1 / 8
何かがおかしい
しおりを挟む
-小さい頃からこの世界に違和感を感じていた。
最初に感じた違和感は人々の常識。
この国の人々にとって普通のことが、俺には理解し難く、どうしても馴染むことが出来ないものであった。
第3王子として生を受け、今まで何不自由なく暮らしてきたというのに、何か物足りなく感じる日々。
望めば何でも手に入る俺がこんなことを言うのは傲慢とも取れる。
が、その違和感の正体は金や権力なんかで解決できるようなものではないことだけは確かなのだ。
その感情が募ったままこの17年を生きてきたが、解決できる手がかりもなく、時間だけが過ぎていくのだった。
「ノッテ様、そろそろお時間です。ご準備を」
「ああ」
読んでいた書類を机に戻し、爺から服を受け取る。
今日の為に久々に出した正装に腕を通せば、あまりの堅苦しさに苦笑が漏れた。
やっと全ての装飾をつけ終え、自身の書斎から出る。王子のはずなのだが、着替えを手伝ってくれるはずの侍女などおらず、正直装飾などいらないのではないだろうかとも思うのだが、そんなワガママは通るはずもない。
爺と一緒に会場までの道を移動する。特に会話もなく黙々と歩き続けているが、これが日常だ。
鳥のさえずりと足音だけが廊下に谺響する。
「では、私はここで」
「ありがとう、爺」
城から大分離れた石造りの建物の前で爺とは別れる。
ここは、教会。王家が保有する敷地内に建てられたここは例え貴族であっても、許可なく立ち入ることは出来ない。入れたとしても、特に面白いものなどないのだけど。
そのような場に自ら行く訳もなく、今回も緊急の呼び出しがかかり、今に至るというわけだ。
案内役の神官に連れられ中に入れば一瞬注目を集めはするものの、直ぐに視線は元に戻る。
自分の席に向かえば、他の兄弟達はすでに来ており、それぞれ好きなようにくつろいでいた。
呆れたまま席に着けば隣から声がかかった。
「久しぶりだね、ノッテ。少し痩せたかい?」
「最近体重が増えてきたところです。そんなことより、ルーチェ兄さん。以前会った時より隈が濃くなってますけど、大丈夫ですか」
話しかけて来たのは上から2番目の兄であるルーチェ兄さんだった。いつもと変わりなさそうに見えるが、垂れた瞳の下には隠しきれていない隈が浮かんでいた。
これは相当溜め込んでいるはずだ。
「これでも最近は昼寝の時間を取ってるんだけどね」
「倒れる前に休んでくださいね」
「うん、ありがと」
「いいえ。では、あの方が来たようなので」
ルーチェとの会話を終え、前に向き直る。
新しく入ってきた人間に部屋の空気が張り詰めたものに変わるのは一瞬の出来事だった。
国王と国の重臣たちが厳つい顔を更に強ばらせながらそれぞれの席へと着く。
「えー、皆さまお揃いになられたところで、今回の集会の目的について話させていただきます。まず、今回行う事について。これから行うのは
『勇者召喚の儀式』です。
『勇者召喚』でお気づきかもしれませんが、
あー……………魔王の復活が予言されました」
祭司長から発せられたその言葉に驚きをみせたのは、家族の中だけでは俺と弟だけだった。
最初に感じた違和感は人々の常識。
この国の人々にとって普通のことが、俺には理解し難く、どうしても馴染むことが出来ないものであった。
第3王子として生を受け、今まで何不自由なく暮らしてきたというのに、何か物足りなく感じる日々。
望めば何でも手に入る俺がこんなことを言うのは傲慢とも取れる。
が、その違和感の正体は金や権力なんかで解決できるようなものではないことだけは確かなのだ。
その感情が募ったままこの17年を生きてきたが、解決できる手がかりもなく、時間だけが過ぎていくのだった。
「ノッテ様、そろそろお時間です。ご準備を」
「ああ」
読んでいた書類を机に戻し、爺から服を受け取る。
今日の為に久々に出した正装に腕を通せば、あまりの堅苦しさに苦笑が漏れた。
やっと全ての装飾をつけ終え、自身の書斎から出る。王子のはずなのだが、着替えを手伝ってくれるはずの侍女などおらず、正直装飾などいらないのではないだろうかとも思うのだが、そんなワガママは通るはずもない。
爺と一緒に会場までの道を移動する。特に会話もなく黙々と歩き続けているが、これが日常だ。
鳥のさえずりと足音だけが廊下に谺響する。
「では、私はここで」
「ありがとう、爺」
城から大分離れた石造りの建物の前で爺とは別れる。
