ありふれたダンジョンでも異世界をエンジョイする!

プラントキング

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27話 その着せ替え人形は

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ボス部屋に突入するとそこは300メートルほどの大部屋。石造りの普通のボス部屋だ。
大ボスはクリスタルのゴーレムだろう。水色に輝くクリスタルはいかにも堅そうだ。
問題なのは”もう一人”の方。

黒髪のショートヘアにみどりの瞳をしている……スクール水着を着た女だ。
なんの言葉のあやでもない。本当にスクール水着を着ているのだ。

顔は黒髪の美人、しかし格好はスクール水着に白いハイソックスと白い長手袋。スタイルは良く、実に痴女である。
スク水の名前を書く場所には『みりあ』と書かれている。
ただ、本当に人って訳ではないようだ。スク水とソックスの間、ふとものの位置に球体関節が見える。

つまりアレは人形で、格好はダンジョンマスターの趣味って事だろう……
【人形の迷宮】のダンジョンマスターが賜ったギフトは『ビスクドール』って使い魔だった。
あれがそうなんだろう。多分。

「ここまで来れたことは褒めてやろう!」

クリスタルのゴーレムの頭に設置されたスピーカーっぽい魔道具から声が聞こえているようだ。
遠距離に声を届ける魔道具、すっごい便利そうだな。

「だが、ボクの『みりあたん』と『クリスタルゴーレム』は倒せないぞ! お前たちやってしまえ!」

相手のダンジョンマスターはたしか現在23歳。俺よりも年上だったと思ったが、なんとも幼さを感じる。
そして相手のゴーレムがクリスタルゴーレムで確定した。確かBランクの魔物だったはずだ。
更にはビスクドールもおそらくは『名づけネームド化』されていると見ていいだろう。

俺はビートルクイーンの『ビーファ』に攻撃を命じた。オトモはビーメイジとロングホーンビートル達、ビーナイトやアーマーアントは遊撃だ。
少なくともビスクドールの方はBランクの魔物のはずだからな。明らかなタンクであるクリスタルのゴーレムを速攻で倒す作戦だ。

ビーファは全身甲殻の人型の魔物、そんなビーファは拳を構えて真っすぐに向かって行く。
ビーファが<虫王者>を発動、ジャイアントビートルが持つ<突貫>を発動した。
突きの威力を2倍にするシンプルなスキルだ。しかし、その破壊力は絶大なようで……

――ガギィン

甲高い音と共にクリスタルゴーレムの全身に亀裂が走った。
2倍になったビートルクイーンの攻撃を耐えるとは流石はゴーレム。と思った時だ。

「<光魔法ハイヒール>」

無機質な、それでいて済んだ音色のような声が響き、クリスタルゴーレムに入っていた亀裂が完全になくなった。
声の元を見れば水着姿の人形が居る。つまりはあの使い魔は『回復魔法』が使えるって訳だ。
回復役は先に潰すのが戦いの基本だ。

当然俺はビーファに指示を送る。

アーマーアントとビーナイトの遊撃部隊がビスクドールへと向かう。

その間にビーファはもう一度、<虫王者>から<突貫>を発動する。やはり連続で使えるのはマンティスシュライプの持つ<太陽拳>以上の汎用性と言える。

ただし、欠点もある。
<虫王者>は発動に魔力を消費する。そしてそれは<突貫>も同じだ。
つまりビーファは通常の倍の魔力を消費して<突貫>を使っていることになる。
持久戦は不利だ。ここは何としても回復役ヒーラーを止めている間にクリスタルゴーレムを倒しておきたい。

――ガギィン

再び全身に亀裂だ。このまま攻撃を――

「<光魔法ハイヒール>」
「はぁあ!?」

ダンジョンコアの画面の前で声が出てしまった。
何故かと言えば見ればわかる。先ほどのスク水のビスクドールは、どこから取り出したのか両刃の西洋剣でビーナイト達の攻撃を捌き、叩き落し、アーマーアントの頭上を舞うように跳躍し、回復魔法をクリスタルゴーレムに放ってきたのだ。
もはや意味が解らない。サーカス団のピエロかお前は。

その後もビーナイト達は手も足も出ず、ビーファは通常攻撃でクリスタルゴーレムを攻撃するが、少し亀裂が入る度に『小回復ライトヒール』や『中回復ミドルヒール』が飛んでくる。

