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4. 私、0歳 こんにちは赤ちゃんのようです。

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明るい光が見える。ああ、あそこに向かって行けばいいのかと満足に動かない体を捩ると、柔らかい光が私を包んだ。

「奥様、おめでとうございます。女の子ですよ!」
「ええ、かわいい私の赤ちゃん…」

私を抱えた綺麗な人が汗を拭かれながら微笑む、と同時に大きなバタンっという音と
「リーシャ!大丈夫か?!」というこれまた大きな声が響いた。

「落ち着いてくださいませ、旦那様!奥様とお嬢様はご無事でございますよ。」
「あなた。この子を抱いてやってくださいな。可愛い可愛い私たちの娘です。」
「おお、娘であったか!」

綺麗な女性から、なにやらでれでれ顔の男性へと移動させられる。どうやらこの2人が私の両親のようだ。ふむふむ、と観察していると男性が心配そうに顔を顰め、
「しかし、泣かないが…大丈夫なのか?」と私の顔をのぞき込んだ。

ーまっまずいわ!!ー

「あ、あううう…」

咄嗟に泣こうと思ったが…うん、泣けなかった。

しかし、それでも声を上げたことは両親の安心に繋がったらしい。
「良かった…きっと大人しい子なんだな。
この素晴らしい幸運をミレニディ様へ感謝しよう。王都へ出生届けも出さないとな。」
「ふふ、そうね。可愛い我が子、ようこそアースガルドへ」
「直ぐに王都、フォルティアへと遣いを出しましょう」

ーへ?ミレニディ?アースガルド?王都フォルティア?ー

どこかで聞いた事がある単語が飛び交う。
そして思い至った。

「あううう…?!うぎゃぁあああ!!」
ーそれって…?!乙女ゲームじゃないですかぁぁー!!ー

今度こそ赤ん坊の絶叫が父親の腕の中で響き渡ったのだった。

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