7 / 17
村人Mと勇者な熊
しおりを挟む
ドンドン!!
「ゲイリー!!開けろっ!!」
ギシ…ギシィ…ミシィ…
安物のベッドのスプリングが、男二人分の体重を受けて悲鳴をあげている。
そろそろ買い替え時なんじゃないでしょうか?宿主さん。
「やだっ!!んうぅぅ~~っ!!…っやめ!!むうぅぅ~~~!!」
悲鳴をあげているのは何もベッドだけではない…俺も負けずにあげている。
「…ハァ、すげぇ♪今からたっぷり楽しませてやるからな?」
俺の上にのし掛かる熊はやはりただの熊らしい…人語がまったく通じていない。
「いやっ、だって!!やめっ…!!んんん~~~!!んっ!んっ!」
抵抗虚しく、部屋に着くなりツルンと裸に剥かれた俺の足の上にはどっしり存在感のある熊。
両手は熊の片手で頭上で一纏めに、もう片方の手は俺の顎をガッチリと押さえ込んだまま
只今ガッツリ、シッカリ、ネットリと口内を蹂躙されております。。
ちょぉ、ギブギブギブ!!
最早まったく身動き出来ない見事な熊固め。
……参ったの合図すら出来ません…(泣)
…はい。一難去ってまた一難。
今は宿の二階の部屋にて熊に絶賛襲われ中のMです。
ドン!ドン!ダン!!
「おいっ!!ゲイリー!!待てって!!話を聞けっ!!」
ドアの外には後を追ってきたシリル。
部屋に入る直前で熊に突き飛ばされていたが…てか、吹っ飛んでた気がするが大丈夫だったのか?
「だ~~!!気が散る!!話は後で聞いてやるからちったぁ、気ぃ利かせろって!!」
熊固めはそのままにドアに向かって吼える熊。
「後じゃ手遅れだろ!!先に聞けって!!」
負けずにドアの向こうから叫ぶシリル。
「…た…助けて!!助けてシリル!!助けてぇぇぇ~!!」
取り敢えず、俺も負けずに叫んでみた。
カァァァァ…バキバキバキッ!!ドカァァァァ!!
直後の閃光と轟音
一瞬ドアがビカ~~ッと、光ったかと思ったら…え…?何々…?
・・・え~~っと…ドアが粉々に吹き飛んだ…の?
ドアが光ったと思った次の瞬間には熊が俺に覆い被さってきたので、実際何があったのか良く分からない。
だけどさっきまでドアがあった場所には今…
パラパラと舞落ちる木の破片と、怖い顔のシリルが立っていた…
「…っぶねえな!!破片が飛んできたぞこんチクショウ!!」
熊が俺を胸元に抱えたまま、のっそりと起き上がる。
「………Mから離れろ…」
…あの~~~もしもし?ねぇ、シリルくん。
君…目が座っていませんか?
