店員が愛想よく言った。
金を支払ってしばらく待っていると、さらに乗せられたスパイシーなステーキ……っぽい料理が運ばれてきた。
ステーキの横には付け合わせにの野菜も盛られており、インドやパキスタンなど、アジア圏の屋台料理のようである。
「うーん、美味しい……辛いっ!」
「スパイシーですけど、美味しいですよ」
二人はピリ辛の味付けに汗を搔きながら、出された料理を完食したのであった。
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