Hate or Fate?

たきかわ由里

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     ◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇



 そんでもちょっとムカついてた俺がビールをかっくらっちまったので、歩いて帰らせようとした宵闇は俺を心配してそのまま泊まってった。
 すまんな、酒クズで。どうにか寝落ちはしてない。
 で、また一緒に昨日のスタジオに入る。スタート時間は昨日より早い。
 他のメンバーには俺らが近所だって話してあるし、宵闇が車を持ってないのも知ってるから、怪しまれてはない。
 いや、怪しまれるような仲じゃねぇけど。ただ、俺は宵闇の地の部分っていう秘密を持ってるだけだ。でもそれは、絶対に知られちゃなんねぇ。あいつらに疎外感を与えちまうからな。
 メイク室で昨日とまったく同じように仕立てられた俺らは、写真撮影の時と同じAスタジオに行く。
 さあ、今日はMV、ミュージックビデオの撮影だ。
 まずは、宵闇が監督と打ち合わせて仕上げておいた絵コンテを見ながら、ミーティングをする。
 ほんとに、いつの間にこんなもんまで仕上げてたんだ。すげぇな。
 スタジオ内では、Hate or Fateがガンガン鳴り響いている。ちょっとムカつくけど、今日はそれ以上に闘志が湧いてくる。絶対にいいモノ作ってやる。
 MVに特にストーリー的なものはなく、イメージショットの連続って感じだな。この部屋で撮るのは、昨日も使った豪華なソファに集まるシーン、そこから去るシーン、それぞれがこのソファに座ってるシーン。
 全面コンクリート打ちっぱなしの無機質な大きい部屋で演奏シーン。俺のセットは昨日のうちに運び込まれてて、セッティングのチェックは済ませてある。
 その後は各個人に合わせたイメージシーン。綺悧のイメージシーンは、真っ赤な壁の部屋。朱雨はパイプが張り巡らされた、廃工場みたいな部屋。礼華はでかい綺麗な窓のある、白い部屋。宵闇はこの部屋だ。多分この部屋の主で、バラバラの世界にいるメンバーを呼び寄せるってイメージなんじゃないかな。で、俺は屋上。郊外に建つこの建物の周りには、他に高い建物がないから、上手い具合に殆ど空しか映らないらしい。
 ちょっと、今日の天気が心配だ。来る時も雲行きが怪しかった。綺麗な青空ってわけにはいかなそうだ。車の中でその話をしてると、宵闇は「狙い通りだよ」って笑った。まあ、抜けるような青空がベルノワールみたいなダークなヴィジュアル系に似合うかって言ったら、そりゃ違う気もするけど。
「天気まで予測して設定したのかよ」
「俺は気象予報士じゃないから、それは無理だなぁ」
 だよな。これは、こいつの運なのか、それとも悪魔とでも契約してんのか、どっちだ。
 個人のイメージシーンを撮る時に、写真も撮るらしい。またツイスターか? 普段使ってない妙なところがちょっとずつ筋肉痛になってんだけど。俺は全部の筋肉を鍛えてるわけじゃなくて、必要なとこだけ鍛えてるから、けっこう使ってない筋肉あるんだなぁって痛感してる。
 今日一日の流れを確認したところで、まずは全員でソファに集まってるシーンから撮影を開始する。開始前にはまたあれこれチェックが入るから、やりましょう、はい、ってわけには行かない。
 しかも、俺、こういう動画も初めてだよ。ライブDVDしか映ったことねぇもん。あれは普通にライブやってるだけだから、いつも通りで何の問題もないけど、これはあれだ。演技しなきゃなんねぇ。
 宵闇も同じ画面に入るから、宵闇からリアルタイムで指示ももらえない。大丈夫か、大丈夫なのか、俺。
 今日気楽にやれるのは演奏シーンだけだ。
「俺はここに座ってるから、順番にフレームインして来てくれ。朱雨、礼華、綺悧、夕の順だ。監督のキューで」
 キューって何だ。聞いたことあるな。文脈からいって、合図的な感じか。
「お互いにさほど興味がない感じでやってくれ。来たヤツをちらっと見る程度だ」
 なるほど、そういう雰囲気な。宵闇はそれぞれに入って来る方向とその後のポジションを伝える。
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