なんか睨まれていない俺までガクブルしちゃいます…(怯)
ピリピリとした1人と1匹(熊)の醸し出す雰囲気で、既に半泣きな俺。
こいつら伊達に勇者関係者な訳じゃ無いらしい。
幾度となく死線を越えて来た奴等の、本気な殺気にあてられた俺は最早石と化している。
のほほんと生きてきた平和の象徴的なモブに、本物の殺気なんて教えないで頂きたい!!(飛涙)
バタバタ、ドタドタ…
「なんだ!!何があった!!」
「襲撃かぁ!!魔物はどこだ!!」
「魔王か!殴り込みか!借金取りかぁ!?」
あ~そうね。
あれだけ派手な音したもんね。
ここはどうやら冒険者御用達の宿だったらしい。
先程の轟音で剣を抜いたむさ苦しい男達が、続々と部屋へと押し掛けて来た。
取り敢えず真っ裸な俺は、複数の足音が聞こえると同時にシリルに回収されてシーツでぐるぐる巻きにされてはいたが…
部屋に充満する埃と木屑。
ベッドの上には半裸の熊。
ベッド脇にはシリルに抱えられたマッパにシーツな俺。
…はい。皆さんの言いたい事は良く分かる。皆まで言うな。
これでまた一つ…俺の妙な噂を増やしてしまったんだろう…
ヒュルルルルル…
………………………………………………………
…………………………………………………
……………………………………………………
「M…ごめんな。もう大丈夫だ。」
只今シリルのお膝の上で、ぎゅうぎゅうなでなでされまくりな俺ですが…
色々在りすぎて魂半分抜けかけてます。
あれから駆け付けたむさ苦しいお兄様方は、何やらヒソヒソ話をした後にこっそり居なくなっていたり…
一歩遅れてやって来た宿のおかみさんは、部屋を一瞥するなり熊にげんこを落としてドアの修理費を請求していたり…
俺はシーツぐるぐる巻きのまま、斜め向かいのシリルの部屋にお姫様抱っこで運ばれてたり…
その後を熊が拳骨くらった頭をスリスリしながら、半裸のまま追い掛けて来たり…
「………で、どうゆう事だよ?」
「噂を真に受けてんじゃねえぞ!…こいつはそんなんじゃ無いんだ。」
「…だってそいつぁ…あのMだろ?」
「チッ!お前の目は節穴か!?」
ドカァ!!
―――― ある勇者な熊の回想 ――――
数日前【剛力の勇者御一行】こと、俺達パーティーは次のターゲット『日の沈む村』近くの魔王城を目指して辺鄙な田舎町まで来ていたんだけどよ…ところがどうだ?
明日にゃあ日の沈む村に到着するってぇ時に、肝心のその魔王が倒されちまったって情報が勇者ネットで回ってきやがった!!
だ~~~チクショウ!!俺の獲物がぁ~!!
………ハァ…一足遅かったか…ついてねえなぁ…
魔王は基本的には不死身だ。
倒しても、倒しても、時が経てばまた復活してきやがる。
だがよ、そりゃあ数年先か…或いは数十年先か…取り敢えず大分先の話だ。
唐突に一先ずの目的を失っちまった俺達は、手前の村で立ち往生だ。
まぁ、こうゆう事もたまにゃぁあるさ。
何せ今時の世の中にゃあ、勇者なんてモンはゴロゴロいるからな。
魔王城で勇者パーティー同士が鉢合わせしちまって、獲物(魔王)の取り合いでバトルになったなんてぇ笑い話もあるくれぇだwww
とりあえず出遅れたらしい俺達は、次の仕事(討伐)の目処が付くまでイレギュラーな休みになっちまった。
まぁ、何にせよ久々の休みだ。ここは満喫しねえとってな!
…っても、こんな田舎じゃろくに時間も潰せねぇと踏んだ俺は、そっから一番近いダンジョンに潜りに行ったのよ。
ムシャクシャした時にゃあ、スカっと一暴れすんのが一番だろ?
んな訳でストレス発散で出掛けたダンジョンだったが、コレが当たりだった。
ダンジョン自体はこじんまりとした造りだったけどよ?
これが4層まで潜ってみたら、中にゃあレアモンスターもチラホラいて結構なお宝も落としてくれたもんで俺は上機嫌で宿に戻って来たワケよ!!
宿に戻れば何を置いても先ずは飯だ!!メシメシメシ~~~♪
携帯食ってやつぁ、計算して作られてるモンらしいがよ?
ありゃぁどうも味気無くていけねぇ。腹にも溜まんねえし、食った気がしねえ。
だもんで宿に着くなりすぐさま直行した食堂にゃあ、パーティーメンバーのシリルの姿があった。
丁度いい。俺の武勇伝を聞かせてやるぜ~♪って、腰掛けたところで…おったまげたぜ…
そのシリルの向いに居たのが【魅惑の泉】あのMだったんだからよ!!
