Hate or Fate?

たきかわ由里

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「ありがとうございます!」
 俺は思いっきり頭を下げる。レイジさんに恥かかせずにすんだな。ほっとした。
「そうだ。宵闇は初めてだったよな、こいつ」
 レイジさんが、隣にいた小さいのの背中を叩いて口を開きかけるが、宵闇がそれより先に言う。
璃憂りゅうさんですよね。キールフェスのシータ、見ました」
 へー、璃憂さんって言うんだ。
「ありがとう」
 その璃憂さんはにこっと笑う。ちょっと可愛い感じの人だな。
「コキーユサンジャック、楽しみにしてます」
 何じゃそのややこしい名前は。きょとんとしてる俺に、レイジさんが説明してくれる。
「12月にこいつとユニットで音源出すんだよ。こいつはヴォーカル」
「そうなんですか」
 へぇ、ヴォーカリストか。レイジさんとってことは、どっち方向かはわかんねぇけどヴィジュアル系なのかな。でも見た感じはそんなオーラねぇし、かなり一般人っぽい。
「何かの時に対バン出来たらいいね。よろしく」
 璃憂さんは、俺らに右手を差し出してくれる。
「ベルノワールの宵闇です。よろしくお願いします」
 宵闇が握手をしてから、俺も握手をする。
「夕です。是非対バンさせて下さい」
 そう言うと、璃憂さんは笑顔で頷いてくれる。
「ライブ、すごくカッコよかったね。昔を思い出しちゃったよ。めちゃめちゃ好きな感じだった」
 キャリア長いんだろうか。年齢不詳で、全然予想が出来ねぇわ。
「ワンマン遊びに来るよ」
「レイジさん忙しくないですか?」
「いや? まあ、忙しいっちゃ忙しいけど、ライブくらいは覗きに来れる」
「それなら待ってますね」
 12月に音源出すなら、来月入ったら忙しいんだろうなぁ。それでも来てくれるのはありがたい。
「ベルノワール見てたら、僕も早くライブやりたくなっちゃったよ」
「ライブの予定もあるんすか?」
 璃憂さん、地味目だけど俺ら見てライブやりたくなるってことは、意外に暴れ系なのか、ダーク系なのか。この人がステージで何すんのか、ちょっと気になる。
「リリースのすぐ後に一本。来年はもっとやりたいけど…ねぇ? 玲次。ちょっとさあ、お前聞いてんの?」
 タバコをふかしてた隣のレイジさんを肘で小突く。レイジさんを呼び捨てで、このぞんざいな口の利き方。昨日今日の仲じゃなさそうだし、歳も実は近かったりすんのか。
「ん? だな。だからお前、仕事やめろって」
「やめないって言ってんじゃん。僕まで専業ミュージシャンになったら、うちの家計が心配なんだよ」
「それはいいけど、お前死ぬぞ。休みなしで」
「お前がセルスクェアに集中してる間に休むよ」
 えーと? 璃憂さんはミュージシャンと別に、安定した職業に? 二足のわらじってことか? で? 家計?
 何かこの人たち複雑そうだな。めんどくせぇからスルーしよう。
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