これでは埒が明かない。事実、すこしづつビーファにもダメージが入り始めたのだ。
クリスタルゴーレムの攻撃は大ぶりだ、それを見事にいなしていたビーファだが、流石に全てとはいかない。
いくつかの攻撃はあたり、高い防御力と体力で耐えている。しかし、俺の部隊には回復要因がいないのだ。
ポーションも持ち運べそうなのが人型のビーファしか居ないため持たせていない。DPで出すのも結構なお値段になっちゃうしな。

だが、それが裏目に出ている。
ビーメイジの攻撃も、クリスタルゴーレムには魔法の通りが悪いのかあまり効いていない。

なので俺はスイッチさせることにした。選手交代だ。

ビーファに指示をだし、アーマーアントやロングホーンビートルはクリスタルゴーレムの相手をする。
物理も魔法も通りにくい相手なら物量と物理でごり押すしかない。

そしてビスクドールの相手はビーファとビーメイジ部隊だ。

そしてビーファが向かって行くと。

――カァン!

すかさず剣を振るってきたビスクドールだが、ビーファの装甲は硬い。傷をつけているだけでも大したものだ。並みの鉄剣なら逆に折れているだろう。
剣が弾かれた所に拳を振るうビーファだが、ビスクドールはこれを紙一重で避け、跳躍する。
空中に逃げた所をビーメイジ達の<攻撃魔法>による魔力弾で狙撃するが、ビスクドールは複数の魔力弾を剣で叩き落した。

着地に合わせてビーファも詰め寄る。
そのタイミングで

「<光魔法ライトセイバー>」

更なる魔法の発動。光る細身の剣が空中に現れ、ビスクドールの周囲に3本浮かぶ。
ビスクドールはそのままビーファに突進し、手に持った剣を振るう。ビーファは受け止め反撃しようとするが、慌てて後方へステップした。
ビスクドールが振るった剣の後に3本の光の剣が追従し振るわれたのだ。
まるで連続ヒットする追加攻撃。それも魔法攻撃扱いだろう。

ネームド化で魔法防御も上がっているビーファだが、受ければダメージは免れないだろう。

相手の方が動きが良く、長期戦は不利。戦略的には俺の指示は既に終了している。
実際に敵を分断し、各個撃破の形に持ち込んでいるからだ。
だが、その各個撃破が出来ていない。クリスタルゴーレムのダメージが蓄積している中で、回復魔法を放っていない事からビーファとの戦いに余裕がある訳ではないだろう。

しかし、長引けばビーファがやられる可能性もあった。
一度部隊を引かせ、再編成させるべきか…。幸いにも時間制限は設けていない。
戻ってポーションを大量に出して持ち込めば……と思っていたが、事態は急変した。

ビーファがビスクドールに突っ込んだのだ。
更にはノーガードで胴体にビスクドールの剣を受け半ばまで食い込んだ。光の剣もそれに続き、連続でビーファに向かってくる。
しかし、ビーファもそれは織り込み済みだったのか、ビーメイジが連携して複数の<防御魔法>を展開し光の剣を受け止めた。そしてビーファは左手でビスクドールにつかみかかる。

「<光魔法ライトシールド>」

ビスクドールの左手に光の盾が出現した。
これではビーファの手は届かない……

かに思われたが――

――パリィン

光の盾が割れ、ビーファの手がビスクドールの右手を掴んでいた。ビスクドールの掴まれた手が、ミシミシと音を立てている。

(<虫王者>! 左手での<怪力挟>か!)

<怪力挟>は”挟む”攻撃の威力が2倍になる。ビーファにとっての手での掴みは”挟む攻撃”扱いという事か。
ビスクドールは剣を離し、距離を取ろうとするが、右手はビーファに掴まれたままだ。
ビーファはビスクドールの右手を引っ張り、自分の右手を今度はビスクドールの首へとかけた。右手の<怪力挟>だ。

メキメキ、バキンッ!

掴まれたビスクドールの首は折られ、光となって消えた。

その場に残ったのはビスクドールの着ていたスク水やソックス、剣だった。
どうやら装備や武器は持たせたアイテムだったようだ。

しばらくしてクリスタルゴーレムを倒したビーファ達は、ダンジョンコアの部屋に行き「来るな! バケモノ!」と叫ぶダンジョンマスターを無視してダンジョンコアを破壊。
ダンジョンマスターは光と消え、勝敗はここに決した。


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