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第1話 お荷物のリセイン
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どうして、こうなってしまったんだろう。
おれたちは行き止まりの部屋で、魔物に囲まれていた。
次々と襲ってくる魔物たちを、剣士、魔術師、武闘家のアタッカーが倒す。
傷付けばヒーラーが癒して回る。
おれは、聖剣のリセインは、完全にお荷物だ。
トロールが醜く鳴きながら、俺に向かって棍棒を振りおろす。
俺は足も腕も動かせなくって。出来たことといえば。
「ひ、ひぃぃぃ……!!」
「馬鹿っ! 後ろに下がってろって言ったろ!」
剣士が素早くトロールの腕を切り落とす。
バランスを崩すトロールだが、宙に浮いた棍棒はそのまま俺めがけて落ちてくる。
「全く、世話が焼けますよぉっ!」
すかさず魔術師が杖を振ると、激しい水流が俺を守った。
「ご、ごめんなさ……」
「ありがとうを聞きたかったんですがねリセイン君」
「武闘家! コアを引っこ抜いてくれ!」
「おう!」
足が震える。歯がガチガチと鳴る。剣を持つ手は今にも離してしまいそうで。
いや、離すな。これだけは握っておかないと。
この聖剣だけが、おれの生きている価値なんだから。
ここは高難易度ダンジョン。
道は複雑。魔物も強力。
本来はまだ入るべきでない所だったが、村のこどもから依頼を受けた剣士が突入を決めた。
剣士はこのパーティーのリーダーであり、おれの幼馴染だ。
同い年の男だというのに、剣士はすでに大人のような力を持っていた。
……おれが弱すぎるだけか。
「あんたら前衛が動くから前も後ろもめちゃくちゃじゃないの! 後衛を守りなさいよ後衛を!」
「悪い悪い。っと!」
剣士が跳び、ヒーラーの背後にいたコボルトを斬り伏せる。
そのまま戦闘を続けつつヒーラーに聞いた。
「魔力の補充は?」
「まだいい。魔術師にやって。大技使っちゃったんだから」
あの弱虫のせいでね、というのが聞こえた気がした。
コアを投げ渡された魔術師が杖の宝石と取り替える。
何かしなければ。
みんな動いている。活躍している。貢献している。
おれも何か__
「ギャオオォォォォォーーーッ!!!」
魔物たちの奥から、四つ足のドラゴンが炎を吐こうとしているのが見えた。
聖剣を構える。
「み、みんなおれの後ろに!」
「頼むリセイン!」
凄まじい火力の炎が吐き出される。
魔物ごと焼き尽くす猛火はまっすぐおれを目指し__
ギィィィィィィィ……ン
聖剣に吸い込まれていった。
剣にはめ込まれた石が輝く。
炎はうずを巻いて石に消えていく。
「ぐううっ」
炎の勢いは殺せないため、自力で耐える必要がある。
熱さによって神経が反射をおこそうとするのを、必死に耐える。
後ろから戦っている音が聞こえる。
「こんなときにまで、殴りかかってくることぁ……ねぇだろうがっ!」
「やはりそのままのコアでは! 精製されてない魔力なんて無茶です……」
「無茶でもなんでもやるのっ! ケガしたら私が治してあげるから!」
「依頼の草は取った! あとはワープストーンさえ起動できれば!」
殴る音。殴られる音。杖を振り回す音。呪文を唱える声。うめく声。励ます声。
おれはただ剣を持って立っているだけ。
炎を防ぐためっていっても、おれ自身は何もしていない。
もっと強ければ、ドラゴンを倒してみんなに加勢できたのに。
もっと早ければ、攻撃を避けられて守ってもらうこともなくなるのに。
もっと賢ければ、最短で依頼を達成して、魔物に囲まれることもなかったかもしれない。
おれが……。
「リセイン! 避けろ!」
「……え?」
ドゴォッ!!
一瞬、空を飛んだのかと思った。
別個体のトロールが振り抜いた姿が見える。
剣士の目が丸くなるのが見える。
地面の感覚がな__
「がぁァァァああっ!? ぁあぐ、かッ、かひゅっ」
__痛み。猛烈な、形容しがたい激痛。
背中が、腹が、首が、腕が。いたい。
上手く息ができないことに気がつく。
なぜかなんて考えられない。
いたい。
くるしい。
「キャアアアアッ!!」
ヒーラーの叫び声が、聞こえる。
いや正確にはみんながうめく声のなか、甲高い叫びが一層聞こえやすい……。
みんな?
