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こんな私でも、好きになっていいですか?
ずっと前から。
しおりを挟むずっと前から。
───────────────
今まで以上に生徒会長になろうと勉強に励む日々が1週間ほど続いたある日のこと。
廊下を歩いていると、聖那さんと成川先輩が2人でいるところを発見した。
盗み聞きは良くないよね、と会話の内容は気になるけど立ち去ろうとした時。
「優羽をあんな目に遭わせた奴と結婚?笑わせんな」
という聖那さんの声が聞こえ、思わず足を止めてしまう。
優羽をあんな目に遭わせた奴って……成川先輩のことを言ってるの?
いやまさか、そんなはず……。
そう思っている私に現実を突きつけるかのように、成川先輩の大きな声が聞こえてきて。
「っ、聖那のせいでしょ!?私の気持ち気づいてる癖に、あんな子のこと好きになって。家だって見た目だって、私の方が上なのに!」
え……?
今の本当に、成川先輩なの?
生徒会副会長として仕事を完璧にこなして、誰にも平等に接することができるみんなの憧れの、あの成川先輩?
私の知っている成川先輩とはかけ離れた姿に、その場から立ち去ろうにも足が動かなくなる。
聖那さんが婚約のことを教えてくれなかったのは、直接ではないとはいえ、私に嫌がらせをしていた人が成川先輩だって知ったら、私が悲しむと思ったからなのかな……?
もしそうなら、あんなに責めてしまって、ごめんなさい。
許されないかもしれないけど、心の中で謝った。
「家とか見た目とかどうでもいい。俺は優羽がいいんだ」
「っ……私は聖那のことが好き。初めて会った12歳の時、聖那が優しく微笑んでくれて……その時からずっと!」
「微笑み?そんなのあのクソ親父に優しく接しろって言われたからに決まってんだろ。それに俺は9歳の時から既に優羽のことを愛してる。スミレが好きだって言ってたあの笑顔は、今も忘れられない」
「………え?」
思わず声が出てしまうほど驚きだった。
9歳の時、それに、スミレが好き……?
私がスミレの……お母さんのことを話したのは、牙央くんともう1人しかいない。
まさか、聖那さんが“あの子”なの……?
確信を持つために、2人の会話に耳を澄ます。
「そ、んな……いや、待ってよ。どこかの令嬢でもないあの子が聖那とどこで会ったっていうの!?」
成川先輩は怒って当然だよね。
ずっと前から婚約してきたのに、その立場を奪われるかもしれないんだから。
声を荒らげる成川先輩に、聖那さんは冷静に対応する。
「分かってるだろ、お前も。俺は小学校がお前らとは違う」
「っ……!」
それを聞いて、あの子は聖那さんだったんだ、と確信し、過去の記憶が蘇ってくる。
小学校2年生の時、いじめられていた私と仲良くしてくれた、当時の私の唯一の友達。
あの子に……聖那さんに、知らないうちに会えてたなんて……。
嬉しさと感動で、私の目には涙が滲む。
でもそれと同時に、石で怪我をしたのは聖那さんだったんだとショックになる。
私のせいで、聖那さんは痛い思いをした。
「……なさい……ごめん、なさいっ」
気づけば隠れるのをやめて、聖那さんに謝っていた。
「優羽っ?お前なんでここに……」
「ごめんなさい、ごめんなさい……っ」
驚いている聖那さんなんてそっちのけで、何度も何度も謝った。
「優羽。怪我のことなら俺は気にしてないし、当時も優羽のこと嫌ってなんか……」
「どういうこと?」
聖那さんの声を遮って、成川先輩が口を開いた。
「聖那が頭に怪我を負わされたっていうのは聞いたことあったけど、あれあんたのせいだったの!?」
成川先輩に直接責められるのは初めてで、ギュッと目を瞑る。
そう、私は責められるべき。
それが正しい………と自分に言い聞かせる。
「おい成川、いい加減に……」
「聖那さんっ、聖那さんもこんな私に怒ってください。私は、責められるべきなんです」
「優羽……俺がお前に怒れるわけないだろ?何より、俺が怒りたくないんだ」
「っどうして!どうしてそんな子を好きになったの!?怪我を負ったのに……」
「おい」
急に聖那さんの声の圧が増し、成川先輩は仰け反る。
「まだ言うつもりなら……」
「成川先輩はっ……!」
これ以上2人の仲が悪くなって欲しくなくて、間に入られずにはいられなかった。
「成川先輩はただ、私のように聖那さんを好きになっただけなんです。嫉妬して、好きな人を取られるのが怖かった、それだけなんです!だから、そんなに責めないであげてください、お願いします……っ」
頭を下げる私に聖那さんは慌てる。
「おい優羽、分かった、分かったから頭を……」
「こんなの……」
成川先輩はその場にしゃがみこみながら言う。
「勝てるわけないじゃない……」
どうやら、大事にはならないで済みそう。
どう声をかけようか戸惑っていると、成川先輩は立ち上がり、スタスタと去っていった。
「あっ………」
なんて声をかけるのが正解だったんだろう……?
