転生王子と勇者

女神の予言

教会側はほとんどの人物が知らなかったことらしく、動揺を隠そうともせず喚き立てている者もいる。
王の御前でよくそのようなことができるものだ。

｢ー静まれ」

その一言で騒いでいた人間は口をつぐむ。
なんらかの魔法なのだろうが俺には関係の無いものだ。

魔法は魔力を持っている人間にしか反応しない。魔力のない俺には父に限らず全人類の魔法が無効化される。魔法が使えない代償にしてはしょぼく感じてしまう。

「祭司長、続きを」
「はっ。魔王の復活はすぐと言うわけではなく、まだ数年先の話だそうです。そこで女神ピアネータは、異世界から勇者を召喚し魔王復活までの間の育成を任したとのことでした」

『勇者』

御伽噺の世界でしか存在しないものを召喚？女神様は何を考えているのか。メルヘンチックな女神様もいたものだな。

「そのことについて質問がある」
「はい、何でしょう。アルバ様」
「召喚の儀を行うというが、今までそんなことをした記録は無い。どうするつもりだ」

確かにそうだ。兄の言う通り過去の記録に残っていないものをどうやるのかは気になるところ。もしかすると、何か秘策があるのかもしれない。

「そのことに関しましては、こちらを。女神ピアネータがその予言と共にこの書物の在り処をお教えくださいました。それを魔術師の方々に解いてもらい、やっとこの儀式を行う準備ができたのであります」
「失敗はないのであろうな」
「勿論でございます。では、他に何かありますでしょうか・・・・・。大丈夫なようですね。はい、魔術師団長殿。始めてくだされ」

いつの間に入って来たのか、十数名の魔術師が奥の部屋へと入っていく。
それに王が続き、他の者もぞろぞろと中に入っていく。

自分もそれにつられて足を踏み出そうとすれば、急な寒気に襲われた。