勇者に大切な人達を寝取られた結果、邪神が目覚めて人類が滅亡しました。

レオナール D

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7(完)

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 かくして、僕は一柱の『邪神』として覚醒した。

 手始めに逃げた村人を皆殺しにした僕は、胸の奥に荒ぶる破壊衝動のままに人間の国を滅ぼしていく。
 人類の救世主である勇者はもういない。
 僕を『人間』として抑え込んでいた家族はもういない。
 人々は抵抗するも、触手の邪神の進撃を止めることなく滅んでいった。
 やがて、人間種族の隆盛を誇った大陸から人類が消え、邪神によって支配されたのである。

「これにてバッドエンド。TRPGおしまい……といきたいところなんだけど」

「ふにゃあ、神様。好きですう」

「もっと可愛がってください。神様」

 それなのに……どうしてこんなことになったのだろう。
 占領した城で玉座に座る僕であったが、その周囲には大勢の美少女がすり寄ってきている。
 彼女達は獣の耳や尻尾があったり、角や羽が生えていたり……明らかに人類とは異なる容姿をしていた。

 『亜人』……あるいは、『魔族』
 勇者によって滅ぼされ、人間の支配下に置かれていた魔王の配下である。

 邪神として人類を滅ぼしていった僕であったが、魔王が敗れたことで人間に捕らわれて奴隷として扱われていた亜人については殺すことなく放置していた。
 『父』から敵として指定されているのは人間だけ。あえて対象外の亜人を殺す意味などない。
 過激な暴力衝動に支配された僕でも、無関係な相手を巻き込まない程度の分別はあるのだ。

 野に放って『さあ、お逃げ。もう捕まっちゃダメだぞー』と逃がした亜人であったが……何故か僕の周りに戻ってきて、勝手に家臣やら愛人やらと名乗り始めたのである。

「神様の触手、とっても素敵ですワン」

「ああんっ! もっと弄ってくださあいっ!」

「コラコラ、僕の触手を変なところに入れるんじゃない。触手生物だからって、そっちの意味じゃないんだよ」

 人の触手を掴んで玩具にしている亜人女性に、僕はうんざりと溜息を吐く。

 亜人は多種多様な種族があるため、容姿に対する偏見はない。
 触手まみれの僕の姿を見ても怯えることなく、それどころか平然とボディタッチを繰り返してくる。

「まったく……今度は南大陸の侵略だってのに。どうしてこんなことになったのかな?」

 世界を滅ぼす邪神のはずが、いつの間にか亜人の救世主になっていた。
 いったい、どこまでが僕を生み出した『父』の意志なのだろう。

「にゃん、大好きです。神様♪」

「はあ……」

 ともあれ、こんな生活に救いを感じているのも事実である。

 異世界に邪神として転生され、家族に裏切られた僕だったけど……最終的には幸せを手にすることができた。

 そんなわけで……今回のTRPGのセッションはトゥルーエンドということで物語はお終いです。

 めでたし、めでたし♪
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