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しおりを挟む「上見て。瞬きすんなよ」
そっと右目の目玉に乗せられるカラコン。この冷たい感覚にも慣れた。
「こっちもだ」
左の目玉にも、カラコンが乗っかる。瞬きをすると、すぐに馴染む。
まっすぐ宵闇を見てやる。どうだ?
「よし」
OKなんだな。お前の好きな夕になったか?
好きなヤツの好きなように仕立てられんのも、案外悪くねぇなぁ。
カメラテストの時にイラついてたのが懐かしいわ。
宵闇は俺の後ろに回ると、今度は髪をいじり始める。宵闇が最初にこの髪型考えたんだ。上半分ポニーテールでふわっふわに立てたヤツ。何だこれって思ったもんだけど、今は俺に似合う気がする。
手早く髪が立てられて行って、結び目には衣装に合わせた長いメッシュの布が、緩めに巻き付けられてく。
半分長い前髪をまっすぐに伸ばすと完成だ。
「サンキュー。今日も上出来だな」
「自分で出来ないくせに偉そうに」
「へへっ」
笑ってごまかし、立ち上がる。見ると、綺悧も礼華も朱雨も出来上がってる。衣装着るのは本番前だから、それぞれ私服なのが面白い。つっても俺以外は、元々テロテロのシャツとか肩のめっちゃ開いた長袖Tシャツとかクソ細いスキニーデニムとかのそれっぽいカッコしてるから、そんなに笑えねぇけどな。
俺も、宵闇に「ヘアメイクの後に着替えるから、Tシャツはやめてくれ」って言われたから今日はメタルTシャツじゃねぇ。でも、カーキのミリタリーシャツにカーゴパンツだから、似合ってないことには変わりねぇか。
「夕、タバコ」
ものすごくさりげないですよ感ありありで、宵闇が誘いをかけてきた。初心者が慣れてるふりしてんのがいじらしいねぇ。俺は返事をして、タバコを持って立ち上がる。喫煙室は、1階の搬入口の近くだったな。
知ってるような顔して楽屋を出た宵闇は、廊下に出た途端キョロキョロする。ほら、知らねぇ。
「下、下。1階」
「このフロアじゃないんだ?」
「ああ。めんどくさいけど降りるぞ」
階段を降りて少し行くと、隅の方に小さい喫煙室がある。入ると、先客がいた。紫の長髪をざっくり縛って、割としっかりした体格で…背はまあ、宵闇と同じくらいだけど、圧が強い肩と胸板で、一回りでかく見える。ダボダボのスウェットに、ダブダブのジーンズを腰パン、ウエストにチェックのシャツ巻いてるって言うラッパーかみたいなラフなカッコしてるけど、こいつもヴィジュアル系なんだよな? 俺が言うのも何だけど、ちょっと変なヤツだな。
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