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しおりを挟む「ああ、お前は正気に帰るな」
「OK。頭のネジ飛ばすコツはつかんだから任せとけ」
俺が肩を叩くと、ヤツも俺の肩を叩いて来る。安心しろ、伝わってっから。
再生が終わると、宵闇は立ち上がった。
「早めだけど、行くか」
「屋上? ああ」
「まだ準備は整ってないが」
「雰囲気見ときたいし、行こう」
屋上へはまた上がっていないから、広さや景色なんかもつかめてない。つかめたら何か出来るかって言われれば、何も考えはないんだけど、とにかく慣れることくらいは出来るだろ。
スタッフは何人かを残していつの間にか減っている。既に屋上に移動しているのだろう。
俺は先にエレベーターの前に行き、ボタンを押す。一つ下の階に止まっていたそれはすぐに来て、ドアが開いた。
俺が乗ると、宵闇も隣に乗る。
ドアが閉まる。
「ありがとな、夕」
「何が?」
「俺の要求、めちゃくちゃだっただろ?」
心配そうに、俺の顔を見る。気にしてんのか、可愛いな。
「ああ、めちゃくちゃだったな。かなりキツかったぜ?」
「びっくりしたよな。ごめん」
「は? 謝るとこかそれ?」
俺は、「宵闇」らしくてカッコいいと思ったんだけどな。頬を軽く叩いてやる。
「お前、こういうの慣れてないかと思って」
「慣れてねぇけど、お前カッコよかったぜ?」
「ならいいけど」
「すっげぇ物騒だったけどな、死ねとか殺せとか狂えとか」
ほんと、めちゃめちゃ想像通りの典型的なヴィジュアル系っつーか。まあ、メタルにもデスメタルなんてのがあるし、親しみがない単語ではないな。
「綺悧と朱雨はそういうダーク系が好きだから、ああいう言い方が響くんだけど、お前はその辺どうなんだろうってちょっと不安だった」
へぇ、全然不安そうに見えなかった。あんな完璧に隠して、躊躇わず言えるってのは大したもんだ。
「でも、言ったんだな、狂えって」
「言わないと、全体が崩れるからな」
確かに。あそこで俺にだけ優しかったら、あそこまで煮詰めた雰囲気があっという間に崩壊するだろう。
あ、でも。
「礼華にだけはちょっと柔らかいんだな」
礼華だけお花だもんな。内容的にはお前はまだまだだ、って意味だったけど。
「ああ…あいつはMALICE MIZERとかVersaillesとかの華麗なのに憧れて入って来たから。うっかり死ねとか殺せとか言うと、ガチでヘコむんだ。かなり可哀想なことになるんだよな」
「ああ……」
それは、想像が、つく。礼華は、真面目で繊細だからな。
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