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何かがおかしい
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-小さい頃からこの世界に違和感を感じていた。
最初に感じた違和感は人々の常識。
この国の人々にとって普通のことが、俺には理解し難く、どうしても馴染むことが出来ないものであった。
第3王子として生を受け、今まで何不自由なく暮らしてきたというのに、何か物足りなく感じる日々。
望めば何でも手に入る俺がこんなことを言うのは傲慢とも取れる。
が、その違和感の正体は金や権力なんかで解決できるようなものではないことだけは確かなのだ。
その感情が募ったままこの17年を生きてきたが、解決できる手がかりもなく、時間だけが過ぎていくのだった。
「ノッテ様、そろそろお時間です。ご準備を」
「ああ」
読んでいた書類を机に戻し、爺から服を受け取る。
今日の為に久々に出した正装に腕を通せば、あまりの堅苦しさに苦笑が漏れた。
やっと全ての装飾をつけ終え、自身の書斎から出る。王子のはずなのだが、着替えを手伝ってくれるはずの侍女などおらず、正直装飾などいらないのではないだろうかとも思うのだが、そんなワガママは通るはずもない。
爺と一緒に会場までの道を移動する。特に会話もなく黙々と歩き続けているが、これが日常だ。
鳥のさえずりと足音だけが廊下に谺響する。
「では、私はここで」
「ありがとう、爺」
城から大分離れた石造りの建物の前で爺とは別れる。
ここは、教会。王家が保有する敷地内に建てられたここは例え貴族であっても、許可なく立ち入ることは出来ない。入れたとしても、特に面白いものなどないのだけど。
そのような場に自ら行く訳もなく、今回も緊急の呼び出しがかかり、今に至るというわけだ。
案内役の神官に連れられ中に入れば一瞬注目を集めはするものの、直ぐに視線は元に戻る。
自分の席に向かえば、他の兄弟達はすでに来ており、それぞれ好きなようにくつろいでいた。
呆れたまま席に着けば隣から声がかかった。
「久しぶりだね、ノッテ。少し痩せたかい?」
「最近体重が増えてきたところです。そんなことより、ルーチェ兄さん。以前会った時より隈が濃くなってますけど、大丈夫ですか」
話しかけて来たのは上から2番目の兄であるルーチェ兄さんだった。いつもと変わりなさそうに見えるが、垂れた瞳の下には隠しきれていない隈が浮かんでいた。
これは相当溜め込んでいるはずだ。
「これでも最近は昼寝の時間を取ってるんだけどね」
「倒れる前に休んでくださいね」
「うん、ありがと」
「いいえ。では、あの方が来たようなので」
ルーチェとの会話を終え、前に向き直る。
新しく入ってきた人間に部屋の空気が張り詰めたものに変わるのは一瞬の出来事だった。
国王と国の重臣たちが厳つい顔を更に強ばらせながらそれぞれの席へと着く。
「えー、皆さまお揃いになられたところで、今回の集会の目的について話させていただきます。まず、今回行う事について。これから行うのは
『勇者召喚の儀式』です。
『勇者召喚』でお気づきかもしれませんが、
あー……………魔王の復活が予言されました」
祭司長から発せられたその言葉に驚きをみせたのは、家族の中だけでは俺と弟だけだった。
最初に感じた違和感は人々の常識。
この国の人々にとって普通のことが、俺には理解し難く、どうしても馴染むことが出来ないものであった。
第3王子として生を受け、今まで何不自由なく暮らしてきたというのに、何か物足りなく感じる日々。
望めば何でも手に入る俺がこんなことを言うのは傲慢とも取れる。
が、その違和感の正体は金や権力なんかで解決できるようなものではないことだけは確かなのだ。
その感情が募ったままこの17年を生きてきたが、解決できる手がかりもなく、時間だけが過ぎていくのだった。
「ノッテ様、そろそろお時間です。ご準備を」
「ああ」
読んでいた書類を机に戻し、爺から服を受け取る。
今日の為に久々に出した正装に腕を通せば、あまりの堅苦しさに苦笑が漏れた。
やっと全ての装飾をつけ終え、自身の書斎から出る。王子のはずなのだが、着替えを手伝ってくれるはずの侍女などおらず、正直装飾などいらないのではないだろうかとも思うのだが、そんなワガママは通るはずもない。
爺と一緒に会場までの道を移動する。特に会話もなく黙々と歩き続けているが、これが日常だ。
鳥のさえずりと足音だけが廊下に谺響する。
「では、私はここで」
「ありがとう、爺」
城から大分離れた石造りの建物の前で爺とは別れる。
ここは、教会。王家が保有する敷地内に建てられたここは例え貴族であっても、許可なく立ち入ることは出来ない。入れたとしても、特に面白いものなどないのだけど。
そのような場に自ら行く訳もなく、今回も緊急の呼び出しがかかり、今に至るというわけだ。
案内役の神官に連れられ中に入れば一瞬注目を集めはするものの、直ぐに視線は元に戻る。
自分の席に向かえば、他の兄弟達はすでに来ており、それぞれ好きなようにくつろいでいた。
呆れたまま席に着けば隣から声がかかった。
「久しぶりだね、ノッテ。少し痩せたかい?」
「最近体重が増えてきたところです。そんなことより、ルーチェ兄さん。以前会った時より隈が濃くなってますけど、大丈夫ですか」
話しかけて来たのは上から2番目の兄であるルーチェ兄さんだった。いつもと変わりなさそうに見えるが、垂れた瞳の下には隠しきれていない隈が浮かんでいた。
これは相当溜め込んでいるはずだ。
「これでも最近は昼寝の時間を取ってるんだけどね」
「倒れる前に休んでくださいね」
「うん、ありがと」
「いいえ。では、あの方が来たようなので」
ルーチェとの会話を終え、前に向き直る。
新しく入ってきた人間に部屋の空気が張り詰めたものに変わるのは一瞬の出来事だった。
国王と国の重臣たちが厳つい顔を更に強ばらせながらそれぞれの席へと着く。
「えー、皆さまお揃いになられたところで、今回の集会の目的について話させていただきます。まず、今回行う事について。これから行うのは
『勇者召喚の儀式』です。
『勇者召喚』でお気づきかもしれませんが、
あー……………魔王の復活が予言されました」
祭司長から発せられたその言葉に驚きをみせたのは、家族の中だけでは俺と弟だけだった。
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