悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

文字の大きさ
58 / 88

第58話 仰せのままに

しおりを挟む
 ザガード達が教練場で待っていると、ようやくリウンシュハイム家の者達がやって来た。
 しかし、その人数を見て眉を顰めるザガード。
 先程カトリーヌを脅迫していた人数は五人であったが、何時の間に呼んでいたのか十人になっていた。
「遅くなったな」
「我々の準備は完了だ」
 リウンシュハイム家の者達は剣を構える。
 教練場の照明の明かりに当たると、刀身の部分が鈍く光った。
 その光を見て、ザガードは相手が持っている剣が何なのか分かった。
 ザガードは内心思った。
(真剣だな? あいつらは馬鹿なのか?)
 ザガードが持っている剣は訓練用で刃引きはしてあるが真剣とお区別の為に光に当てても光らない様に細工をしている。
 
 こんな所で刃傷沙汰を起こせば自分達も処罰されるとは考えないのだろうかと思うザガード。
「リエリナ様。今回の決闘をする前に二つほど確認したい事があるが宜しいか」
「何かしら?」
「まず一つは見届け人を用意してなかったので、こちらで用意したが問題あるか?」
「ないわよ」
「では、最後にもう一つ。今回の決闘の勝者は何を得るのでしょうか?」
「そうね。・・・・・・」
 リエリナは考えていなかったのか少し考える。
「・・・・・・そうだわ。貴方達が勝ったらわたしが殿下を紹介してあげるわ」
「っ⁉ 真でしょうな?」
「嘘はつかないわ。でも、わたし達が勝ったら今回の事を貴方達の本家の者に話すけどいいわね」
 リエリナの条件を聞いてリウンシュハイム家の者達は一瞬顔を顰めたが直ぐに笑みを浮かべた。
「その条件で我らは問題ないです」
「なら、良いわね。で、見届け人は?」
 リエリナが訊ねるとリウンシュハイム家の者達の中でリーダー格の者が手を叩いた。
 すると、リウンシュハイム家の者達が開けたドアから人が入って来た。
 年齢は三十代後半の男性で教職のようだが、残念ながらザガード達は見た事が無い顔であった。
「こちらの方は?」
「こちらは当学園の教員で副教頭のガリアン=フォン=ヒシュリテンです」
「お初にお目に掛かります」
 紹介を受けたガリアンはリエリナに一礼する。

 リエリナも会釈で返して、ザガードを手招きする。
 観客席と試合場は柵で区切られているので、柵越しで話す二人。
「お嬢様。あの方は」
「みなまで言わなくても分かるわ。多分、リウンシュハイム家の分家の者でしょうね。向こうが勝つ為に呼んだんでしょうね」
「でしょうね。で、如何しますか?」
「完膚なきまで誰が見ても文句が出ない勝ち方をしなさい」
「承知しました」
「相手は十人だけど問題ないでしょう?」
「はい。寧ろ十対一でも勝てます」
 ザガードは先程、相手の動きや足運びなどを見たがどう見ても戦った事がある者の動きではなかった。
 なので、真剣を持っていたとしても問題なく勝つ自信があるザガード。
「じゃあ、そうしましょうか」
 リエリナはザガードと話すのは止めて、相手を見る。
「一対一では時間が掛かるから纏めて相手をするでいいわね」
 それを聞いたリウンシュハイム家の者達はぎょっとした。
 審判のガリアンも本気かという顔をしていた。
「構わないわね?」
「仰せのままに。お嬢様」
 ザガードは一礼して、試合場に入る。
 そして、訓練用の剣を構える。
「では、お相手を」
「ふざけた事をっ」
「良いだろう。その大言壮語に後悔するが良い」
 リウンシュハイム家の者達は全員、試合場に入り剣を構えた。
 全員、その構え方を見て勝てるとザガートは思った。
 そんな思い顔には出さないで真面目な顔をするザガード。
「では、始め!」
 審判のガリアンが開始の声と共にリウンシュハイム家の者達は声を上げて駈け出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...