異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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132.準決勝だよ

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 そして、準決勝の時がやってきた。
 いつものように試合会場に入ったウータの前に、黒いローブを身に纏った銀髪の女性が立っている。

「初めまして、エルフの戦士をしておりますアリアと申します」

 女性が長い銀髪を垂らしながら、お辞儀をする。
 美しい女性である。細身で背が高くて、エルフらしく耳が長く尖っていた。

「へえ、綺麗なお姉さんだね」

「あら、お上手ですこと。お世辞の上手い男の子は私も嫌いじゃないですよ」

 ウータが何気なく口にした言葉に、アリアと名乗った女性がクスクスと微笑んだ。
 白い肌で端正な顔立ち。表情が無ければ人形と見間違えてしまいそうなほどに顔の造形が整っている。

「それにしても……準決勝のお相手が人間族の方で安心いたしました。対戦相手がドワーフばかりで、色々と肩身が狭かったのです」

「あ、やっぱりそうなんだ。もしかして妨害とかされていたのかな?」

 ウータが審判役のドワーフに目を向ける。
 これまで、ドワーフとの試合では何度となく忖度の妨害を受けていた。
 ウータから責めるような眼差しを受けながら、審判はどこ吹く風といったふうに無視を決め込んでいる。

「ええ、やはり種族主義というのはどこにでもあるものですわ。エルフはわりと解放的な気質なのですけど、そういった者達ばかりではないようで困っていたのです」

「へえ、エルフって解放的なんだ。知らなかったなあ」

「是非とも、一度エルフの王国にも訪れてくださいな。きっと熱烈な歓迎を受けられますわよ」

 言われずとも……『土』の女神アースを食べたら、『風』の女神のところに行くつもりだった。
 その女性にとっては良くないことかもしれないが、ウータはいずれエルフの王国へと来襲することだろう。

「そうするよ、ちなみに……エルフの国ってどこにあるのかな?」

「ここから真っすぐ東に向かった場所にある『エルフガルド』という国ですわ。どのような場所化は……行ってみればわかります。きっと驚きますわよ」

「フーン……そうなんだ。それじゃあ、楽しみにしておくよ」

「無駄話はそれくらいにしておきなさい。試合を始める」

 和やかに会話をしている二人に、審判役のドワーフが鬱陶しそうに言う。
 人間のウータとエルフのアリア……二人が戦う準決勝は、ドワーフの審判にとってどうでも良い試合のようだ。
 さっさと初めて、さっさと終われと、いかつい顔には書いてある。

「あらあら。せっかく楽しい時間でしたのに、もう終わりですわね」

 アリアがローブの下から細い剣を取り出した。レイピアと呼ばれるタイプの剣である。
 スウッと剣先を持ち上げる動きは堂に入っており、ただ剣を構えているだけなのに美しい。

「それでは、胸をお借りいたしますわ」

「うん、こっちこそよろしくねー」

「準決勝第一試合……始め!」

 審判が試合開始を告げる。
 同時にアリアが黒のローブを脱ぎ捨てた。

「わっ!」

「ハアッ!」

 ローブによってアリアの姿消えたのは一瞬のこと。
 次の瞬間には、地面を蹴ったアリアがウータに接近してきて、心臓めがけて真っすぐ刺突を繰り出してきたのだった。
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