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第16話 見放された国
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「…………!」
受付嬢の言葉にエベリアは大きく目を見開いた。
エイルーン帝国。『見放された土地』。
それは冒険者の間で、悪い意味合いで有名な国名だった。
エイルーン帝国はかつて大陸中央の覇者として栄華を誇っていた大国である。
名君と謳われた皇帝の下で平和が築かれており、臣民が豊かに安心して暮らしていた。
しかし……皇帝の急死と代替わりによって繁栄の歴史に終わりがやってくる。
新たな皇帝は逆らう臣下を次々と処刑して、民を富ませる法律や制度を撤廃。国に混乱をもたらしたのだ。
周辺各国から『愚帝』と称される皇帝の影響は冒険者にも及んでいる。
冒険者を保護・優遇する取り決めが撤廃されたことにより、多くの冒険者がエイルーン帝国から離れていった。
今では、才能ある若者は国を出て他国の冒険者ギルドで登録をするほど。
一応、ギルドの支部はまだ残っているが……近いうちにエイルーン帝国から完全に撤退するという噂も聞こえてくる。
それが冒険者から見放された土地……エイルーン帝国である。
「帝国の貴族がわざわざ隣国のギルドに依頼を出しにきたのか?」
「……はい、自国の冒険者は実力も人間性もあてにできないからと」
「それは何というか……どの口でと言いたくなるな」
エベリアは苦笑した。
実力も人間性も伴わない半端者だけしか残らなかったのは、そちらの責任ではないか。冒険者を冷遇した帝国が全面的に悪い。
「そうですねえ、それは私も同感です。だけど、その貴族の人はかなり多額の報酬を……しかも全額前金で用意してくれているんです。信用ができる冒険者に限定してという話ですけど。おまけに転移門を使用するための費用まで前払いしてきまして」
「転移門……まさか、そこまで……!」
エベリアが驚いて息を呑む。
転移門というのはかつてギルドの創設者の一人である魔術師が生み出したマジックアイテムであり、大陸のありとあらゆる場所に一瞬で転移することができるのだ。
一度に転移することができるのは数人。おまけに使用するためには大量の魔石が必要となるため緊急時以外には使われることはほとんどない。
「それはそれは……よほど切羽詰まった状況なんだろうな」
「ええ……あの国は王様がアレだから騎士団がモンスター退治もしてくれないらしくて、本当に滅亡の危機にあるみたいですね……」
受付嬢が報酬の金額を紙に書いて提示する。
それは相場を遥かに凌駕する金額。ローンではなく即金で家を購入できるような額だった。
「これは……!」
その数字にはエベリアも思わず唾を飲む。
これだけの金があれば、欲しかったパーティーのホームを購入することができる。
(エイルーン帝国は信用できないが、末端の貴族まで全て腐っているわけではないはず。前金で報酬全額となれば騙しようがない。依頼の内容が問題といえば問題だが……)
依頼書には『領内にいるモンスターの掃討』とあって、具体的な数字や種類が書かれていない。
とんでもなく強力な個体が出るのかもしれないし、大量のモンスターが棲みついているのかもしれなかった。
「ちょうど、信用ができて実力もあるパーティーが『戦乙女の歌』以外、出払っているんですよ。もしも皆さんが気に入らないというのであれば、この依頼は断るつもりですけど……」
「……いや、やろう。私達が受ける」
「いいのですか? エベリアさん、他の皆さんに相談しなくても?」
「ああ、三人とも依頼の詳細には興味を持たず、私に任せているからな。アイシスなんて、『誰を殴ればいいかだけ教えてくれたらいいよ』などと言っているほどだ」
「ああ、なるほど」
受付嬢が苦笑をした。
確かに、美貌のわりに脳筋なアイシスならばそんなふうに言うだろう。
「それじゃあ、依頼主には良い返事を出しておきます。転移門の準備があるから、明日になったらまたギルドに来てください」
「わかった。それじゃあ、よろしく頼む」
