Hate or Fate?

たきかわ由里

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 宵闇の手が、俺の頭にそっと乗せられる。
 首を傾げて少しだけ上にあるヤツの顔を見上げると、俺の顔を見て目を細める。
「夕」
「ん?」
 しんとした時間が流れる。その間、俺たちは互いの目を見たままだ。
 立ち上るタバコの煙だけが、この空間でゆったりと揺れている。
 宵闇の唇が、何かを言おうと微かに動いた。
 それと同時に、タバコをつまんでいた俺の指先が急激に熱くなる。
「うわあっち!!」
 慌ててタバコを灰皿に投げ込む。タバコ持ってんのすっかり忘れて、あいつの顔ばっか見ちまった。タバコはフィルター近くまで燃えて、俺の指先を軽く焼いた。
「大丈夫か?」
 宵闇は俺の手をとって、指先を真剣に見る。
「あ、大丈夫。よくあるから」
 家でタバコ吸いながら、譜面書いてたりするとやらかすんだよなこれ。一瞬めちゃめちゃ熱かったけど、もう大丈夫だ。
 にこっとしてやると、宵闇はほっと息をついた。
「もう、びっくりしただろ」
「悪ぃ。…そろそろEX行く時間だな」
 室内に設置されている時計を見ると、集合時間が近付いている。宵闇も時計に目をやり、それから俺の顔を見て苦笑する。
「行こうか」
「ああ」
 俺はタバコの箱にライターをつっこんで、ドアノブを引く。
 宵闇、今俺に言おうとしたよな。またタイミング逃しちまったなぁ。今回は俺の間が悪かった。
 でも、その件は慌てることもないんだし。またどっかのタイミングで言ってくれればいい。気が向いたら、俺が言うし。答えはいつ聞いたとこでイエスしかねぇから焦んなって。
 喫煙室を出て、エレベーターに乗る。5階のワンフロア全てがEXスタジオだ。
 5階に到着する直前、ヤツの頬をつついてやる。
「ほら、宵闇様。帰って来い」
 宵闇はくすっと笑ってから、キリッとした表情に戻った。
 エレベーターを降りると、無機質なコンクリート壁に囲まれた部屋の中心にドラムセット。その周りにカメラを動かす為のレールが何本か組まれている。スタッフの人達が、カメラを走らせてそのレールの接続を確認している。接続がズレててカメラ壊したりしたら、大損害だからな。
 昨日、セットのセッティングに来た時は、まだ何も用意されてなかったから、このレールを見るのは初めてだ。
 スタジオの中には、既に綺悧と朱雨と礼華も来ている。朱雨と礼華はそれぞれのギターを肩から掛けて、準備を始めている。
 ちらりと隣の宵闇に視線を送り、俺もドラムセットに入る。カメラ映りにはまったく配慮せずに、ライブと同じ仕様に組み上げて、スティックケースもいつもの場所に下げてある。そこから2本、スティックを取り出してくるくる回す。
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