記憶の選択

なまけ猫

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そこから見える景色は

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おまたせ、といい彼女は笑いかけてくる。

やっぱり考え直したいと言いそびれたままここまで来てしまった。
遂に始まるようだ。
簡単に説明するね、と落ち着いた様子で滑らかに話し出す。

「これから天使の国に行きます。死にません。気になる方法ですが、こちらの装置を人目につかない扉に設置します。」

先ほど質問したからか、重要事項ととらえて「死なないこと」をはっきりとしっかりした口調で説明する。そのうえで、移動方法として文庫本程度の黒い機械のようなものを取り出した。
先ほどまで、その機械に行き先を入力していたようだ。

それを閉まった扉に取り付けて扉を開けると行き先とつながるらしい。機械の構造については長くなるので割愛します!だそうだ。

なるほど。
話はわかったが全体的にわからないところがある気がするが、具体的に何がなのかはわからない。

彼女からの「質問は?」という問いに答えることができず、質問はないということになった。

「ではでは行きますか。普通に扉をくぐるだけで行き来できるからね。」

後についてきてね、と言い、人目につかなそうな扉に機械を取り付ける。

 
扉を開くと、そこは一面が白で覆われていた。


どういう仕組みかはわからないが、この部屋はエントランスのようなところで、光源がないというか、全方向が光っているというか、部屋の形がわからない。

高田さんの後ろをあまり距離を開けずに移動すれば迷子にはならないということなので、ついていく。
方向感覚も奪われているのだが、高田さんには目的の方向がはっきりと見えるのだろうか。

そんなことを考えているうちにエントランスを抜けたようだ。
そこには色彩があり、影があった。

全体的にパステルカラーというか白がかった優しい色合いだ。
床からは観葉植物のようなものが植えられており、緑や黄緑、黄色がある。

地面にはビー玉くらいからこぶしくらいの大きさでピンクや空色、白といった物が敷き詰められているようだ。
マシュマロのような柔らかくも弾力があり、軽やかに移動できる気がする。

部屋の中央に受付のようなところでなにやら話をしているようだ。
話し終わったかと思うと、後ろをついてくるようにという。
 

どこに行くのかわからないままついていく。
どうやら、この建物には中庭のようなものがあるようで、カラフルな植物が生えている。
ピンクの植物の陰から人影らしきものが見えた気がしたが、すぐに見えなくなってしまった。

高田さんに話そうか迷っているうちに、目的地についたようだ。

高田さんによると、ここは天使の国が一望できる展望台らしい。

どういう仕組みかはわからないが、広くもなく狭くもない、天使の国が見える。
色とりどりだが、町ごとにまとまっている。
見ているだけで、その町の特徴が流れ込んでくるようだ。

 あまり自分から興味を持つタイプではないが、ここから見る景色は何か引き込まれるものがあり、それぞれの町を訪ねてみたい、そう思った。
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