堕ちた英勇の子

正海広竜

文字の大きさ
17 / 17

第十六話

しおりを挟む
  放課後。

 今日受ける授業が終わったエドワードは身体を伸ばした。

(さてと、騎乗部が活動する日だったな)
 
 エドワードは席を立ち、自分達幼馴染が秘密に使っている隠れ家へと足を向けた。

 教室を出よう扉に手を掛けようとしたら、突然扉が開かれた。

「ああ、居た」

 扉を開けたのはアルティナであった。

「どうした? ティナ」

「今日はどうするの?」

「今日か? 今日は騎乗部に顔を出すつもりだ」

「ふ~ん。じゃあ、わたしも部活に行くから。また明日」

 アルティナはそう言ってエドワードに挨拶して離れて行こうとした。

「部活って、今日は遊戯部の活動日だったか?」

 そんな話を聞いていなかったエドワードは訊ねた。
 
 アルティナは足を止めて首だけ振り返った。

「ううん。違うわ。あたしも掛け持ちにするの。今日は料理部に行くの」

「……料理部?」

 エドワードはそれを聞いて思わず冷や汗を流した。

 アルティナは料理は出来ない上に何故かレシピ通りに作らないでアレンジを加える。

 幼い頃からアルティナの料理の味見を付き合わされてきたエドワードからしたら思い出すのも恐ろしい言えた。

 殆どの幼馴染達は一度幼馴染の義理で味見したのだが、大惨事になったのでそれ以来アルティナが作った料理の味見をする事はしなくなった。

 付き合うのはオスカーぐらいであった。

 エドワードの場合は強制的に参加させられた。

『誰か味見して貰わないと、味が分からないでしょう』

 と意味不明な事を言ってエドワードに無理矢理味見させていた。

 お蔭で余程珍しい毒を使ってる料理でなければ、何を食べても何とも思わない程に頑丈になった。

「ふふ~ん。楽しみにしていなさい。明日、作った物を食べさせてあげるから」

 アルティナは自信満々に胸を張ってからエドワードから離れて行った。

 アルティナを見送ったエドワードは冷や汗を拭った。

(……明日はティナに見つからない様にしよう)

 そう心に決めたエドワードは自分の馬が置いている隠れ家へと向かった。


 ドヴェルクに手綱を付けてエドワードは隠れ家を出る。

 この隠れ家の出入り口とは別の出る所があった。其処はもっぱらドヴェルクが外に出たい時に使うだけであった。

 其処から出たドヴェルクの手綱を取りエドワードは騎乗部がある畜舎に向かう。

 其処で一度集まり、騎乗部に入部した者達が乗る魔物を選ぶ事になっている

 授業が終わった生徒達が学院を出て行こうとする中でドヴェルクを連れるエドワード。
 
 エドワードの見た目と出自から目立つ所にドヴェルクも連れているので余計に目立っていた。

 そんな好奇な視線にさらされてもエドワードは気にせず畜舎に向かった。

 そうして、畜舎に着くと何故か騒然として人だかりが出来ていた。

(どうしたんだ?)

 そう思いながらエドワードはドヴェルクの手綱を近くの柵に結んで「大人しくしていろよ」と言ってから、人だかりを掻き分けて進んだ。

 時折、人にぶつかりながら進んでいると、エドワードは最前列まで来た。

 その目の前の光景を見てエドワードは目を覆った。

 そうなるのも無理はない。目の前でアイギナとカサンドラが睨み合っているのであれば仕方がないと言えた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...