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第7話 最後の挨拶
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「・・・っ、嫌な夢を見た」
黒野カゲヒコは目を覚まして、肺にたまっている澱んだ空気を吐き出した。
部屋は暗闇に包まれている。部屋に時計がないから正確な時刻はわからないが、おそらくまだ深夜だろう。
カゲヒコが寝ている場所はアジトにしているサブロナ城ではなく、冒険者として使っている借家である。
たまにはこちらで寝なければ大家から怪しまれてしまうため、今夜は借家で夜を明かしていた。
「あー・・・久しぶりだな。勇者パーティにいた頃の夢を見るのは。おまけに夢に出てきたのがあの女かよ」
かつて黒野カゲヒコが勇者パーティとして旅をしていた頃、『宿敵』と呼んでもいい難敵が5人いた。
一人はもちろん、ラスボスである魔王。残る四人は魔王の側近である『魔軍四覇天』という、いわゆる四天王のポジションに就いていた四人の魔人である。
『千獣』のチーズハムバーグ。
『沃樹』のマカロニグラータ。
『闇欲』のクリョウカン。
そして、『剣鬼』のペロペロキャンティ。
勇者パーティは四人の魔人と幾度となく戦いを繰り返し、ある時は勝利をしたが、あるときは敗北を喫し、ときに有力な味方や協力者を失ってしまったこともあった。
最終的な勝利こそ魔王を討ち取った勇者パーティが手にしたものの、それは四覇天が魔王城を留守にしていたからこそ得られた戦略的な勝利である。
あの運命の日に四人のうち一人でも魔王城に詰めていたのであれば、人類と魔族の戦いは今も続いていたかもしれない。
四覇天はいずれも印象深い敵であったが、なかでも『剣鬼』はカゲヒコにとって因縁浅からぬ相手だった。
ファーストコンタクトが悪かったせいか、剣鬼はカゲヒコのことを目の敵にしており、たびたび戦いを吹っかけてきた。
物理での接近戦を得意とする剣鬼。
魔法での遠距離戦を得意とするカゲヒコ。
お互いが弱点である二人の決着は最後までつくことはなく、魔王討伐によってなあなあとなってしまった。
「剣鬼ペロペロキャンティ・・・凄まじい、そして恐るべき相手だったな」
あの悪夢のような剣技を思い出すたびに、カゲヒコの背筋には今でも鳥肌が立つ。
それ以上に恐ろしいのが・・・
「名前だよな。ペロペロキャンティって・・・」
ぶふっ、とカゲヒコは思い出し笑いをしてしまった。
あの真面目腐った顔でペロペロキャンティ。
地上最強の剣士なのにペロペロキャンティ。
魔族の四天王なのにペロペロキャンティ。
「笑うなってほうが無理があるだろ」
戦っている最中にも、ふと「この女の名前ってペロペロキャンティなんだよな」などと思い出すたびに噴き出してしまい、そこから先はロクに戦いにならなかった。
はっきり言って、剣技よりも名前のインパクトのほうが厄介だったかもしれない。
「あー・・・本当に厄介だったよな。剣鬼ペロペロキャンディ・・・ぶふっ!」
「・・・・・・人の名前で笑うのは趣味が悪いですね」
「は?」
ピタリ、とベッドの上で笑い転げるカゲヒコの首筋へと冷たい物が押しあてられた。
闇夜に目を凝らしてみると、窓から差し込む月明かりを反射する白刃が見えてしまった。
「それと、私の名前は『ペロペロキャンティ』です。キャンディではありません」
「お、おまっ、何でここに!?」
いつの間にかベッドのそばに立っていたのは、黒髪に白い着物を身に着けた女の鬼である。
右手には片刃の剣を持っていて、カゲヒコの首筋へと今にも切り裂かんばかりに刃が当てられている。
「口は災いの門、その言葉の意味を教えて差し上げましょうか?」