Mの噂は俺等の間じゃ知らねぇ者はいねえ。
『日の沈む村』に現れた生きた回復の泉。それがMだ。
今じゃこの“回復の泉M”の情報は勇者ネットで専用スレが乱立しまくる騒ぎだ。
俺達勇者御一行ってえのは、日々命の危険と隣り合わせな職業だからな。
皆、各地にある回復の泉にゃあ、幾度と無く世話になってる。
実際俺も何度も命拾いをさせてもらったぜ。
それがどんだけ重要なモンか分かるかおい?
俺等にとっちゃどんなお宝よりも貴重なモンっだって事だ。
正に生死を分ける命綱ってヤツだな!
だが、難点は数が余り多くはねぇって事だ…
更に必ずしも現場近くにある訳じゃねぇって事と、なんせ天然の泉だ。
渇れたり新たに湧き出たりと、何かと不安定なモンでもある。
既存の泉が渇れたり新しい泉が発見されたりすりゃあ、俺達には神殿からネットを通じて報せがくる。
するってえとMAPに新しい泉の位置が自動的に上書きされ、俺等はその情報を元に綿密に計画を練る…ってとこなんだが…
だがよ、いつも計画通りにいくとは限らねえ…
毎回予め回復薬やら治癒魔法の使い手やらと、出来る限りの用意はしてるがそれでも万全とは言い難ぇのが現実だ。
過去には負傷した仲間を担いで泉に向かう途中で、間に合わなかった…なんてぇ事もあったしな…
俺だってはっきり言やぁ、今生きてる事すらただ運が良かったとしか言いようがねぇ。
正に『明日は我が身』だろ。
だがだがだがぁ~そこに、だ!!
生きた回復の泉、持ち運び可能な泉が現れたとなりゃあ、どうなる?
そいつさえ手に入れれば、そのパーティーは最早無敵だ!!
いくら戦っても疲れねぇ!!誰も死なねぇ!!
真の最強パーティーの出来上がりだ!!
…実際、過去に現れた回復泉(人間)は、大勢の取り合いから相当悲惨な人生だったらしいな。
最後は何でも都市一つが壊滅状態になる騒ぎで、かなりの死傷者が出たってぇ話だ。
んな経緯があったもんで、Mの噂がネットで流れ始めた頃にゃあすぐさま神殿から規制が入った。
曰く『聖なる泉』は神殿に所有権があり、勇者関係者は規定により使用する事は出来ても所有する事は出来ない。
ってよ。…だがまぁ、それでいいのかも知れねぇ。
Mは言わば超ド級のレアアイテムみてえなモンだしよ?
規制が入らなきゃ、過去の惨事の二の舞になんのは明らかだしな。
…だけどもよ?その間にも勇者ネットじゃどんどん可笑しな流れになってったんだよ…
当初の回復の泉情報はMの所在地、名前、身体的特長。
実際に試してみた回復の効果何かが主だったんだけどよ、その内こうゆう所が可愛かったの、ここをこう攻めてやったら色っぽくよがりまくっただの、縛られるととても喜んで腰振っておねだりしてくれちゃうだのって…
…おいおい。
お前等既に回復そっちのけじゃねえか?
勇者ネットはいつからR18専用板になったんだ?
更に時間が経つと共に加速して行く板じゃあ…
俺はあんな事や、こんな事をして、Mを凄く喜ばせたんだ!だの…
いやいや俺はあんな事や、そんな事迄して、お前よりもMを大満足させた!!だの…
ふざけるな!!俺はいつも全身全霊で〇〇が、△△を、☆☆☆させてるんだぞ!!お前等なんかお呼びじゃねえ!!Mはもう、俺無しじゃ居られない体なんだ!!分かったか!!って…
何だかなぁ…
違った趣旨の取り合いに発展してねえか?
とにかく主立ったスレを流し読みした結果…
Mって奴は名立足る勇者達を根こそぎ虜にしちまった、大層魅力的な“ドMで小悪魔な子猫ちゃん”って事ぐれぇは分かった。
そんな事聞かされたら、男としては気にならねぇ訳はねえよな?
実は俺も今回の討伐でMに会えんのを、密かに楽しみにしてたんだけどよ…
んなモンだから日の沈む村の手前でお預け食らった時ゃあもう!!
