medyu(めでゅ)

文字の大きさ
1 / 1

エピソード 1

しおりを挟む
もう、誰も信じない。
信じてしまったら自分が
傷つくのだから。
自分自身も信じない。
なにをするかわからないのだから。

四人兄弟で末っ子の昴は
幼い頃、父親に育てられた。
小学一年生、七歳の冬。
母親は家を出ていった。
暴力を振るう父親にうんざりしていたのだろう。

朝方に帰宅し、仕事もせず
眠る父は情けなかった。
怒りが込みあげた昴。
きっと、他所に女がいるのだろう。
幼いながらにそう感じた。
許せなかった。

ある日昴は父が寝ている間に
殺虫剤を顔にかけたのである。
絶対に、怒られる。
けど、もうどうだっていいんだ。
こいつに嫌われればこの家からも
出ていけるし、お母さんの所に
いけるから…。

しかし、父は怒るわけでもなく
俺を抱き締めた。
「ごめんよ。」って
何故だかわからなかった。
好き勝手やってきた父に
抱き締められ、やさしい言葉にも
怒りが込み上げてくる。

この頃から、俺の心は
すさんでいたんだと思うんだ。


母親がいなくなった毎日は
とても辛く、学校では虐められた。

「くっそー!ふざけんなー!」
毎日のように、友達と喧嘩をした。
そして、父親は学校に呼び出され
俺は父に殴られる。

悪さをしていくうちに
虐められなくもなり
友達もたくさん増えた。

髪を茶色に染め、盗んだ煙草をくわえ
盗んだバイクで町を走る。

早く大人になりたかった。
そうして、小学生活を過ごしていった。





気持ちとは裏腹にどうにもならない
感情と行動に押し潰されそうになる。
そして、お酒に溺れ自分を見失う。
助けてほしいと思っていても、
誰も信用できないのだから
頼れる場所も居場所もない。

作った笑顔と性格のまま
孤独に生きていくと決心した十七才。
中学三年生のみあびと出会う。

化粧をして、高いヒールを履き
真っ赤なセクシーなドレスを着ていた。
十五才とは思えないほど
大人びていた。
真夏の海。滲んだ月明かりが
水面をキラキラと輝かせている。
俺は夜の海を眺めるのが大好きだった。
心が落ち着くから。

すばる「おーい!こんな時間になにしてるの?ひとりで危ないよ。」
みあび「全然危なくない。もっと危ないことあるから。ひとりで海を見るのが好きだから。」
すばる「俺も好きなんだ。」
みあび「夏の海のにおい、わかる?それもすごく大好きなの。」

俺と一緒だった。親近感が湧いた。

みあび「仕事の時間だ。もう行かなきゃ。ありがとう。」

その場を去るみあび。
ありがとうって、俺なにもしてないけど。
不思議な気持ちになった。

数日後、また同じ時間の同じ場所で…。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...