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チュートリアル
チュートリアル
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この戦闘がチュートリアルと言われる所以は2つある。
その一つは、巨大ユニットとの模擬戦をさせてくれることだ。
「よし、戦闘開始だな」
今回戦う巨大ユニット、ブッチャーは、1×2マスで計2マスを占有するhight2扱いのユニットだが、占有マスが多かったり、hightが2以上のユニットを巨大ユニットという。
デカくて強い、分かりやすいボス的存在である。
因みにhightというのは、高低の値のことで、1hightがユニット1体分の高さを表しており、これが2以上離れていると、隣接していても近接攻撃は届かなかったり、移動が困難になったりする。
当時としては目新しかった3Dグラフィクス技術。これを使うことで、オリュゲイオンは平面だけではない、よりリアルな世界を創り出していた。
また、高さの出現によって、遠距離攻撃ができる職の優位性が確立されたのだが、それはまた別の話である。
「あ、あれ…?なんか私の方見ているような気が…」
「そうだな、がんばれ!」
「ちょ、ちょっと、騎士なんだから助けて下さいよ!」
巨大ユニットの特性一つとして、一番最初にユニットターンを獲得するというものがある。
最初のターン以降は、そのユニットのスピードに準じた速度でターンが巡るようになるが、最初はどんなに遅いユニットだったとしても、このように先手を取られてしまう。
悲壮な表情を浮かべる魔女娘に、ブッチャーは無慈悲にもその一撃を加えんとして近づいて行く。
「グハハハ!潰れろぉ!!」
「に、にぎゃー!?」
振り下ろされた棍棒が、魔女娘に直撃する。
薬師は、近接戦闘には向かない支援型のジョブだ。しかも、その中でも最も最低位のものである。
近接職からの攻撃を受けたら、あっけなくやられてしまうだろう。
「あ、あれ?痛くない??」
まあ、それもこれが普通の戦闘だったらという話である。
「なぁにぃ!?俺様の一撃を受けてピンピンしてやがるだとぉ?」
ブッチャー教官はでかいが極端に攻撃力が少なく、薬師でさえ満足に削れない。
プレイヤーはユニットを倒されることなく、安全に巨大ユニットとの模擬戦を経験することが出来るという訳だ。
正にチュートリアルと言うに相応しい。
では、耐久力はどうなのかというと…
「俺のターンか、いっきまーす」
ズバッ!
横薙ぎ一閃、ブッチャーに向けて通常攻撃を放つ。
「ん?なんだぁ…そのへなっちょろい攻撃はよぉ~?」
そう、ブッチャーは非常に固い。
近接職の2次職、騎士は高ステータスの重武装で身を固めることが出来る。
そうして得られた高い攻撃力や、守備力を活かして戦う、というのが騎士というジョブのコンセプトでおる。
素の攻撃力も高めで、序盤の戦闘で主軸となるジョブだが、それでさえブッチャー教官には大したダメージを与えられない。
だか、これは別にブッチャーの防御力の高さを表している訳ではない。
巨大ユニットの特性として、占有しているマス目の分、体力に補正が掛かるようになっているのだ。
結果として、割合的には大したダメージになっていないという訳だ。
ま、それだけじゃ無いがな。
さて次は…まじょこちゃんのターンか。
「まじょこちゃん、動けるな?」
「は、はひぃ!」
「ブッチャーに攻撃、終わったらその場で待機だ」
「い、いやだぁ…か、からだが勝手に動くぅぅ!?」
今は俺が部隊の指揮を執っているので、兵士ユニットのまじょこでは、命令に逆らえないのだ。
大丈夫、死にはしないから。
「う、う、う、うわぁぁー!」
