【小スカ・大スカ】ショートショート集

なまご

文字の大きさ
16 / 21

016:プライド高い高校生がオバケ屋敷でおもらしする話【小スカ CPなし】

しおりを挟む


登場人物

 一ノ瀬
完璧主義でプライド高く、人に弱みを見せるのが嫌だけど、暗いところとホラーがめっちゃ苦手。


―――――――――――

言えなかった。
いや、言えるわけがなかった。

俺は他人に弱みを見せるのも、努力を見せるのも嫌いだ。
勉強もスポーツも努力を軽々とこなしてるように見せてきたし、忖度しない物言いが人を遠ざけることもあるが、男子校に通いながら他校の女子が見に来るほど異性からの人気もあると自負している。

だから言えなかった。
おばけが苦手だからお化け屋敷に入りたくないなんて情けないことは。






「うぉぉお!!びびったー!」
「めっちゃこわ!ていうか一ノ瀬クールすぎるだろ! !」
 
怖くて固まってただけだ。
いつ叫んでもおかしくない。

「あー、俺ちょっと体調悪いから後から追いつくから先行っててよ」
「え、大丈夫なのそれ」
「俺らが走ったりするからしんどいんじゃね?一人で怖くないなら置いて行ってやろうぜ」
「…そうしてくれ」

みっともなく泣き叫んだりするところを見られるくらいなら、ひとりで怖い思いをした方がまだましだ。
誰がいたって怖いのは変わりないのだから。
修学旅行のグループが先に進んで行き、ちょっと先で聞こえる悲鳴が聞こえなくなったころ、俺もそろりと歩き出した。

暗くて不気味なのが嫌だ。
何か出るんじゃないかとひやひやする、心臓の激しい鼓動が嫌だ。
何もおばけ役そのものが怖いわけではない。

体が竦んでうまく動かせない。
人に見られていないのをいいことに、自分で自分を抱きしめるようにしてぎこちなく前に進んでいく。
子供のころ、苦手になったときのように「出るかもしれない道」を歩いているのではない。
安全なおばけが「出る道」なのだ。怖がる必要なんてない。驚かないように身構えてさえいれば良い。

いかにもな“死体”の落ちている通路をゆっくりと通る。
いつ動くか分からないそれは、俺が通り過ぎてしばらく歩いても、動かなかった。
ほっとした時だ。
声もなく目の前のベッドから飛び出してきたおばけ役が目の前まで走り寄ってきた。

分かっている、これはただの人間だ。
そう思いながらも気づいたら腰が抜けて地面に座り込んでいた。
情けない。情けない。恥ずかしい……。
でも体が震えて動けなかった。

「だ、大丈夫ですか?すぐ別のスタッフに迎えに来させますから、安心してくださいね」
「く…………暗いところが、ダメなんです」
「大丈夫ですよ、ちょうど近くにスタッフルームがありますから」

しかし問題はそこではない。
いやそこもだが、今床に手をついたときに気が付いた。
床が濡れているのだ。そんなわけがない。
そして気が付いたのだ。
俺から出た……いや、現在進行形で出ているものだと。

体に力が入らなくて止まらない。
せめてちゃんと対応しないと…。

「あの……」
「どうしました?ご気分悪いですか?」
「いえ…あ、それもありますけど…あの……」

恥ずかしくて言葉がスムーズに出てこない。
こんな経験は初めてだった。
代わりに俺は視線を落として、床に広がっていく小便を見つめて黙り込んだ。
はっきりと言えないことが情けない。

女性スタッフの何とも言えない気まずそうな表情。しばらく忘れられそうにない……。
スタッフルームは本当にすぐそばにあった。
誰もいない小綺麗な場所に通されて、「ちょっと掃除してくるのでお待ちくださいね」とスタッフの人が立ち去ろうとした、その腕を俺は無意識につかんでいた。

「あ…いや………あの……」

少し言い淀むが、今更格好つけても仕方がないので俺はその人を見つめながら「行かないでもらってもいいですか?」とまるで子供のようにねだった。
恥ずかしくてたまらないのに、この場に一人で取り残されると思うと不安で胸が苦しくなる。

女性スタッフの表情が少し和らいだのを感じた。
その表情が幼馴染にちょっと似ていて、俺はようやく安心感からか、目頭がじわっと熱くなり、涙が頬を伝った。

「そ、それじゃあ掃除道具だけさっきのスタッフに渡してきますから、目をつむってゆっくり10秒数えててください」

女性スタッフが優しくそう言い、俺はそれに従った。
数えながらズボンが濡れて張り付く感覚が気持ちが悪いと思った。
すぐにもどってきたスタッフがしゃがみこんで、優しい瞳でじっと見つめて「もう大丈夫ですか?」と聞く。

言っていいだろうか。
今更…。言うしかないだろ…。
意を決して口を開く。

「………トイレに行きたいんですけど…一人になりたくなくて」
「それじゃあ私が一緒に行って、傍で耳をふさいで待っててもいいですか?」

恥ずかしいことを言っている。
小学生でもないのに、こんなことを他人に……。
しかし先ほど失禁してしまっているにも関わらず、いや、その刺激のせいか先ほどから小便が漏れそうな感覚が収まらない。

「すみません…出来ればお願いしたいです……」

スタッフの人がそっと肩を支えてくれて立ち上がる。
が、膝がかくんと折れて地面に倒れこんでしまった。
安心したせいもあるのか体に力が入らない。
それも、我慢していた小便がどうしても我慢できなくて、力を入れると余計に勢いを増してしまって、シュルルルル、とくぐもる音を立ててその場で我慢していた分をすべて漏らしてしまった。

「…………」

どう対処するのが正しい?わからない…。
スタッフの人を見ると、困ったような優しい笑顔で「大丈夫ですよ」と俺が本当に落ち着くまで傍で優しく背中をたたいてくれた。
信頼している幼馴染に似た、そのスタッフの人に面倒を見てもらい活動グループのメンバーや担任に連絡を入れてもらって修学旅行の間中その場で休ませてもらったのだった。





―――――――――

別のシリーズ作品のキャラがパラレルワールド的な感じで出張してきました。
そのシリーズもそのうち公開したいです。


■ 追記 ■

せっかく関連しているので、このキャラの登場するシリーズをアルファポリスでも公開しようと思います。
整えたら順次 アップしていくのでよかったら読んでみてください!

    ↓

【一ノ瀬家は我慢できない!】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/425706168/886016340

読み切り短編集で、4人の固定キャラ(一ノ瀬家の面々)によるオムニバス形式です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

どうして、こうなった?

yoyo
BL
新社会として入社した会社の上司に嫌がらせをされて、久しぶりに会った友達の家で、おねしょしてしまう話です。

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...