【剣鬼】ペロペロキャンティ。
かつての宿敵がすぐ目の前に立っていた。
黒野カゲヒコは目を覚まして、肺にたまっている澱んだ空気を吐き出した。
部屋は暗闇に包まれている。部屋に時計がないから正確な時刻はわからないが、おそらくまだ深夜だろう。
カゲヒコが寝ている場所はアジトにしているサブロナ城ではなく、冒険者として使っている借家である。
たまにはこちらで寝なければ大家から怪しまれてしまうため、今夜は借家で夜を明かしていた。
「あー・・・久しぶりだな。勇者パーティにいた頃の夢を見るのは。おまけに夢に出てきたのがあの女かよ」
かつて黒野カゲヒコが勇者パーティとして旅をしていた頃、『宿敵』と呼んでもいい難敵が5人いた。
一人はもちろん、ラスボスである魔王。残る四人は魔王の側近である『魔軍四覇天』という、いわゆる四天王のポジションに就いていた四人の魔人である。
『千獣』のチーズハムバーグ。
『沃樹』のマカロニグラータ。
『闇欲』のクリョウカン。
そして、『剣鬼』のペロペロキャンティ。
勇者パーティは四人の魔人と幾度となく戦いを繰り返し、ある時は勝利をしたが、あるときは敗北を喫し、ときに有力な味方や協力者を失ってしまったこともあった。
最終的な勝利こそ魔王を討ち取った勇者パーティが手にしたものの、それは四覇天が魔王城を留守にしていたからこそ得られた戦略的な勝利である。
あの運命の日に四人のうち一人でも魔王城に詰めていたのであれば、人類と魔族の戦いは今も続いていたかもしれない。
四覇天はいずれも印象深い敵であったが、なかでも『剣鬼』はカゲヒコにとって因縁浅からぬ相手だった。
ファーストコンタクトが悪かったせいか、剣鬼はカゲヒコのことを目の敵にしており、たびたび戦いを吹っかけてきた。
物理での接近戦を得意とする剣鬼。
魔法での遠距離戦を得意とするカゲヒコ。
お互いが弱点である二人の決着は最後までつくことはなく、魔王討伐によってなあなあとなってしまった。
「剣鬼ペロペロキャンティ・・・凄まじい、そして恐るべき相手だったな」
あの悪夢のような剣技を思い出すたびに、カゲヒコの背筋には今でも鳥肌が立つ。
それ以上に恐ろしいのが・・・
「名前だよな。ペロペロキャンティって・・・」
ぶふっ、とカゲヒコは思い出し笑いをしてしまった。
あの真面目腐った顔でペロペロキャンティ。
地上最強の剣士なのにペロペロキャンティ。
魔族の四天王なのにペロペロキャンティ。
「笑うなってほうが無理があるだろ」
戦っている最中にも、ふと「この女の名前ってペロペロキャンティなんだよな」などと思い出すたびに噴き出してしまい、そこから先はロクに戦いにならなかった。
はっきり言って、剣技よりも名前のインパクトのほうが厄介だったかもしれない。
「あー・・・本当に厄介だったよな。剣鬼ペロペロキャンディ・・・ぶふっ!」
「・・・・・・人の名前で笑うのは趣味が悪いですね」
「は?」
ピタリ、とベッドの上で笑い転げるカゲヒコの首筋へと冷たい物が押しあてられた。
闇夜に目を凝らしてみると、窓から差し込む月明かりを反射する白刃が見えてしまった。
「それと、私の名前は『ペロペロキャンティ』です。キャンディではありません」
「お、おまっ、何でここに!?」
いつの間にかベッドのそばに立っていたのは、黒髪に白い着物を身に着けた女の鬼である。
右手には片刃の剣を持っていて、カゲヒコの首筋へと今にも切り裂かんばかりに刃が当てられている。
「口は災いの門、その言葉の意味を教えて差し上げましょうか?」
【剣鬼】ペロペロキャンティ。
かつての宿敵がすぐ目の前に立っていた。
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