魔女娘は初期装備の軍用ナイフを握りしめ、ブンブンと闇雲に振り回す。
まるでなっていない動きだ。
とても、戦闘を生業とする者には見えないな。ステータスの低さって、こういう風に表現するのか。
「ガハハハ!片腹痛いわ!」
当たってはいるものの、持ち前のタフネスから、攻撃が全く効いていない。
魔女娘のターンが終わり、残りの2人にターンが訪れる。
「踊り子さんと、僧侶ちゃんも突撃よろしく。デカブツを俺たちで取り囲むように、側面と背面に回り込んでくれ」
「わかったわ」
「はーい」
配置に着いた2人は攻撃を繰り出す。
「せいやっ!」
「てーい」
「効かぬわっ!」
次々と攻撃を繰り出すも、ブッチャーは
まだまだ余裕だ。
「グハハハ!さっきはダメだったが、もう一撃喰らっても無事でいられるかな?」
ブッチャーは、再び魔女子を狙う。
「な、なんで私ばっかり…」
それは、君が一番体力が少ないからだよまじょこくん。
まじょこちゃんは攻撃を受けるが、まだまだやられない。
「な、なんでこんな目に遭わなくちゃいけないんですか…」
すご~く辛そうな顔をしているまじょこちゃん。そんなまじょこちゃんには、戦場に出たら男も女も関係ないだろ、甘えんなと言って励ましてあげたい。
しかし、部下に思いやりを持って行動しているということを伝えなくては、今後何かしら不都合があるかも知れない。
モブ相手に気を遣わなきゃいけないのは正直言って面倒だが、これも上司の務めというやつだろう。
「なあ、まじょこちゃん。ちょっと強くなったような気がしないか?」
「え?別にそんな事ないですけど…」
「うむ、じゃあまた殴ってみなさい」
「ってい!」
俺の指令に従い、ナイフでブッチャーを切りつけるまじょこちゃん。
「どうだ?」
「お、おおお?れ、レベルアップしましたぁ!」
うむうむ、そうだろう。
何せブッチャーは、レベル10のユニットなのだ。まじょこちゃんみたいなレベル1のペーペーが殴りかかれば、レベルも簡単に上がるというものである。
序盤では、行動の選択肢が限りなく狭い。その為、レベルと熟練度は上げにくいのだが、ここでなら簡単に鍛えることが出来るのだ。
それ故、オリュゲイオンプレイヤー達はこの戦闘を通して、仲間にしたばかりの弱卒をレベリングする。
誰もが通る道という意味で、ブッチャー教官の高耐久、低火力を活かしたレベリングは、この戦闘をチュートリアルと言わしめる所以その2とされている。
「という訳だ、全員思いっきり殴りかかるように。後、3巡したら誰かポーション投げてね」
「なんで態々ポーションなんて…あ」
そうだよ。こいつを殴りつけて、延々とレベリングする為だよ。
尚、ポーション利用などの回復行為も、対象のレベルが高い程、経験値量が増える仕様となっている。美味すぎるんじゃ~。
「て、テメェら舐めやがって…!」
「ま、また私…みぎゃー!」
ふと見ると、ブッチャー教官も指導に熱を入れているみたいだ。
やる気があるのはいい事だね。
クリスとレナードと別れた時には空高く昇っていた太陽が、いつの間にか沈みかかっている。
「ぐ…も、もう降参だ…もう勘弁してくれ」
出会った当初はあんなに強気だったのに、今では借りてきた猫のようにビクビクと震えている。
「て言ってるけど、どうするの?」
踊り子さんが俺に指示を仰ぐ。
うーん、流石に時間かけ過ぎちゃったかな…もう一巡で終えるとするか。
「よし、もうそろそろ帰ることにするよ」
「!!!」
ブッチャーの淀みきった瞳が、心なしか澄んだように見える。
「踊り子さん、教官にポーション投げて」
「まだやるの?」
「ん?いや、もう帰るから投げたら入口まで後退ね」
「え?倒さないんですか?」
この娘は何を言っているのだろうか。
まだ、レナードとクリスのレベリングが済んでいないじゃないか!