己の手を見た。
聖剣が無かった。
みんなを見た。
炎が覆っていた。
「水よ、我らを、護りたまえ……!!」
魔術師がどうにか炎を和らげるも、みんな致命傷を負っている。
武闘家も剣士もヒーラーもその場に倒れて、立てないようだった。
幸か不幸か、トロール含め部屋にいた魔物は灰となったため、追撃をする魔物はすぐには来ない。
「大地よ、我らと敵を分けたまえ……」
少しでも時間稼ぎになればと、魔術師は石壁を作り出す。
部屋にはおれたちだけが残った。
『お前のせいだ』
『お前が剣を手放したから』
どこからか聞こえてくる声。
『お前は弱い。何もできやしない。何も成し遂げられない』
この声は、おれが聖剣のそばに生まれ落ちてからずっとおれを責めていた。
いや。生まれる前、元の世界にいたときだって頭の中にいた気がする。
『お前の価値は聖剣しかない』
『なのに手放した。疎まれる。嫌われるのは当然だ』
『仲間が守ってくれていたのは、お前じゃなくて聖剣なんだよ』
おれたちは行き止まりの部屋で、魔物に囲まれていた。
次々と襲ってくる魔物たちを、剣士、魔術師、武闘家のアタッカーが倒す。
傷付けばヒーラーが癒して回る。
おれは、聖剣のリセインは、完全にお荷物だ。
トロールが醜く鳴きながら、俺に向かって棍棒を振りおろす。
俺は足も腕も動かせなくって。出来たことといえば。
「ひ、ひぃぃぃ……!!」
「馬鹿っ! 後ろに下がってろって言ったろ!」
剣士が素早くトロールの腕を切り落とす。
バランスを崩すトロールだが、宙に浮いた棍棒はそのまま俺めがけて落ちてくる。
「全く、世話が焼けますよぉっ!」
すかさず魔術師が杖を振ると、激しい水流が俺を守った。
「ご、ごめんなさ……」
「ありがとうを聞きたかったんですがねリセイン君」
「武闘家! コアを引っこ抜いてくれ!」
「おう!」
足が震える。歯がガチガチと鳴る。剣を持つ手は今にも離してしまいそうで。
いや、離すな。これだけは握っておかないと。
この聖剣だけが、おれの生きている価値なんだから。
ここは高難易度ダンジョン。
道は複雑。魔物も強力。
本来はまだ入るべきでない所だったが、村のこどもから依頼を受けた剣士が突入を決めた。
剣士はこのパーティーのリーダーであり、おれの幼馴染だ。
同い年の男だというのに、剣士はすでに大人のような力を持っていた。
……おれが弱すぎるだけか。
「あんたら前衛が動くから前も後ろもめちゃくちゃじゃないの! 後衛を守りなさいよ後衛を!」
「悪い悪い。っと!」
剣士が跳び、ヒーラーの背後にいたコボルトを斬り伏せる。
そのまま戦闘を続けつつヒーラーに聞いた。
「魔力の補充は?」
「まだいい。魔術師にやって。大技使っちゃったんだから」
あの弱虫のせいでね、というのが聞こえた気がした。
コアを投げ渡された魔術師が杖の宝石と取り替える。
何かしなければ。
みんな動いている。活躍している。貢献している。
おれも何か__
「ギャオオォォォォォーーーッ!!!」
魔物たちの奥から、四つ足のドラゴンが炎を吐こうとしているのが見えた。
聖剣を構える。
「み、みんなおれの後ろに!」
「頼むリセイン!」
凄まじい火力の炎が吐き出される。
魔物ごと焼き尽くす猛火はまっすぐおれを目指し__
ギィィィィィィィ……ン
聖剣に吸い込まれていった。
剣にはめ込まれた石が輝く。
炎はうずを巻いて石に消えていく。
「ぐううっ」
炎の勢いは殺せないため、自力で耐える必要がある。
熱さによって神経が反射をおこそうとするのを、必死に耐える。
後ろから戦っている音が聞こえる。
「こんなときにまで、殴りかかってくることぁ……ねぇだろうがっ!」
「やはりそのままのコアでは! 精製されてない魔力なんて無茶です……」
「無茶でもなんでもやるのっ! ケガしたら私が治してあげるから!」
「依頼の草は取った! あとはワープストーンさえ起動できれば!」
殴る音。殴られる音。杖を振り回す音。呪文を唱える声。うめく声。励ます声。
おれはただ剣を持って立っているだけ。
炎を防ぐためっていっても、おれ自身は何もしていない。
もっと強ければ、ドラゴンを倒してみんなに加勢できたのに。
もっと早ければ、攻撃を避けられて守ってもらうこともなくなるのに。
もっと賢ければ、最短で依頼を達成して、魔物に囲まれることもなかったかもしれない。
おれが……。
「リセイン! 避けろ!」
「……え?」
ドゴォッ!!
一瞬、空を飛んだのかと思った。
別個体のトロールが振り抜いた姿が見える。
剣士の目が丸くなるのが見える。
地面の感覚がな__
「がぁァァァああっ!? ぁあぐ、かッ、かひゅっ」
__痛み。猛烈な、形容しがたい激痛。
背中が、腹が、首が、腕が。いたい。
上手く息ができないことに気がつく。
なぜかなんて考えられない。
いたい。
くるしい。
「キャアアアアッ!!」
ヒーラーの叫び声が、聞こえる。
いや正確にはみんながうめく声のなか、甲高い叫びが一層聞こえやすい……。
みんな?
己の手を見た。
聖剣が無かった。
みんなを見た。
炎が覆っていた。
「水よ、我らを、護りたまえ……!!」
魔術師がどうにか炎を和らげるも、みんな致命傷を負っている。
武闘家も剣士もヒーラーもその場に倒れて、立てないようだった。
幸か不幸か、トロール含め部屋にいた魔物は灰となったため、追撃をする魔物はすぐには来ない。
「大地よ、我らと敵を分けたまえ……」
少しでも時間稼ぎになればと、魔術師は石壁を作り出す。
部屋にはおれたちだけが残った。
『お前のせいだ』
『お前が剣を手放したから』
どこからか聞こえてくる声。
『お前は弱い。何もできやしない。何も成し遂げられない』
この声は、おれが聖剣のそばに生まれ落ちてからずっとおれを責めていた。
いや。生まれる前、元の世界にいたときだって頭の中にいた気がする。
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