エベリアは軽く手を上げてから、受付カウンターを後にした。
受付嬢の言葉にエベリアは大きく目を見開いた。
エイルーン帝国。『見放された土地』。
それは冒険者の間で、悪い意味合いで有名な国名だった。
エイルーン帝国はかつて大陸中央の覇者として栄華を誇っていた大国である。
名君と謳われた皇帝の下で平和が築かれており、臣民が豊かに安心して暮らしていた。
しかし……皇帝の急死と代替わりによって繁栄の歴史に終わりがやってくる。
新たな皇帝は逆らう臣下を次々と処刑して、民を富ませる法律や制度を撤廃。国に混乱をもたらしたのだ。
周辺各国から『愚帝』と称される皇帝の影響は冒険者にも及んでいる。
冒険者を保護・優遇する取り決めが撤廃されたことにより、多くの冒険者がエイルーン帝国から離れていった。
今では、才能ある若者は国を出て他国の冒険者ギルドで登録をするほど。
一応、ギルドの支部はまだ残っているが……近いうちにエイルーン帝国から完全に撤退するという噂も聞こえてくる。
それが冒険者から見放された土地……エイルーン帝国である。
「帝国の貴族がわざわざ隣国のギルドに依頼を出しにきたのか?」
「……はい、自国の冒険者は実力も人間性もあてにできないからと」
「それは何というか……どの口でと言いたくなるな」
エベリアは苦笑した。
実力も人間性も伴わない半端者だけしか残らなかったのは、そちらの責任ではないか。冒険者を冷遇した帝国が全面的に悪い。
「そうですねえ、それは私も同感です。だけど、その貴族の人はかなり多額の報酬を……しかも全額前金で用意してくれているんです。信用ができる冒険者に限定してという話ですけど。おまけに転移門を使用するための費用まで前払いしてきまして」
「転移門……まさか、そこまで……!」
エベリアが驚いて息を呑む。
転移門というのはかつてギルドの創設者の一人である魔術師が生み出したマジックアイテムであり、大陸のありとあらゆる場所に一瞬で転移することができるのだ。
一度に転移することができるのは数人。おまけに使用するためには大量の魔石が必要となるため緊急時以外には使われることはほとんどない。
「それはそれは……よほど切羽詰まった状況なんだろうな」
「ええ……あの国は王様がアレだから騎士団がモンスター退治もしてくれないらしくて、本当に滅亡の危機にあるみたいですね……」
受付嬢が報酬の金額を紙に書いて提示する。
それは相場を遥かに凌駕する金額。ローンではなく即金で家を購入できるような額だった。
「これは……!」
その数字にはエベリアも思わず唾を飲む。
これだけの金があれば、欲しかったパーティーのホームを購入することができる。
(エイルーン帝国は信用できないが、末端の貴族まで全て腐っているわけではないはず。前金で報酬全額となれば騙しようがない。依頼の内容が問題といえば問題だが……)
依頼書には『領内にいるモンスターの掃討』とあって、具体的な数字や種類が書かれていない。
とんでもなく強力な個体が出るのかもしれないし、大量のモンスターが棲みついているのかもしれなかった。
「ちょうど、信用ができて実力もあるパーティーが『戦乙女の歌』以外、出払っているんですよ。もしも皆さんが気に入らないというのであれば、この依頼は断るつもりですけど……」
「……いや、やろう。私達が受ける」
「いいのですか? エベリアさん、他の皆さんに相談しなくても?」
「ああ、三人とも依頼の詳細には興味を持たず、私に任せているからな。アイシスなんて、『誰を殴ればいいかだけ教えてくれたらいいよ』などと言っているほどだ」
「ああ、なるほど」
受付嬢が苦笑をした。
確かに、美貌のわりに脳筋なアイシスならばそんなふうに言うだろう。
「それじゃあ、依頼主には良い返事を出しておきます。転移門の準備があるから、明日になったらまたギルドに来てください」
「わかった。それじゃあ、よろしく頼む」
エベリアは軽く手を上げてから、受付カウンターを後にした。
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