その後もずっと、考えていた。
「はぁ……優羽はお人好しすぎ」
「そんなこと……って、聖那さん、本当にごめんなさ……ん」
また怪我のことを謝ろうとすると、聖那さんにキスで口を塞がれてしまった。
「これ以上謝るの禁止、な?」
「は、はい……」
「それに、優羽の初恋相手になれたんなら、怪我して良かったかも、なんて」
「っ………!」
私そういえば、前に聖那さんに初恋相手って言って……!?
じゃあその時、聖那さんは……
「どうして今まで言ってくれなかったんですかっ。聖那さんは私のこと気づいてたんですよね!?」
「ああ。迷っている優羽に会った時から、一目見ただけであの子だって分かった。でも優羽の反応が可愛かったから……」
「っ~~もう、聖那さんなんて知~らないっ」
「悪かったって。許してくれよ……もし許してくれたら、今優羽が1番欲しいものあげる」
今、私が1番欲しい………
頭に浮かんだのは。
「……聖那さんが欲しいんですけど、くれるんですか?」
「っ……姫のお気に召すままに」
「っ、キス、したいです……」
ここが廊下であることも忘れて、私は口走っていた。
「こんなとこでしてもいいのか、次期生徒会長候補様?」
「もうっ、私をこんなにしたのは現生徒会長さんなんですけど……?」
「言ったな、覚悟しろよ?」
そして私たちは、長い長い口付けを交わした。
────────
冬休みをとっくに過ぎた今日、3月10日。
今日は卒業式の翌日、新生徒会のメンバーが発表される日です。
今日で生徒会長の役目を終える聖那さんがマイクを手に取り、会計、書記、副会長と順に名前を読み上げていく。
牙央くんが副会長、詩乃ちゃんが書記のうちの1人として名前が呼ばれる。
そしていよいよ、生徒会長の発表。
「新生徒会長──
小戸森優羽さん!以上の7名が……」
「っ……ほん、とに……?」
やっと、努力が報われる日がきた。
卒業はまだだし、おばさんたちに何か恩返しが出来たわけでもない。
でも私は、今日のためにずっと、2学期のあの日から勉強を続けてきた。
「うっ、優羽……ずびっ、おめでと~」
詩乃ちゃんが泣きながらお祝いの言葉をくれる。
「もう詩乃ちゃん泣きすぎだよ~、ふふ、ありがとうっ」
「お前泣きすぎ、優羽困ってんだろ」
牙央くんが詩乃ちゃんを押しのけながら言う。
牙央くん、お手柔らかに……っ
私があたふたしていると、牙央くんは私の方を見つめて。
「優羽、今までよく頑張ったな。おめでとう」
「っ……うん、ありがとうっ!」
でもやっぱり、この喜びは……
「聖那さんっ!」
「優羽っ!」
式が終わり寮へ帰ってきて、私たちは抱きしめ合う。
「私、生徒会長になれましたっ」
「ああ、優羽ならなれるって、ずっと信じてた」
気づけば2人とも涙が零れていた。
これで、聖那さんのお父さんに認めてもらえるっ。
それが嬉しくて頬を緩ませていると、突然聖那さんが落ち着いた声で私の名前を呼んだ。
「優羽」
「っはい」
「俺と、結婚を前提に付き合ってください」
世界の時が止まったかのように思えた。
「っ……はい、よろしくお願いしますっ」
その瞬間、私の体は聖那さんによって抱き上げられた。
「わあっ!?……んっ」
そして、唇が重なる。
そのキスは、今までとは違う、特別なもののように思えた。
「言ったろ、思う存分愛してやるって」
聖那さんはそう言って、いつものイタズラな笑みを浮かべた。
「っ……私も、聖那さんのことずっと、愛し続けます!」
「へえ?今日はどれだけ耐えられるか見ものだな、ゆ~う?」
た、耐えられるって……。
こんなイタズラな聖那さんも、甘々な聖那さんも、全部大好き。
「っ……聖那さん、私、聖那さんに出会えて本当に良かったっ」
「ああ、俺もだ、優羽。狂いそうなくらい、お前を愛してる」
むせ返るほど甘い彼の言葉は、私を掴んで離さない。
ひとつ年上の彼に恋をした。
私なんかにはもったいないくらい、完璧でかっこよくて、たくさんの愛を注いでくれる人。
そんな人と、今日、婚約をしました。
永遠の愛を、ここに──。
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