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第3話 ホーンテッド・キャッスル
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しおりを挟むロット夫人は溜息をついて、ベッドの背もたれに体重を預けた。見るからに衰弱している老婆にこれ以上、話を聞くのは難しいかもしれない。そう思って話を中断しようとするシャドウであったが、ロット夫人は首を振る。
「もう、これが最後かもしれません。ですからどうか・・・」
「・・・わかったよ。最後まで聞かせてもらおう」
「ありがとうございます・・・」
ロット侯爵家に嫁いできたサリアは、意識的にサブロナ城のこともスレイヤー王国のことも耳に入れないようにしていたらしい。そのため、サブロナ城が幽霊の巣窟になったことも知らなかったようだ。
心にしこりを残したままロット侯爵家で生活をしてきて、子供を産み、育て、孫の顔を見て、夫が先だった後もこうしてひっそりと生きてきた。
そして、ロット夫人自身も死期が近づいてきて、ようやく故郷のことを調べてみる気になったらしい。
「サブロナ伯爵家の長女として何一つできなかった私ですが、最後は妹と同じ場所に葬ってもらおうと思い、今のサブロナ城を調べてみました。そして・・・ルリアのことを知りました」
幽霊の巣窟となったサブロナ城。そこでたびたび目撃されているという少女のゴースト。それは冒険者の間ではそれなりに有名だったらしい。それが妹のサリアであることにすぐに気がついた。
「私が守ることもできないのに無責任な約束をしてしまったせいで、妹は今も天に昇ることができずに城に取り残されている。だから、妹の未練を取り除こうと・・・」
「財宝を盗むように、ギルドに依頼を出したわけか」
「そのとおりです・・・」
全てを話し終えて、ロット夫人はぐったりとベッドに身体を沈めた。その様子を労しげに見ながらも、シャドウは口から厳しい言葉を吐く。
「妹のことを知ったなら、どうして会いに行こうと思わなかったんだ? あなたが会いに行ってやれば、財宝なんて関係ない。ルリアちゃんも迷わずに逝けたはずだ」
「・・・私はルリアに許されないことをしました。あの子のことを助けることができず、死なせてしまった。ゴーストになったあの子のことを50年もほったらかしにした。いまさら、どんな顔して会いに行けばいいと?」
「つまらないことで悩んでやがる」
シャドウは忌々しげに吐き捨てる。銀仮面の奥の瞳には怒りの色が浮かんでいる。
「50年前に何が正しかったなんて知らないけどな。今、何をするのが正しいかはわかりきってるだろうが。謝ったけど許してもらえなかったって言うならわかるけど、許されないから謝らないなんて身勝手な話じゃないか」
「・・・その通りですね」
老体に鞭打つような言葉を否定することはなく、ロット夫人は甘んじて受け入れた。そして、疲れたように微笑んで、枕の下に手を入れる。
「・・・本当に、会いに行くべきだった。まだ私が動けるうちに。お願いします。どなたが存じませんが、どうかこれを妹に渡してはもらえないでしょうか?」
「これは?」
ロット夫人が手渡してきたのはロケットがついたネックレスである。銀で作られたそれの表面にはこった意匠が彫られている。
「渡してもらえれば、わかります・・・どうか・・・」
「俺を慈善家と勘違いしているような気がするが・・・いいだろう。こう見えてもおばあちゃん子だったからな。俺は」
「ありがとう、ございます・・・」
ロット夫人が目を閉じる。疲れて衰弱しきった老婆はそのまま眠るように息を引き取った。夫人の最後を確認して、シャドウは転移魔法を発動させる。
十数分後、家人がロット夫人の異変に気がついたときには、部屋の中には誰の姿もなかった。
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