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しおりを挟む「まあ、だから言い方次第ってことで」
「よく聞くと、朱雨に言ったのと意味は同じだよな」
「そう」
宵闇は、あははと笑う。
「意味は一緒だけど、持って行きたい方向が違うし、それぞれの性格を考えると、殺せと咲けに別れるんだよな」
「はぁー」
心底感心する。その使い分けた言葉が見事に2人のストッパーを撃ち抜いて、朱雨は100人殺したし、礼華の花はフロアを埋め尽くした。こういうとこの感覚が、ほんとに凄いと思う。
エレベーターが屋上に到着して、ドアが開く。機材がいろいろ置かれている倉庫のような、薄暗い空間の向こうにもう一枚のドア。その向こうが屋上だな。
ドアに近付くと、その窓から外が見える。
濡れたガラス。外は、雨だ。
風も強い。嵐のように窓に雨粒が叩きつけられている。
「宵闇、降っちまったぞ」
曇りならまだしも、降り出しちまうとは。しかもこんなに強く。俺は困惑して宵闇を振り返る。
「夕、選んでいいよ」
優しい宵闇はそこまでだった。
こう言うと、宵闇はすっとリーダーの顔になって、ニタリと笑う。
「一つだけ、スタジオの空きはある。螺旋階段の部屋だ。嵐の屋上と、螺旋階段。お前らしいのはどっちだ?」
どこまでも、ぐるぐると回る螺旋階段。そんなもん、全然俺らしくねぇに決まってる。答えは一つしかない。
俺の困惑は一瞬で消し飛ぶ。
「嵐に決まってんだろ。聞くんじゃねぇ」
宵闇は頷き、ドアを開け放つ。ドアの前には広い庇があるけど、雨は無遠慮に吹き付けてくる。
「やり直しはきかない。フリーの長回し、一発勝負だ」
そこでは、スタッフたちが何の迷いもなく準備を進めていた。最初からこのつもりじゃねぇか。雨が降る前から、俺の答えはわかってたってことだ。
雨天決行、上等だ。
「キメてやるよ、一発で」
激情を爆発させるのに、最高のシチュエーションだぜ。ピーカンなんかじゃなくて、俺はツイてる。その俺が、ここで撮影するんだ。成功しないわけがねぇだろ?
唇の片端を上げて笑ってやると、宵闇は俺の頬に一瞬だけ指先を触れて、雨が降りしきる屋上に視線を戻す。
「リハーサルもなし。そろそろ、カメラのセッティングも終わる。お前の準備が出来たら行く」
「おう」
ここは、雨の撮影も普段からあるんだろう。レインコートに身を包んだスタッフたちは何の戸惑いもなく、ビニールをかけたカメラをセッティングし、調整している。
それを見つめて、気持ちをその真ん中に持って行く。円形に巡らされたレール。そこを滑るカメラ。手持ちカメラが2台。リフトも2台。合計5台。さっきより多い。この一発勝負の為に増やしたのかもしれない。
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