あの頃の僕らは、

のあ

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第六話 心地よい体温

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「お前がそばにいれば、俺は大丈夫だよ」

 その言葉に、何故だか余計に涙が出た。ただそばにいることしか出来ない自分が、どんな形であれ裕斗ゆうとの支えになれている。健人けんとの前で裕斗が泣くことはけしてない。悩みや不安をはっきりと口に出すこともない。それでも、裕斗が自分に笑顔を向けてくれることは、涙が出るほど嬉しい。

「泣くか笑うかどっちかにしろよ」

「これだから男子は…嬉し泣きって言葉も知らねえのかよ」

「お前も男子だろ」

 泣き虫の健人と泣けない裕斗は、二人でいれば笑顔になれる。二人でいれば、嫌なことを忘れられる。今はそれだけで十分だと、そう思った。

「おはよう」

「うん。おはよう」

 目が覚めた健人は、裕斗の腕の中にいた。あの後、泣き疲れた健人はいつのまにか眠ってしまい、裕斗の右腕は一晩中健人の枕代わりになっていたらしい。

「すまん。腕痛いよな。すぐに退くから」

 起き上がろうとする健人を裕斗は腕の中へと引き戻して抱きしめる。今までも同じベッドで並んで寝たことはあった。だが、今日は何だか気恥ずかしい。じんわりと頬が熱くなり、赤らみ始めているのを感じる。

「いいよ。むしろ暖かくて気持ちいい。今日休みだし、もう少しだけこのまま寝かせてくれ」

 再び寝ようとする裕斗は、さっきよりもキツく、そして強く健人を抱きしめ、自然に裕斗の胸に顔が触れる。熱を帯びて真っ赤に染まった顔を裕斗に見られまいと、健人は裕斗の胸に顔を埋めた。

「あぁ、暖かいな」

「そうだな」

「このままずっと、二人で寝てられたらいいのにな」

 寝ぼけたような裕斗の甘い声に、健人の鼓動はますます高鳴り、二人きりの静かな部屋に鳴り響きそうなほど騒がしい。

 この高鳴りに裕斗は気付いているのだろうか。気付いたとしたら、裕斗は自分のことをどう思うのだろうか。そんな不安などどうでも良くなってしまうほど、裕斗といる今この瞬間が愛おしい。

 ベッドの中にじんわりと広がる「心地よい体温」に包まれて、二人はまた深い眠りに落ちていく。
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