チックショ~~~!!俺のこの盛り上がった気持ちと股間をどうしてくれる!?
って…まぁ、半ば八つ当たり気味にダンジョンに出掛けて行った訳なんだが…
戻って来たら何と目の前に念願のMが居るじゃねえか!!
おいおいおいおい!!やっぱツイてるわ俺!!
やべぇ、一年分のツキを使っちまったかこれ!?
誰でも腹ペコの時に目の前にご馳走差し出されたら、食わねぇ訳きゃ無ぇだろ。
そんじゃあ遠慮無くいただきます!!ってんで、二階の俺の部屋に連れ込んだはいいが…
邪魔者迄付いてきやがった。
なんだシリル、お前まだいただいて無かったのか?
だが悪りぃな、ここは早い者勝ちだ!!
シリルを軽く突き放して急いでドアの鍵を閉めた。
「やっ!いやっ!!やめろぉ!!」
ふ~ん。やっぱ情報通りだな。
Mは可愛らしく抵抗するフリをする。
何でもそうゆうプレイに興奮するタイプらしい。
見せ掛けだけの抵抗は、猫がじゃれつく程度で痛くも痒くもねぇが…
やべぇ………こいつはかなりムラムラきたわ。
何だかこっちも煽られて、スゲェ興奮してきたぜっ!!
…これが数々の勇者達をメロメロにしてきたテクニックってやつか。侮れねぇ…
「やだっ!放せよっ!触るな!!」
そんな顔真っ赤にして、涙目で挑発されると…くぅ~~~!!
俺には叡智の野郎と違ってそっち(S)の趣味は無えハズなんだが…俄然燃えてきやがった!!
流石Mだぜ!!男のツボが分かりきってるなぁ!おい!!
だがMの息も既に荒くなってきてやがる。
こりゃあ俺、相当期待されちゃってるか?
ここで頑張らなけりゃあ男が廃る!!
大サービスの大ハッスルの特大フルコースで、期待に応えてやるぜ~~~っ!!
ドン!ドン!ダン!!
「おいっ!!ゲイリー!!待てって!!話を聞けっ!!」
………………………ってところでしつこく邪魔が入りやがる…くそっ
こっちは今お楽しみの真っ最中なんだよ!!つったく!!
「だ~~!!気が散る!!話は後で聞いてやるからちったぁ、気ぃ利かせろって!!」
暫く無視してたんだが、あんまりにも煩ぇモンで思わずドアに向かって叫んだらよ?
「後じゃ手遅れだろ!!先に聞けって!!」
とか何とかシリルのヤツがぬかしやがる。
…そんなに先にヤリたかったのかぁ?
だが俺達もう、すっかり盛り上がってるしよ。
お前ぇはその辺の女にもモテるんだから、溜まってるんならそっちで済ませればいいだろうが…とか思ってたらよ…?
「…た…助けて!!助けてシリル!!助けてぇぇぇ~!!」
………おいおいM?…これってばもしかして…寝盗られプレイってヤツか!?
俺が慣れねぇ高度プレイに戸惑った直後に、ドアの向こうから魔術展開の気配がしやがった…ヤベェ!!
咄嗟にMに覆い被さると同時に、シリルのバカ野郎がドアを破壊しやがった!!
巻き上がる爆風で木屑の破片が大量に飛んでくる。
あっぶねえな!!Mにあたったらどうすんだ!!
俺が部屋入って来たシリルを睨み付けると、奴も負けじと睨み返してくるじゃねえか。
バカ野郎!!Mが怯えてっだろうが!!普通プレイでここ迄やるかぁ?
このド阿呆には一度きっちり教育してやらねえといけねえ!!