ここは、教会。王家が保有する敷地内に建てられたここは例え貴族であっても、許可なく立ち入ることは出来ない。入れたとしても、特に面白いものなどないのだけど。
そのような場に自ら行く訳もなく、今回も緊急の呼び出しがかかり、今に至るというわけだ。
案内役の神官に連れられ中に入れば一瞬注目を集めはするものの、直ぐに視線は元に戻る。
自分の席に向かえば、他の兄弟達はすでに来ており、それぞれ好きなようにくつろいでいた。
呆れたまま席に着けば隣から声がかかった。
「久しぶりだね、ノッテ。少し痩せたかい?」
「最近体重が増えてきたところです。そんなことより、ルーチェ兄さん。以前会った時より隈が濃くなってますけど、大丈夫ですか」
話しかけて来たのは上から2番目の兄であるルーチェ兄さんだった。いつもと変わりなさそうに見えるが、垂れた瞳の下には隠しきれていない隈が浮かんでいた。
これは相当溜め込んでいるはずだ。
「これでも最近は昼寝の時間を取ってるんだけどね」
「倒れる前に休んでくださいね」
「うん、ありがと」
「いいえ。では、あの方が来たようなので」
ルーチェとの会話を終え、前に向き直る。
新しく入ってきた人間に部屋の空気が張り詰めたものに変わるのは一瞬の出来事だった。
国王と国の重臣たちが厳つい顔を更に強ばらせながらそれぞれの席へと着く。
「えー、皆さまお揃いになられたところで、今回の集会の目的について話させていただきます。まず、今回行う事について。これから行うのは
『勇者召喚の儀式』です。
『勇者召喚』でお気づきかもしれませんが、
あー……………魔王の復活が予言されました」
祭司長から発せられたその言葉に驚きをみせたのは、家族の中だけでは俺と弟だけだった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着スパダリ×人外BL
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
残念でした。悪役令嬢です【BL】
渡辺 佐倉
BL
転生ものBL
この世界には前世の記憶を持った人間がたまにいる。
主人公の蒼士もその一人だ。
日々愛を囁いてくる男も同じ前世の記憶があるらしい。
だけど……。
同じ記憶があると言っても蒼士の前世は悪役令嬢だった。
エブリスタにも同じ内容で掲載中です。
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
悪役の僕 何故か愛される
いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ
王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。
悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。
そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて…
ファンタジーラブコメBL
不定期更新
【本編完結】死に戻りに疲れた美貌の傾国王子、生存ルートを模索する
とうこ
BL
その美しさで知られた母に似て美貌の第三王子ツェーレンは、王弟に嫁いだ隣国で不貞を疑われ哀れ極刑に……と思ったら逆行!? しかもまだ夫選びの前。訳が分からないが、同じ道は絶対に御免だ。
「隣国以外でお願いします!」
死を回避する為に選んだ先々でもバラエティ豊かにkillされ続け、巻き戻り続けるツェーレン。これが最後と十二回目の夫となったのは、有名特殊な一族の三男、天才魔術師アレスター。
彼は婚姻を拒絶するが、ツェーレンが呪いを受けていると言い解呪を約束する。
いじられ体質の情けない末っ子天才魔術師×素直前向きな呪われ美形王子。
転移日本人を祖に持つグレイシア三兄弟、三男アレスターの物語。
小説家になろう様にも掲載しております。
※本編完結。ぼちぼち番外編を投稿していきます。
推しのために自分磨きしていたら、いつの間にか婚約者!
木月月
BL
異世界転生したモブが、前世の推し(アプリゲームの攻略対象者)の幼馴染な側近候補に同担拒否されたので、ファンとして自分磨きしたら推しの婚約者にされる話。
この話は小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる