記憶の選択

なまけ猫

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温泉っていいよね

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危なかったね、と高田さんは笑顔で話しかけてくる。
お礼を言い、先ほど浮かんだ疑問をぶつけてみる。

「あのヒトデに食べられるとどうなってたの?」

高田さんはニヤっと笑い、少し間を開けて答えた。
「あのヒトデに食べられると、宇宙空間に投げ出されるんだよ」
全く想像とは違う答えが来たので、顔をしかめて「それは危ないところだった」というのが精いっぱいだった。

「嘘嘘。食べられたところから溶かされていくんだよ。しかも毒を入れられるから体は動かなくなっちゃうの」

思ったよりリアルでしょ、と高田さんは話すが、想像できてしまう分こちらの方が恐ろしい。

そんな話をしていると、水しぶきが飛んできた。
目を遣ると両手くらいのイガイガしたものがたくさん海面を飛び跳ねている。
バケツをひっくり返したかのように水が襲い掛かってくる。

僕と高田さんはびしょぬれになってしまったので、温泉に入りに行くことにした。

海の近くに温泉があるのはなんだか意外な感じがしたが、景色はよさそうだなと思う。


しばらく歩き、温泉街のようなところに着いた。
これまで見てきたパステルカラーの街並みとは異なり、落ち着いた色合いの街だ。

建物の中は深いグリーンを基調しているが重々しくは感じない。
人間界では女湯と男湯で脱衣所までの入り口がわかれているものだが、見当たらない。

高田さんが、露天風呂行ってきなよと指をさす。
他にもたくさんの湯船があるようで、少し楽しみだ。

「脱衣所はどこなの?」

「脱衣所なんてないよ!そのまま入れるよ~」
そういえば、人間界は脱いで入るから男女で別れてるんだったね、と高田さんは思い出したようにつぶやく。

なるほど、着衣のまま入るから男女で分ける必要はないのか。
え?体を洗ったりしないの?


「え?体を洗ったりしないの?」
声に出てしまっていたようで、お湯にはいればわかるよと言われる。

本当に服のまま入っていいのか?
服のまま入って、笑われたりしないか?
そもそも、男女混浴って本当か?

疑問と不安が湧き上がる。

「私は雲の湯に行ってくるね~」
そう言って、高田さんはさっさと行ってしまった。

仕方ない、とりあえず行ってみるか。
先ほど高田さんが勧めてくれた露天風呂のほうへ行き、ドアを少し開け様子をうかがう。

湯気が勢いよく顔へぶつかる。
直接浴室につながっている。

一度そっとドアを閉じる。

なるほど、そういう感じか。
そういえばバスタオルも持っていないが拭かないのか。
床は濡れていないようだが。


考えてもわからないことしかないので、思い切って入る。

ガラッ

ドアを思いきり開け、湯船に向かって歩く。
湯気はあるのに、床は不思議と濡れていないようだ。

湯船には服のままはいっている人が数人いるが、距離をあけて湯船に入る。


シュゥゥゥン


!?
湯船に入ると、ゲームで見るようなエフェクトが出た。
消えたかと思うと、キラキラ光っている。

これできれいになったということなのか??

周りに入っている人を見てもキラキラしている。
これでいいようだ。

座りやすい位置を探し、大きく深呼吸をする。
目の前の景色を見ると、心を震わすような絶景だった。
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