Mは毎回全力で抵抗をしていますが…所詮レベルが違い過ぎますwww
Lv300~Lv500(勇者) vs Lv1(村人)
日頃から魔王の攻撃を受けても生きてる方々からすれば…
Mの抵抗など“肉球ペチペチッ”って程度ですvV
「ゲイリー!!開けろっ!!」
ギシ…ギシィ…ミシィ…
安物のベッドのスプリングが、男二人分の体重を受けて悲鳴をあげている。
そろそろ買い替え時なんじゃないでしょうか?宿主さん。
「やだっ!!んうぅぅ~~っ!!…っやめ!!むうぅぅ~~~!!」
悲鳴をあげているのは何もベッドだけではない…俺も負けずにあげている。
「…ハァ、すげぇ♪今からたっぷり楽しませてやるからな?」
俺の上にのし掛かる熊はやはりただの熊らしい…人語がまったく通じていない。
「いやっ、だって!!やめっ…!!んんん~~~!!んっ!んっ!」
抵抗虚しく、部屋に着くなりツルンと裸に剥かれた俺の足の上にはどっしり存在感のある熊。
両手は熊の片手で頭上で一纏めに、もう片方の手は俺の顎をガッチリと押さえ込んだまま
只今ガッツリ、シッカリ、ネットリと口内を蹂躙されております。。
ちょぉ、ギブギブギブ!!
最早まったく身動き出来ない見事な熊固め。
……参ったの合図すら出来ません…(泣)
…はい。一難去ってまた一難。
今は宿の二階の部屋にて熊に絶賛襲われ中のMです。
ドン!ドン!ダン!!
「おいっ!!ゲイリー!!待てって!!話を聞けっ!!」
ドアの外には後を追ってきたシリル。
部屋に入る直前で熊に突き飛ばされていたが…てか、吹っ飛んでた気がするが大丈夫だったのか?
「だ~~!!気が散る!!話は後で聞いてやるからちったぁ、気ぃ利かせろって!!」
熊固めはそのままにドアに向かって吼える熊。
「後じゃ手遅れだろ!!先に聞けって!!」
負けずにドアの向こうから叫ぶシリル。
「…た…助けて!!助けてシリル!!助けてぇぇぇ~!!」
取り敢えず、俺も負けずに叫んでみた。
カァァァァ…バキバキバキッ!!ドカァァァァ!!
直後の閃光と轟音
一瞬ドアがビカ~~ッと、光ったかと思ったら…え…?何々…?
・・・え~~っと…ドアが粉々に吹き飛んだ…の?
ドアが光ったと思った次の瞬間には熊が俺に覆い被さってきたので、実際何があったのか良く分からない。
だけどさっきまでドアがあった場所には今…
パラパラと舞落ちる木の破片と、怖い顔のシリルが立っていた…
「…っぶねえな!!破片が飛んできたぞこんチクショウ!!」
熊が俺を胸元に抱えたまま、のっそりと起き上がる。
「………Mから離れろ…」
…あの~~~もしもし?ねぇ、シリルくん。
君…目が座っていませんか?
なんか睨まれていない俺までガクブルしちゃいます…(怯)
ピリピリとした1人と1匹(熊)の醸し出す雰囲気で、既に半泣きな俺。
こいつら伊達に勇者関係者な訳じゃ無いらしい。
幾度となく死線を越えて来た奴等の、本気な殺気にあてられた俺は最早石と化している。
のほほんと生きてきた平和の象徴的なモブに、本物の殺気なんて教えないで頂きたい!!(飛涙)
バタバタ、ドタドタ…
「なんだ!!何があった!!」
「襲撃かぁ!!魔物はどこだ!!」
「魔王か!殴り込みか!借金取りかぁ!?」
あ~そうね。
あれだけ派手な音したもんね。
ここはどうやら冒険者御用達の宿だったらしい。
先程の轟音で剣を抜いたむさ苦しい男達が、続々と部屋へと押し掛けて来た。
取り敢えず真っ裸な俺は、複数の足音が聞こえると同時にシリルに回収されてシーツでぐるぐる巻きにされてはいたが…
部屋に充満する埃と木屑。
ベッドの上には半裸の熊。
ベッド脇にはシリルに抱えられたマッパにシーツな俺。
…はい。皆さんの言いたい事は良く分かる。皆まで言うな。
これでまた一つ…俺の妙な噂を増やしてしまったんだろう…
ヒュルルルルル…
………………………………………………………
…………………………………………………
……………………………………………………
「M…ごめんな。もう大丈夫だ。」
只今シリルのお膝の上で、ぎゅうぎゅうなでなでされまくりな俺ですが…
色々在りすぎて魂半分抜けかけてます。
あれから駆け付けたむさ苦しいお兄様方は、何やらヒソヒソ話をした後にこっそり居なくなっていたり…
一歩遅れてやって来た宿のおかみさんは、部屋を一瞥するなり熊にげんこを落としてドアの修理費を請求していたり…
俺はシーツぐるぐる巻きのまま、斜め向かいのシリルの部屋にお姫様抱っこで運ばれてたり…
その後を熊が拳骨くらった頭をスリスリしながら、半裸のまま追い掛けて来たり…
「………で、どうゆう事だよ?」
「噂を真に受けてんじゃねえぞ!…こいつはそんなんじゃ無いんだ。」
「…だってそいつぁ…あのMだろ?」
「チッ!お前の目は節穴か!?」
ドカァ!!
