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目を覚ますと、そこには見慣れた白い天井が広がっていた。
すぐに気がつく。ここはセルディス侯爵家にある自分の部屋だった。
「やあ、目を覚ましたようだね」
「貴方は………………ドクター・マリウス」
ベッドのすぐ傍に置かれたイスから、慣れ親しんだ男性が声をかけてくる。
白衣を着たメガネの男性の名前はマリウス・コールラント。
公爵家の出身でありながら医学の道に進むために隣国に留学し、18歳の若さで医師免許を取得した天才医師である。
病弱な私の専属医であり、10歳の頃からずっと面倒を見てくれた、もっとも信頼できる人間だった。
「マリウス先生、私は……」
「無理に起きなくて構いませんよ。すぐにメイドを呼びますから、そのまま寝ていてください」
身体を起こそうとした私を、マリウス先生が止める。
部屋の中にはマリウス先生と私しかいない。
未婚の女性の部屋に男性と2人きりというありえない状況だったが、それが許されているのはマリウス先生が医師として信頼されているからだろう。
私は御言葉に甘えてベッドに横になったまま、頭に浮かんだ疑問を口に出す。
「先生、教えてください。あれからどうなりましたか?」
「それは……あなたが気にする必要はありませんよ。今は身体を養生して自分の身体を治すことだけを考えていてください」
「知りたいんです。どうか教えてください」
渋るマリウス先生を、私は問い詰めた。
私は昔から病弱な身体をしており、先日のように血を吐くこともよくあった。
最近はマリウス先生が処方してくれた薬のおかげで症状が抑えられており、人前で吐血することなど無くなっていたのだが……どうやら、婚約破棄を告げられたことによるストレスもあって抑えられなくなってしまったのだろう。
あれだけ大勢の人が見ている前で、盛大に血を吐いてしまったのだ。醜聞として噂が流れている可能性は十分にある。
病人が吐血するのは決して悪いことではないのだが、貴族社会は、「病気だから仕方がない」と温かい言葉をかけてくれる人ばかりではない。
「人前で血を吐くなんて体調管理ができていない」、「ひょっとしたら感染る病ではないか」などと悪評を流す人間もいることだろう。
「心配しなくても、悪い噂など流れていませんよ。貴女は一方的な被害者として同情を集めていますから」
マリウス先生が穏やかな声音で、安心させるように言ってくる。
だが……それを鵜呑みにすることなどできなかった。貴族社会の厳しさは私だってもちろん知っているのだ。
「そんなはずはありませんわ。だって……私ったら、はしたなくもあんなにたくさんの血を……」
「貴女は毒殺されかけたことになっていますから。犯人はパーシー伯爵令息です」
「え……?」
マリウス先生の質問にきょとんと目を見開いた。
聞き間違いだろうかと先生の顔を窺うと、メガネの奥から愉快そうな瞳が見返してくる。
「覚えていませんか? 貴女は倒れた際、パーシー伯爵令息に向かって『どく』とつぶやいたのですよ。それを聞いていた生徒達が、伯爵令息が貴方に毒を飲ませたと騒ぎ立てたのです」
すぐに気がつく。ここはセルディス侯爵家にある自分の部屋だった。
「やあ、目を覚ましたようだね」
「貴方は………………ドクター・マリウス」
ベッドのすぐ傍に置かれたイスから、慣れ親しんだ男性が声をかけてくる。
白衣を着たメガネの男性の名前はマリウス・コールラント。
公爵家の出身でありながら医学の道に進むために隣国に留学し、18歳の若さで医師免許を取得した天才医師である。
病弱な私の専属医であり、10歳の頃からずっと面倒を見てくれた、もっとも信頼できる人間だった。
「マリウス先生、私は……」
「無理に起きなくて構いませんよ。すぐにメイドを呼びますから、そのまま寝ていてください」
身体を起こそうとした私を、マリウス先生が止める。
部屋の中にはマリウス先生と私しかいない。
未婚の女性の部屋に男性と2人きりというありえない状況だったが、それが許されているのはマリウス先生が医師として信頼されているからだろう。
私は御言葉に甘えてベッドに横になったまま、頭に浮かんだ疑問を口に出す。
「先生、教えてください。あれからどうなりましたか?」
「それは……あなたが気にする必要はありませんよ。今は身体を養生して自分の身体を治すことだけを考えていてください」
「知りたいんです。どうか教えてください」
渋るマリウス先生を、私は問い詰めた。
私は昔から病弱な身体をしており、先日のように血を吐くこともよくあった。
最近はマリウス先生が処方してくれた薬のおかげで症状が抑えられており、人前で吐血することなど無くなっていたのだが……どうやら、婚約破棄を告げられたことによるストレスもあって抑えられなくなってしまったのだろう。
あれだけ大勢の人が見ている前で、盛大に血を吐いてしまったのだ。醜聞として噂が流れている可能性は十分にある。
病人が吐血するのは決して悪いことではないのだが、貴族社会は、「病気だから仕方がない」と温かい言葉をかけてくれる人ばかりではない。
「人前で血を吐くなんて体調管理ができていない」、「ひょっとしたら感染る病ではないか」などと悪評を流す人間もいることだろう。
「心配しなくても、悪い噂など流れていませんよ。貴女は一方的な被害者として同情を集めていますから」
マリウス先生が穏やかな声音で、安心させるように言ってくる。
だが……それを鵜呑みにすることなどできなかった。貴族社会の厳しさは私だってもちろん知っているのだ。
「そんなはずはありませんわ。だって……私ったら、はしたなくもあんなにたくさんの血を……」
「貴女は毒殺されかけたことになっていますから。犯人はパーシー伯爵令息です」
「え……?」
マリウス先生の質問にきょとんと目を見開いた。
聞き間違いだろうかと先生の顔を窺うと、メガネの奥から愉快そうな瞳が見返してくる。
「覚えていませんか? 貴女は倒れた際、パーシー伯爵令息に向かって『どく』とつぶやいたのですよ。それを聞いていた生徒達が、伯爵令息が貴方に毒を飲ませたと騒ぎ立てたのです」
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