転生王子と勇者

ふぁんたずま

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二人の兄

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昼食を食べ終え、そのまま勇者の元まで行ってしまおうと廊下を進んでいると二人の兄と出くわした。
この二人が一緒に居るのは珍しいな。

「アルバ兄上にルーチェ兄さん。二人が一緒に行動されるなんて、仕事ですか?」
「えへへ~、実はねーー」
「ーー貴様には関係ないことだろう。いちいち首を突っ込むな。煩わしい」
「っ、…………申し訳ございません」

次兄の言葉を遮った長兄は、俺と目を合わせようともしない。
だが、いつもの調子で会話していく俺達に周りは気にすることなく、通り過ぎていく。

気になった事が口や態度に出てしまう癖は、本当に悩みものだ。

「ちょっと、兄さん。言いすぎだよ。もう少し棘のない言い方出来ないの?」
「ふん。この程度で精神的ダメージを負うのか。ゴミ以下だな」

そう言って去っていく長兄の後姿を見つめながら、朝食で出た目玉焼きのことを考えていた。兄に話しかけてまともな答えが返ってきた試しなど過去1度もない。だが、挨拶をしなければ礼儀がなっていないと叱られる。それならばと他のことを考えだすようになったのは俺の可愛らしさの全盛期と言っても過言ではない7歳の春であった。

「あー・・ノッテ。兄さんを責めないでやってね。あの人も本心では君が好きで好きでたまらないんだよ。でも、不器用だから言葉にしようにも、その方法がまだわかってないの」
「…」
「ノッテ、僕も兄さんも君が例え半分しか血が繋がっていない弟だとしても、大切な弟であることに変わりないよ。だから、たまには僕たちを頼ってくれると嬉しいな」
「・・っ、はい」

咄嗟に返事をしたものの、後半部分の「嬉しいな」しか耳には入っておらず、正しい返しだったのか不安になってきたノッテだったが、次兄のルーチェはそれ以上柔和に微笑んだままであった。

「じゃ、僕はこれで失礼するよ。それと、勇者に会いに行くならだれか護衛を伴っていきなよ。なんなら、僕が護衛するけど?」

何故勇者の元へ行くのがバレたのか。
・・・無意識のうちに話していたのだろうか。ああ、そんな気がしてきた。

「いえ、結構です」
「うわ、ばっさりいくね。はぁ~。じゃ気を付けてね」
「はい」

兄とは別れ、勇者の元へ向かう。
途中で暇そうな騎士見習いくんに声をかけ、ついてきてもらう事に成功した。

ルーチェ兄さんの真剣な話はいつも長く、ほとんどがどうでもいい話のためいつも聞き流していたのだが、今回はなんだかいつにもまして真剣だった気がする。
まあ、いいか。

「あ、あの。で、殿下!!………通り過ぎてます」
「え、あ。すまない」

考え事をしていたら目的の場所を通り越していたようだ。

扉の前まで戻り、深呼吸をする。
後ろの騎士見習いくんまで真似して深呼吸しているのは見なかったことにしよう。

気持ちを落ち着け、
扉を開けたーー
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