転生王子と勇者

ふぁんたずま

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全てが限界

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風邪でもひいたか。

俺が立ち止まったことで後ろにいた弟が怪訝な顔で見上げてくる。

「どうかしましたか、ノッテ兄上」
「いや、何でもない」

そう言い何事も無かったかのように歩き出す。先程感じた寒気は無くなっていた。

先程の広間より二回りほど大きくなった儀式の間には王族と魔術師たち、そして協会の数名しか入ってきていなかった。

父だけには椅子が設けられていた。
国王に立ちっぱなしでいろ、は流石にダメなのだろう。

「準備は整いました。始めても?」
「陛下」
「うむ。始めろ」

その言葉を受け、魔術師らは一斉に何かを唱えだす。
今の時代の言葉ではない古代語がつかわれているのは理解できるが、何を言っているのかまでは分からない。

『----------』


同じ言葉が何度も繰り返されることに、若干精神が崩壊してきた頃、部屋の中心に描かれた魔法陣に変化が現れた。

少しずつではあるものの、魔法陣にゆっくりと光が流れ込んでくる。
それは水のように滑らかに流れ、所々反射でキラキラと輝く。

やっと半分くらいが終わったが、ここまででもう4時間は経っている。
正直、膝が限界を迎えている。
まあ、膝もそうなのだが、トイレの方も限界が近い。ここは恥を忍んで行ってしまおうかとまで考えてきだした。

それから1時間半、尿意と戦い続けることになるとは、今の彼はまだ知らない・・・。
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