そんな仲間外れみたいなこと、聖人君子の俺には出来ない。
「それじゃあ、またお世話になります。また明日よろしくお願いじます!ブッチャー教官」
全員が行動を終了し、入口へと戻る。
別に今日勝つ必要はないのだ。
何故ならこの戦闘はチュートリアル、プレイヤーに敗北は無い。
何度でもやり直しは効くのだから。
その一つは、巨大ユニットとの模擬戦をさせてくれることだ。
「よし、戦闘開始だな」
今回戦う巨大ユニット、ブッチャーは、1×2マスで計2マスを占有するhight2扱いのユニットだが、占有マスが多かったり、hightが2以上のユニットを巨大ユニットという。
デカくて強い、分かりやすいボス的存在である。
因みにhightというのは、高低の値のことで、1hightがユニット1体分の高さを表しており、これが2以上離れていると、隣接していても近接攻撃は届かなかったり、移動が困難になったりする。
当時としては目新しかった3Dグラフィクス技術。これを使うことで、オリュゲイオンは平面だけではない、よりリアルな世界を創り出していた。
また、高さの出現によって、遠距離攻撃ができる職の優位性が確立されたのだが、それはまた別の話である。
「あ、あれ…?なんか私の方見ているような気が…」
「そうだな、がんばれ!」
「ちょ、ちょっと、騎士なんだから助けて下さいよ!」
巨大ユニットの特性一つとして、一番最初にユニットターンを獲得するというものがある。
最初のターン以降は、そのユニットのスピードに準じた速度でターンが巡るようになるが、最初はどんなに遅いユニットだったとしても、このように先手を取られてしまう。
悲壮な表情を浮かべる魔女娘に、ブッチャーは無慈悲にもその一撃を加えんとして近づいて行く。
「グハハハ!潰れろぉ!!」
「に、にぎゃー!?」
振り下ろされた棍棒が、魔女娘に直撃する。
薬師は、近接戦闘には向かない支援型のジョブだ。しかも、その中でも最も最低位のものである。
近接職からの攻撃を受けたら、あっけなくやられてしまうだろう。
「あ、あれ?痛くない??」
まあ、それもこれが普通の戦闘だったらという話である。
「なぁにぃ!?俺様の一撃を受けてピンピンしてやがるだとぉ?」
ブッチャー教官はでかいが極端に攻撃力が少なく、薬師でさえ満足に削れない。
プレイヤーはユニットを倒されることなく、安全に巨大ユニットとの模擬戦を経験することが出来るという訳だ。
正にチュートリアルと言うに相応しい。
では、耐久力はどうなのかというと…
「俺のターンか、いっきまーす」
ズバッ!
横薙ぎ一閃、ブッチャーに向けて通常攻撃を放つ。
「ん?なんだぁ…そのへなっちょろい攻撃はよぉ~?」
そう、ブッチャーは非常に固い。
近接職の2次職、騎士は高ステータスの重武装で身を固めることが出来る。
そうして得られた高い攻撃力や、守備力を活かして戦う、というのが騎士というジョブのコンセプトでおる。
素の攻撃力も高めで、序盤の戦闘で主軸となるジョブだが、それでさえブッチャー教官には大したダメージを与えられない。
だか、これは別にブッチャーの防御力の高さを表している訳ではない。
巨大ユニットの特性として、占有しているマス目の分、体力に補正が掛かるようになっているのだ。
結果として、割合的には大したダメージになっていないという訳だ。
ま、それだけじゃ無いがな。
さて次は…まじょこちゃんのターンか。
「まじょこちゃん、動けるな?」
「は、はひぃ!」
「ブッチャーに攻撃、終わったらその場で待機だ」
「い、いやだぁ…か、からだが勝手に動くぅぅ!?」
今は俺が部隊の指揮を執っているので、兵士ユニットのまじょこでは、命令に逆らえないのだ。
大丈夫、死にはしないから。
「う、う、う、うわぁぁー!」
魔女娘は初期装備の軍用ナイフを握りしめ、ブンブンと闇雲に振り回す。
まるでなっていない動きだ。
とても、戦闘を生業とする者には見えないな。ステータスの低さって、こういう風に表現するのか。