―――― ある勇者な熊の回想 ――――
数日前【剛力の勇者御一行】こと、俺達パーティーは次のターゲット『日の沈む村』近くの魔王城を目指して辺鄙な田舎町まで来ていたんだけどよ…ところがどうだ?
明日にゃあ日の沈む村に到着するってぇ時に、肝心のその魔王が倒されちまったって情報が勇者ネットで回ってきやがった!!
だ~~~チクショウ!!俺の獲物がぁ~!!
………ハァ…一足遅かったか…ついてねえなぁ…
魔王は基本的には不死身だ。
倒しても、倒しても、時が経てばまた復活してきやがる。
だがよ、そりゃあ数年先か…或いは数十年先か…取り敢えず大分先の話だ。
唐突に一先ずの目的を失っちまった俺達は、手前の村で立ち往生だ。
まぁ、こうゆう事もたまにゃぁあるさ。
何せ今時の世の中にゃあ、勇者なんてモンはゴロゴロいるからな。
魔王城で勇者パーティー同士が鉢合わせしちまって、獲物(魔王)の取り合いでバトルになったなんてぇ笑い話もあるくれぇだwww
とりあえず出遅れたらしい俺達は、次の仕事(討伐)の目処が付くまでイレギュラーな休みになっちまった。
まぁ、何にせよ久々の休みだ。ここは満喫しねえとってな!
…っても、こんな田舎じゃろくに時間も潰せねぇと踏んだ俺は、そっから一番近いダンジョンに潜りに行ったのよ。
ムシャクシャした時にゃあ、スカっと一暴れすんのが一番だろ?
んな訳でストレス発散で出掛けたダンジョンだったが、コレが当たりだった。
ダンジョン自体はこじんまりとした造りだったけどよ?
これが4層まで潜ってみたら、中にゃあレアモンスターもチラホラいて結構なお宝も落としてくれたもんで俺は上機嫌で宿に戻って来たワケよ!!
宿に戻れば何を置いても先ずは飯だ!!メシメシメシ~~~♪
携帯食ってやつぁ、計算して作られてるモンらしいがよ?
ありゃぁどうも味気無くていけねぇ。腹にも溜まんねえし、食った気がしねえ。
だもんで宿に着くなりすぐさま直行した食堂にゃあ、パーティーメンバーのシリルの姿があった。
丁度いい。俺の武勇伝を聞かせてやるぜ~♪って、腰掛けたところで…おったまげたぜ…
そのシリルの向いに居たのが【魅惑の泉】あのMだったんだからよ!!
Mの噂は俺等の間じゃ知らねぇ者はいねえ。
『日の沈む村』に現れた生きた回復の泉。それがMだ。
今じゃこの“回復の泉M”の情報は勇者ネットで専用スレが乱立しまくる騒ぎだ。
俺達勇者御一行ってえのは、日々命の危険と隣り合わせな職業だからな。
皆、各地にある回復の泉にゃあ、幾度と無く世話になってる。
実際俺も何度も命拾いをさせてもらったぜ。
それがどんだけ重要なモンか分かるかおい?
俺等にとっちゃどんなお宝よりも貴重なモンっだって事だ。
正に生死を分ける命綱ってヤツだな!
だが、難点は数が余り多くはねぇって事だ…
更に必ずしも現場近くにある訳じゃねぇって事と、なんせ天然の泉だ。
渇れたり新たに湧き出たりと、何かと不安定なモンでもある。
既存の泉が渇れたり新しい泉が発見されたりすりゃあ、俺達には神殿からネットを通じて報せがくる。
するってえとMAPに新しい泉の位置が自動的に上書きされ、俺等はその情報を元に綿密に計画を練る…ってとこなんだが…
だがよ、いつも計画通りにいくとは限らねえ…
毎回予め回復薬やら治癒魔法の使い手やらと、出来る限りの用意はしてるがそれでも万全とは言い難ぇのが現実だ。
過去には負傷した仲間を担いで泉に向かう途中で、間に合わなかった…なんてぇ事もあったしな…
俺だってはっきり言やぁ、今生きてる事すらただ運が良かったとしか言いようがねぇ。
正に『明日は我が身』だろ。
だがだがだがぁ~そこに、だ!!
生きた回復の泉、持ち運び可能な泉が現れたとなりゃあ、どうなる?
そいつさえ手に入れれば、そのパーティーは最早無敵だ!!
いくら戦っても疲れねぇ!!誰も死なねぇ!!
真の最強パーティーの出来上がりだ!!
…実際、過去に現れた回復泉(人間)は、大勢の取り合いから相当悲惨な人生だったらしいな。
最後は何でも都市一つが壊滅状態になる騒ぎで、かなりの死傷者が出たってぇ話だ。
んな経緯があったもんで、Mの噂がネットで流れ始めた頃にゃあすぐさま神殿から規制が入った。
曰く『聖なる泉』は神殿に所有権があり、勇者関係者は規定により使用する事は出来ても所有する事は出来ない。
ってよ。…だがまぁ、それでいいのかも知れねぇ。
Mは言わば超ド級のレアアイテムみてえなモンだしよ?
規制が入らなきゃ、過去の惨事の二の舞になんのは明らかだしな。
…だけどもよ?その間にも勇者ネットじゃどんどん可笑しな流れになってったんだよ…
当初の回復の泉情報はMの所在地、名前、身体的特長。
実際に試してみた回復の効果何かが主だったんだけどよ、その内こうゆう所が可愛かったの、ここをこう攻めてやったら色っぽくよがりまくっただの、縛られるととても喜んで腰振っておねだりしてくれちゃうだのって…
…おいおい。
お前等既に回復そっちのけじゃねえか?
勇者ネットはいつからR18専用板になったんだ?
更に時間が経つと共に加速して行く板じゃあ…
俺はあんな事や、こんな事をして、Mを凄く喜ばせたんだ!だの…
いやいや俺はあんな事や、そんな事迄して、お前よりもMを大満足させた!!だの…
ふざけるな!!俺はいつも全身全霊で〇〇が、△△を、☆☆☆させてるんだぞ!!お前等なんかお呼びじゃねえ!!Mはもう、俺無しじゃ居られない体なんだ!!分かったか!!って…
何だかなぁ…
違った趣旨の取り合いに発展してねえか?
とにかく主立ったスレを流し読みした結果…
Mって奴は名立足る勇者達を根こそぎ虜にしちまった、大層魅力的な“ドMで小悪魔な子猫ちゃん”って事ぐれぇは分かった。
そんな事聞かされたら、男としては気にならねぇ訳はねえよな?
実は俺も今回の討伐でMに会えんのを、密かに楽しみにしてたんだけどよ…
んなモンだから日の沈む村の手前でお預け食らった時ゃあもう!!
チックショ~~~!!俺のこの盛り上がった気持ちと股間をどうしてくれる!?
って…まぁ、半ば八つ当たり気味にダンジョンに出掛けて行った訳なんだが…
戻って来たら何と目の前に念願のMが居るじゃねえか!!
おいおいおいおい!!やっぱツイてるわ俺!!
やべぇ、一年分のツキを使っちまったかこれ!?
誰でも腹ペコの時に目の前にご馳走差し出されたら、食わねぇ訳きゃ無ぇだろ。
そんじゃあ遠慮無くいただきます!!ってんで、二階の俺の部屋に連れ込んだはいいが…
邪魔者迄付いてきやがった。
なんだシリル、お前まだいただいて無かったのか?
だが悪りぃな、ここは早い者勝ちだ!!
シリルを軽く突き放して急いでドアの鍵を閉めた。
「やっ!いやっ!!やめろぉ!!」
ふ~ん。やっぱ情報通りだな。
Mは可愛らしく抵抗するフリをする。
何でもそうゆうプレイに興奮するタイプらしい。
見せ掛けだけの抵抗は、猫がじゃれつく程度で痛くも痒くもねぇが…
やべぇ………こいつはかなりムラムラきたわ。
何だかこっちも煽られて、スゲェ興奮してきたぜっ!!
…これが数々の勇者達をメロメロにしてきたテクニックってやつか。侮れねぇ…
「やだっ!放せよっ!触るな!!」
そんな顔真っ赤にして、涙目で挑発されると…くぅ~~~!!
俺には叡智の野郎と違ってそっち(S)の趣味は無えハズなんだが…俄然燃えてきやがった!!
流石Mだぜ!!男のツボが分かりきってるなぁ!おい!!
だがMの息も既に荒くなってきてやがる。
こりゃあ俺、相当期待されちゃってるか?
ここで頑張らなけりゃあ男が廃る!!
大サービスの大ハッスルの特大フルコースで、期待に応えてやるぜ~~~っ!!
ドン!ドン!ダン!!
「おいっ!!ゲイリー!!待てって!!話を聞けっ!!」
………………………ってところでしつこく邪魔が入りやがる…くそっ
こっちは今お楽しみの真っ最中なんだよ!!つったく!!
「だ~~!!気が散る!!話は後で聞いてやるからちったぁ、気ぃ利かせろって!!」
暫く無視してたんだが、あんまりにも煩ぇモンで思わずドアに向かって叫んだらよ?
「後じゃ手遅れだろ!!先に聞けって!!」
とか何とかシリルのヤツがぬかしやがる。
…そんなに先にヤリたかったのかぁ?
だが俺達もう、すっかり盛り上がってるしよ。
お前ぇはその辺の女にもモテるんだから、溜まってるんならそっちで済ませればいいだろうが…とか思ってたらよ…?
「…た…助けて!!助けてシリル!!助けてぇぇぇ~!!」
………おいおいM?…これってばもしかして…寝盗られプレイってヤツか!?
俺が慣れねぇ高度プレイに戸惑った直後に、ドアの向こうから魔術展開の気配がしやがった…ヤベェ!!
咄嗟にMに覆い被さると同時に、シリルのバカ野郎がドアを破壊しやがった!!
巻き上がる爆風で木屑の破片が大量に飛んでくる。
あっぶねえな!!Mにあたったらどうすんだ!!
俺が部屋入って来たシリルを睨み付けると、奴も負けじと睨み返してくるじゃねえか。
バカ野郎!!Mが怯えてっだろうが!!普通プレイでここ迄やるかぁ?
このド阿呆には一度きっちり教育してやらねえといけねえ!!
Mは毎回全力で抵抗をしていますが…所詮レベルが違い過ぎますwww
Lv300~Lv500(勇者) vs Lv1(村人)
日頃から魔王の攻撃を受けても生きてる方々からすれば…
Mの抵抗など“肉球ペチペチッ”って程度ですvV
0
あなたにおすすめの小説
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる