賢者から怪盗に転職しました

レオナール D

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第4話 泳ぐ金塊

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「おーい! 下から何か来るぞ!」

「にゃ! 千年鯨かにゃ!?」

 ノノがマストの上から飛び降りてくる。クルクルと高所から落ちた猫のように回転して、軽い足取りで船体の上へと着地する。

「どこにゃ!? どこにいるにゃ!?」

「船の真下だ!すぐに来るぞ!」

「にゃー! 緊急回避にゃ!」

 ノノが舵についたボタンを押す。船に組み込まれたマジックアイテムが発動して、船が勢い良く前進する。
 船が移動した瞬間、先ほどまでいた海面に大きな黒い影が浮かび上がる。次の瞬間、大波を上げて巨大な怪物が姿を現した。

「こいつは・・・」

「にゃあーーーー! 千年鯨じゃないにゃ!」

「GYAAAAAAAAAAAAAA!」

 海から姿を現したのは千年鯨ではなく、「デーモン・クラーケン」と呼ばれるモンスターだった。
 漆黒に包まれたその巨大なイカは、大蛇のような10本の腕で大型船すら海に引きずり込んでしまう船乗りの天敵である。

「厄介な・・・!」

 カゲヒコは表情を険しくして唸る。
 過去に勇者パーティで旅をしていた頃にも目の前の怪物と遭遇したことがあった。

 デーモン・クラーケンの性質の悪いところは非常に魔法抵抗が高いことで、魔法使いであるカゲヒコにとって天敵と呼べる敵である。

(あのときはユウジが聖剣で腕を斬り落として逃げたんだったな・・・これはどうするかね)

 賢者であるカゲヒコが最大出力で魔法を放てば、目の前のモンスターにも致命打を与えることができるかもしれない。しかし、その際に発生した大波に飲み込まれて、船は海の藻屑となってしまうだろう。

「GYAAAAAAAAAAAAAA! GYAAAAAAAAAAAAAA!」

「くっ、掴まれるぞ!」

「にゃにゃっ! 大砲を撃つにゃ!」

「了解!」

 船につけられた大砲に弾を込める。
 マジックアイテムであるその大砲は火薬や火種を必要とせず、弾を込めて魔力を込めることで弾を打ち出すことができる。

ドーン!

「GYAAAA!? GYAAAAAAAAAAAA!」

「にゃにゃにゃー! 緊急回避! 緊急旋回にゃあああああ!」

「ったく! まーだ、クジラにも会ってないってのに!」

 船はノノの運転で縦横無尽に海を駆け回る。
 その背後をぴったりとついてくるデーモン・クラーケンに、カゲヒコはひたすら大砲を撃ち続ける。

「にゃー! 限界にゃー!」

「うおおっ!?」

「GYAAAAAAAAAAAAAA!」

 しかし、やがてマジックアイテムに限界がやってきた。船を動かしていた動力が過剰な仕様で機能を停止して、デーモン・クラーケンに追いつかれてしまった。

 太いイカの腕が船の船体やマストに絡みついていく。筋肉の塊である腕が木製の船を絞めあげて、見る見るうちに破壊していく。

「やばいな、これは船が潰されるんじゃないか!?」

「やむを得ないにゃ! 切り札を使うにゃ!」

 ノノが舵の横にあるレバーを思いっきり引いた。
 船体の前方部分が上下に開いて、勢いよく巨大な槍が突き出した。

「おお! 何だありゃ!」

「にゃはははは! 驚いたかにゃ! これこそ海の最終兵器、『海竜殺し』にゃ!」

「モン〇ンに出てくる奴みたいだな。いや、素直に驚いたぜ」

「GYAAAAAAAAAAAAAA!」

 螺旋がついた巨大な槍が高速で回転しながら、デーモン・クラーケンの身体をえぐっていく。黒い血やら墨やらが噴き出して海を暗く染めていく。
 イカの腕が緩んで船が解放される。身体を必死にもがいて、『海神殺し』の槍を引き抜こうとする。

「ふっ、一度刺さった槍は死ぬまで抜けないにゃ! 今夜の晩御飯にしてやるにゃ!」

「絶対、不味いと思うんだが・・・・・・あ?」

 ふと、いまだ効果を保っていた探索魔法に引っかかる影があった。反応は徐々に大きくなっていく。

「・・・・・・おいおい、こりゃヤバイ」

「にゃ、どうかしたのかにゃ?」

「今度こそ、来たみたいだ。千年鯨」

「にゃ!?」

「GYAAAAAAAAAAAAAA!?」

 海から巨大な影が現れた。
 デーモン・クラーケンよりも遥かに巨大な陰影。氷山どころか島そのものが現れたような威圧感。
 巨大な怪物の出現に津波のような大波が上がり、船とデーモン・クラーケンへと覆いかぶさる

「にゃああああああああああ!」

「うおおおおおおおおおおお!」

「GYAAAAAAAAAA!」

「ボオオオオオオオオオオオ!」

 大波を起こした千年鯨は大口を上げて、現れた勢いそのままに船とデーモン・クラーケンをまとめて飲み込んだ。

 ごくり、と巨大な嚥下音を鳴らして、千年鯨はふたたび海へと消えて行ったのだった。
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