「ガハハハ!片腹痛いわ!」
当たってはいるものの、持ち前のタフネスから、攻撃が全く効いていない。
魔女娘のターンが終わり、残りの2人にターンが訪れる。
「踊り子さんと、僧侶ちゃんも突撃よろしく。デカブツを俺たちで取り囲むように、側面と背面に回り込んでくれ」
「わかったわ」
「はーい」
配置に着いた2人は攻撃を繰り出す。
「せいやっ!」
「てーい」
「効かぬわっ!」
次々と攻撃を繰り出すも、ブッチャーは
まだまだ余裕だ。
「グハハハ!さっきはダメだったが、もう一撃喰らっても無事でいられるかな?」
ブッチャーは、再び魔女子を狙う。
「な、なんで私ばっかり…」
それは、君が一番体力が少ないからだよまじょこくん。
まじょこちゃんは攻撃を受けるが、まだまだやられない。
「な、なんでこんな目に遭わなくちゃいけないんですか…」
すご~く辛そうな顔をしているまじょこちゃん。そんなまじょこちゃんには、戦場に出たら男も女も関係ないだろ、甘えんなと言って励ましてあげたい。
しかし、部下に思いやりを持って行動しているということを伝えなくては、今後何かしら不都合があるかも知れない。
モブ相手に気を遣わなきゃいけないのは正直言って面倒だが、これも上司の務めというやつだろう。
「なあ、まじょこちゃん。ちょっと強くなったような気がしないか?」
「え?別にそんな事ないですけど…」
「うむ、じゃあまた殴ってみなさい」
「ってい!」
俺の指令に従い、ナイフでブッチャーを切りつけるまじょこちゃん。
「どうだ?」
「お、おおお?れ、レベルアップしましたぁ!」
うむうむ、そうだろう。
何せブッチャーは、レベル10のユニットなのだ。まじょこちゃんみたいなレベル1のペーペーが殴りかかれば、レベルも簡単に上がるというものである。
序盤では、行動の選択肢が限りなく狭い。その為、レベルと熟練度は上げにくいのだが、ここでなら簡単に鍛えることが出来るのだ。
それ故、オリュゲイオンプレイヤー達はこの戦闘を通して、仲間にしたばかりの弱卒をレベリングする。
誰もが通る道という意味で、ブッチャー教官の高耐久、低火力を活かしたレベリングは、この戦闘をチュートリアルと言わしめる所以その2とされている。
「という訳だ、全員思いっきり殴りかかるように。後、3巡したら誰かポーション投げてね」
「なんで態々ポーションなんて…あ」
そうだよ。こいつを殴りつけて、延々とレベリングする為だよ。
尚、ポーション利用などの回復行為も、対象のレベルが高い程、経験値量が増える仕様となっている。美味すぎるんじゃ~。
「て、テメェら舐めやがって…!」
「ま、また私…みぎゃー!」
ふと見ると、ブッチャー教官も指導に熱を入れているみたいだ。
やる気があるのはいい事だね。
クリスとレナードと別れた時には空高く昇っていた太陽が、いつの間にか沈みかかっている。
「ぐ…も、もう降参だ…もう勘弁してくれ」
出会った当初はあんなに強気だったのに、今では借りてきた猫のようにビクビクと震えている。
「て言ってるけど、どうするの?」
踊り子さんが俺に指示を仰ぐ。
うーん、流石に時間かけ過ぎちゃったかな…もう一巡で終えるとするか。
「よし、もうそろそろ帰ることにするよ」
「!!!」
ブッチャーの淀みきった瞳が、心なしか澄んだように見える。
「踊り子さん、教官にポーション投げて」
「まだやるの?」
「ん?いや、もう帰るから投げたら入口まで後退ね」
「え?倒さないんですか?」
この娘は何を言っているのだろうか。
まだ、レナードとクリスのレベリングが済んでいないじゃないか!
そんな仲間外れみたいなこと、聖人君子の俺には出来ない。
「それじゃあ、またお世話になります。また明日よろしくお願いじます!ブッチャー教官」
全員が行動を終了し、入口へと戻る。
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