37 / 85
第3話 ホーンテッド・キャッスル
(11) 完
しおりを挟む「タッタタッター、ターラーラー!」
黒野カゲヒコは鼻歌を口ずさみながら、上機嫌にサブロナ城の掃除をしていた。
かつてアンデットが支配していた城からは邪悪な気配は消えており、埃っぽい臭いと窓から差す太陽の香りに包まれている。
「ターラーラーラー、第2階梯魔法【清掃】」
カゲヒコが魔法を発動させると、長年、人の手が入らずに堆積している埃と天井の蜘蛛の巣がまとめて消え失せる。
「持つべきものはマイホーム! 俺も今日から一国一城の主か!」
ルリアが昇天したことにより、サブロナ城に巣食っていたアンデットは残らず消滅した。
残ったのは無人の城。それも人がめったに立ち入ることのない絶好の隠れ家スポットだ。
せっかくなので、カゲヒコはこの城を自分のものにして、怪盗シャドウのアジトにすることにした。
「もう! 何がマイホームですか! 大変だったんですよ!?」
一緒に城の掃除をしていたサーナが左右でくくった髪を揺らして抗議の声を上げる。
「サブロナ一家はいなくなりましたけど、ここはれっきとしたスレイヤー王国の領地なんですからね! ここに人が立ち入らないように情報操作するのに、どれだけの手間がかかったと思ってるんですか!」
「いいじゃないか、それくらい。今回の報酬と思えば安いものだろう?」
サブロナ城からアンデットがいなくなったと聞けば、スレイヤー王家は城を壊して領地を再利用するかもしれない。そのため、サーナを始めとした闇ギルドのエージェントに頼んで、さらに危険なアンデットが城に現れたと情報操作をしてもらった。
おかげで冒険者達の足も遠のいており、あとは賢者であるカゲヒコが結界を張って幻術やゴーレムなどの防御機構を設置すれば、難攻不落のアジトの完成である。
「ちゃーんとルリアからこの城に住んでいいって許可は貰ったからな。存分に利用させてもらうさ」
「もう! ちゃっかりしてるんだから!」
「ほれほれ、話してる暇があるならそっちの荷物を運べ。中身は盗んだ美術品だから丁寧に扱えよ」
「はいはい、わかりましたよー」
『これはどこに運ぶの? お兄さん?』
「あー、それは絵画だから寝室の方へ・・・」
ピタリ、とカゲヒコの動きが停止する。サーナもまた、あんぐりと口を開いて銅像のように固まる。
『あれ? どうかしたの?』
「・・・いや、ルリア。何でここにいる?」
そこにいたのは、昇天したはずのサブロナ姉妹の妹。幽霊少女のルリアである。
『ここは私の城だもん。いるのは当たり前でしょ!』
「そりゃそうだけど・・・」
「て、天国に行ったんじゃないんですかあ?」
震える声でサーナがつぶやく。考えてみれば、サーナはルリアに会うのは初めてだ。ツインテールをプルプルと震わせて、闇ギルドの小さなエージェントは涙目になっている。
『だってー、ひどいんだよ。私、せっかくお空の上まで飛んでったのに、天国の門に入れてくれなかったんだよー』
話を聞いてみると、どうやらルリアは天国から入国拒否をされてしまったらしい。
その原因は彼女の現世での行いである。さまよう魂をアンデットに作り変えたことや、城に入ってきた冒険者を殺したこと、その冒険者の魂をさらにアンデットにしたことなどなど。
それらの罪状により、天国の門番から地獄行きを宣告されてしまったらしい。
「いや、まあ、確かに・・・」
「それはそうですよねえ」
『お姉ちゃんは先に天国に入っちゃったから、また一人きりになっちゃったんだよ! 一人で地獄に行くの怖いし、また城に戻ってくるしかないじゃない!』
「なんというか・・・ご愁傷様。文字通りに」
カゲヒコは呆れ半分、同情半分にルリアに慰めの言葉をかける。しかし、ルリアに落ち込んだ様子はなく、むしろテンション高めにカゲヒコに抱きついてくる。
『しかたがないからね、ルリアはお兄さんが死ぬのを待つことにしたんだ!』
「は?」
『お姉ちゃんから聞いたよ! お兄さんって泥棒さんなんだよね。だったら、お兄さんが死ぬのを待ってて、一緒に地獄に行ってあげる! 二人だったら怖くないよ!』
えへん、と胸を張るルリア。カゲヒコは嫌そうな表情をする。
「えー・・・」
『えへへ、それまでずっと一緒だからね!』
ルリアの満面の笑みを見て、カゲヒコは肩を落とした。
せっかく手に入れた念願のマイホームには、どうやら同居人がついてくるようである。
1
あなたにおすすめの小説
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる