7 / 7
7(完)
しおりを挟む
かくして、僕は一柱の『邪神』として覚醒した。
手始めに逃げた村人を皆殺しにした僕は、胸の奥に荒ぶる破壊衝動のままに人間の国を滅ぼしていく。
人類の救世主である勇者はもういない。
僕を『人間』として抑え込んでいた家族はもういない。
人々は抵抗するも、触手の邪神の進撃を止めることなく滅んでいった。
やがて、人間種族の隆盛を誇った大陸から人類が消え、邪神によって支配されたのである。
「これにてバッドエンド。TRPGおしまい……といきたいところなんだけど」
「ふにゃあ、神様。好きですう」
「もっと可愛がってください。神様」
それなのに……どうしてこんなことになったのだろう。
占領した城で玉座に座る僕であったが、その周囲には大勢の美少女がすり寄ってきている。
彼女達は獣の耳や尻尾があったり、角や羽が生えていたり……明らかに人類とは異なる容姿をしていた。
『亜人』……あるいは、『魔族』
勇者によって滅ぼされ、人間の支配下に置かれていた魔王の配下である。
邪神として人類を滅ぼしていった僕であったが、魔王が敗れたことで人間に捕らわれて奴隷として扱われていた亜人については殺すことなく放置していた。
『父』から敵として指定されているのは人間だけ。あえて対象外の亜人を殺す意味などない。
過激な暴力衝動に支配された僕でも、無関係な相手を巻き込まない程度の分別はあるのだ。
野に放って『さあ、お逃げ。もう捕まっちゃダメだぞー』と逃がした亜人であったが……何故か僕の周りに戻ってきて、勝手に家臣やら愛人やらと名乗り始めたのである。
「神様の触手、とっても素敵ですワン」
「ああんっ! もっと弄ってくださあいっ!」
「コラコラ、僕の触手を変なところに入れるんじゃない。触手生物だからって、そっちの意味じゃないんだよ」
人の触手を掴んで玩具にしている亜人女性に、僕はうんざりと溜息を吐く。
亜人は多種多様な種族があるため、容姿に対する偏見はない。
触手まみれの僕の姿を見ても怯えることなく、それどころか平然とボディタッチを繰り返してくる。
「まったく……今度は南大陸の侵略だってのに。どうしてこんなことになったのかな?」
世界を滅ぼす邪神のはずが、いつの間にか亜人の救世主になっていた。
いったい、どこまでが僕を生み出した『父』の意志なのだろう。
「にゃん、大好きです。神様♪」
「はあ……」
ともあれ、こんな生活に救いを感じているのも事実である。
異世界に邪神として転生され、家族に裏切られた僕だったけど……最終的には幸せを手にすることができた。
そんなわけで……今回のTRPGのセッションはトゥルーエンドということで物語はお終いです。
めでたし、めでたし♪
手始めに逃げた村人を皆殺しにした僕は、胸の奥に荒ぶる破壊衝動のままに人間の国を滅ぼしていく。
人類の救世主である勇者はもういない。
僕を『人間』として抑え込んでいた家族はもういない。
人々は抵抗するも、触手の邪神の進撃を止めることなく滅んでいった。
やがて、人間種族の隆盛を誇った大陸から人類が消え、邪神によって支配されたのである。
「これにてバッドエンド。TRPGおしまい……といきたいところなんだけど」
「ふにゃあ、神様。好きですう」
「もっと可愛がってください。神様」
それなのに……どうしてこんなことになったのだろう。
占領した城で玉座に座る僕であったが、その周囲には大勢の美少女がすり寄ってきている。
彼女達は獣の耳や尻尾があったり、角や羽が生えていたり……明らかに人類とは異なる容姿をしていた。
『亜人』……あるいは、『魔族』
勇者によって滅ぼされ、人間の支配下に置かれていた魔王の配下である。
邪神として人類を滅ぼしていった僕であったが、魔王が敗れたことで人間に捕らわれて奴隷として扱われていた亜人については殺すことなく放置していた。
『父』から敵として指定されているのは人間だけ。あえて対象外の亜人を殺す意味などない。
過激な暴力衝動に支配された僕でも、無関係な相手を巻き込まない程度の分別はあるのだ。
野に放って『さあ、お逃げ。もう捕まっちゃダメだぞー』と逃がした亜人であったが……何故か僕の周りに戻ってきて、勝手に家臣やら愛人やらと名乗り始めたのである。
「神様の触手、とっても素敵ですワン」
「ああんっ! もっと弄ってくださあいっ!」
「コラコラ、僕の触手を変なところに入れるんじゃない。触手生物だからって、そっちの意味じゃないんだよ」
人の触手を掴んで玩具にしている亜人女性に、僕はうんざりと溜息を吐く。
亜人は多種多様な種族があるため、容姿に対する偏見はない。
触手まみれの僕の姿を見ても怯えることなく、それどころか平然とボディタッチを繰り返してくる。
「まったく……今度は南大陸の侵略だってのに。どうしてこんなことになったのかな?」
世界を滅ぼす邪神のはずが、いつの間にか亜人の救世主になっていた。
いったい、どこまでが僕を生み出した『父』の意志なのだろう。
「にゃん、大好きです。神様♪」
「はあ……」
ともあれ、こんな生活に救いを感じているのも事実である。
異世界に邪神として転生され、家族に裏切られた僕だったけど……最終的には幸せを手にすることができた。
そんなわけで……今回のTRPGのセッションはトゥルーエンドということで物語はお終いです。
めでたし、めでたし♪
46
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」
「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」
「ま、まってくださ……!」
「誰が待つかよバーーーーーカ!」
「そっちは危な……っあ」
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる