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3、上司、社長に説教する!?
3ー2
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「じゃ、俺キャベツの千切りやります」
翔太は台所に並べられた食材からキャベツを手に取った。
「指まで刻むなよ」
行人がからかった。
「刻みませんよ。スライサー使うもん」
「はいはい、どうぞ」
翔太は道具をテーブルに並べ、シャコシャコとキャベツを千切りにした。翔太の部屋の台所は、ふたりが同時に作業するには狭すぎる。
行人は手早く下ごしらえを済ませ、絶妙の火加減で豚肉を焼き上げた。
「いただきまーす!」
ふたり並んで夕食だ。労働の後の肉はうまい。翔太は行人の作った生姜焼きをパクパク口に放り込む合間に訊いた。
「そうだ。企画課、どうでした?」
「ん?」
「さっきの。年末対策の販促物の件」
「ああ。通したよ」
行人はこともなげに言い切った。
「さすがに『高級感あふれるビジュアル』はどのくらい実現するか分からないけどな」
そう付け加えて、行人はみそ汁をすすった。翔太はため息をついた。
「いつもながら、すごいですね、ユキさんは」
「何が?」
「何がって、仕事がですよ。今俺ら仕事の話してましたやん」
「そう?」
行人はどこ吹く風だ。
厳しくいろいろ追求されるが、納得のいく説明ができさえすれば、上司として完璧にサポートしてくれる。仕事の面で、行人は翔太の憧れだ。こんな風に業務を進められたらいいのにと日々思っている。
「何だよ」
ポーとしている翔太の脇を行人は肘でつついた。
「冷めるぞ。早く食えよ」
翔太は我に返った。
「あ、はい。いただきます」
そして料理もうまい。
(このひとに、できないことは、あるんだろうか)
就職して行人の下で働くようになって二年と三ヶ月、付き合ってから丸二年。行人が苦手なこと、できないことは見つからない。
(でも、弱点のない人間なんて、いないよな)
翔太たちには見せないところで、泥臭く努力したりしているのだろうか。翔太は有能でカッコいい上司である行人に憧れているが、一方で、自分の前ではもっとくつろいで、ダメなところも見せて欲しいとも感じる。弱点をさらけだせるくらいの関係に、自分たちはまだなれていないだろうか。
翔太は、自分がもっと大人にならなければと思った。
有能な行人を、安心してくつろがせることのできる、広い心を持った大人の男に。
(単純に、日常身の回りで起こることで、できないことがないだけかもしれないけどね)
食べ終えて、翔太が淹れた茶を飲んだら、行人はサクッと立ち上がり食器を下げ始めた。
「俺洗っとくから、ショウちゃん風呂入ってなよ」
行人は翔太のように洗いものを溜めたりしない。きっと自宅もキレイにしているのだろう。翔太は素直に従った。
翔太が風呂から上がると、行人は読んでいた本を置いて、
「俺もシャワー借りていい?」
とやってきた。勝手知ったるなんとやらだ。翔太は風呂場前のスペースを空け、行人にタオルを放って渡した。
行人の使うシャワー音が聞こえた。水音は翔太の胸を熱く弾ませる。これが毎日のルーティンになったらいいのに。同じ家に帰り、一緒に飯を食い、ひとつのベッドで眠る。それが、特別のことでなく、日々の生活になったらどんなだろう。
翔太は行人の脱いでいったYシャツを手に取った。パリッと糊のかかったYシャツは、夏に一日着ていてもまだ形を保っている。どんなこだわりなのか、行人はスーツの中には白しか着ない。色シャツはくだけたものをプライベートで身につけるのみだ。
行人は翔太より少し背が高い。手足がすらっと長くて、多分八頭身くらい。翔太は手も足も短めで、純日本風の体つきだ。行人の身体にピッタリ合わせたシャツなら、多分袖も丈も自分には長いだろう。
「ショウちゃん!? 何してるの」
「はっ!?」
シャワーを使い終わった行人がプルプル震えている。翔太は自分が行人のシャツを羽織っていたことに気付いた。
「いや、あの、これはっ」
「カワイイー!! 袖から手の甲だけしか出てない! 肩幅も丈も大きくて、彼氏のシャツを着てみましたって感じ!」
行人は驚喜している。翔太は真っ赤になって首を振った。
「べ、別に大した意味はなくて、ただその……」
「何だよそれ! 可愛すぎるよ」
行人は濡れた身体のまま、自分のシャツを羽織った翔太の肩に腕を回した。
「素肌に俺のシャツ一枚なんて。誘ってるの? どんな計算?」
そう耳に吹き込まれて、翔太は恥ずかしさでいたたまれなくなる。
「ご、ごめんなさいユキさん。俺……」
「それが計算じゃなくて天然なんて。ホント、ズルいよショウちゃんは」
行人は翔太の耳を甘くかんだ。
「んっ……」
「頭おかしくなりそうだ」
声に凶暴さが混じり、行人は乱暴に翔太の首筋に歯を立てた。翔太の控えめな抵抗を無視し、かみつくように荒っぽいキスを首に肩に降らせながら、行人は翔太の身体を抱えて狭い部屋を横切った。
「ユキさん……」
ふたりで奥の部屋のベッドに倒れ込むと、行人は翔太の肩から自分の白いYシャツを剥ぎ取った。
「ショウちゃん、俺、ホントに頭おかしいよ。ショウちゃんが何をしても、何を言っても、可愛くて可愛くて、全身の血が沸騰する」
「ユキさん……」
「ギュウギュウに抱きしめて、食べちゃいそうに噛みついて、ショウちゃんのこといじめたくなる。ショウちゃんが嫌がっても泣いても、きっと止められない。どうしよう……こんなじゃ俺、いつかショウちゃんに嫌われちゃうよ」
そう言って、行人は泣きそうな顔で翔太にしがみついた。
翔太はふっと笑って、しがみついてくる行人の濡れた髪を指で梳いた。
「大丈夫ですよ、ユキさん。俺、嫌がりも泣きもしませんから」
「ショウちゃん……」
「だから安心して、俺のこといじめてください。ユキさんのしたいように、して……」
翔太の言葉が、行人の最後の理性、そのカケラを吹き飛ばした。行人は翔太の身体にしたいことをしたいだけして、翔太はその感覚に溺れ、意識を失った。
翔太は台所に並べられた食材からキャベツを手に取った。
「指まで刻むなよ」
行人がからかった。
「刻みませんよ。スライサー使うもん」
「はいはい、どうぞ」
翔太は道具をテーブルに並べ、シャコシャコとキャベツを千切りにした。翔太の部屋の台所は、ふたりが同時に作業するには狭すぎる。
行人は手早く下ごしらえを済ませ、絶妙の火加減で豚肉を焼き上げた。
「いただきまーす!」
ふたり並んで夕食だ。労働の後の肉はうまい。翔太は行人の作った生姜焼きをパクパク口に放り込む合間に訊いた。
「そうだ。企画課、どうでした?」
「ん?」
「さっきの。年末対策の販促物の件」
「ああ。通したよ」
行人はこともなげに言い切った。
「さすがに『高級感あふれるビジュアル』はどのくらい実現するか分からないけどな」
そう付け加えて、行人はみそ汁をすすった。翔太はため息をついた。
「いつもながら、すごいですね、ユキさんは」
「何が?」
「何がって、仕事がですよ。今俺ら仕事の話してましたやん」
「そう?」
行人はどこ吹く風だ。
厳しくいろいろ追求されるが、納得のいく説明ができさえすれば、上司として完璧にサポートしてくれる。仕事の面で、行人は翔太の憧れだ。こんな風に業務を進められたらいいのにと日々思っている。
「何だよ」
ポーとしている翔太の脇を行人は肘でつついた。
「冷めるぞ。早く食えよ」
翔太は我に返った。
「あ、はい。いただきます」
そして料理もうまい。
(このひとに、できないことは、あるんだろうか)
就職して行人の下で働くようになって二年と三ヶ月、付き合ってから丸二年。行人が苦手なこと、できないことは見つからない。
(でも、弱点のない人間なんて、いないよな)
翔太たちには見せないところで、泥臭く努力したりしているのだろうか。翔太は有能でカッコいい上司である行人に憧れているが、一方で、自分の前ではもっとくつろいで、ダメなところも見せて欲しいとも感じる。弱点をさらけだせるくらいの関係に、自分たちはまだなれていないだろうか。
翔太は、自分がもっと大人にならなければと思った。
有能な行人を、安心してくつろがせることのできる、広い心を持った大人の男に。
(単純に、日常身の回りで起こることで、できないことがないだけかもしれないけどね)
食べ終えて、翔太が淹れた茶を飲んだら、行人はサクッと立ち上がり食器を下げ始めた。
「俺洗っとくから、ショウちゃん風呂入ってなよ」
行人は翔太のように洗いものを溜めたりしない。きっと自宅もキレイにしているのだろう。翔太は素直に従った。
翔太が風呂から上がると、行人は読んでいた本を置いて、
「俺もシャワー借りていい?」
とやってきた。勝手知ったるなんとやらだ。翔太は風呂場前のスペースを空け、行人にタオルを放って渡した。
行人の使うシャワー音が聞こえた。水音は翔太の胸を熱く弾ませる。これが毎日のルーティンになったらいいのに。同じ家に帰り、一緒に飯を食い、ひとつのベッドで眠る。それが、特別のことでなく、日々の生活になったらどんなだろう。
翔太は行人の脱いでいったYシャツを手に取った。パリッと糊のかかったYシャツは、夏に一日着ていてもまだ形を保っている。どんなこだわりなのか、行人はスーツの中には白しか着ない。色シャツはくだけたものをプライベートで身につけるのみだ。
行人は翔太より少し背が高い。手足がすらっと長くて、多分八頭身くらい。翔太は手も足も短めで、純日本風の体つきだ。行人の身体にピッタリ合わせたシャツなら、多分袖も丈も自分には長いだろう。
「ショウちゃん!? 何してるの」
「はっ!?」
シャワーを使い終わった行人がプルプル震えている。翔太は自分が行人のシャツを羽織っていたことに気付いた。
「いや、あの、これはっ」
「カワイイー!! 袖から手の甲だけしか出てない! 肩幅も丈も大きくて、彼氏のシャツを着てみましたって感じ!」
行人は驚喜している。翔太は真っ赤になって首を振った。
「べ、別に大した意味はなくて、ただその……」
「何だよそれ! 可愛すぎるよ」
行人は濡れた身体のまま、自分のシャツを羽織った翔太の肩に腕を回した。
「素肌に俺のシャツ一枚なんて。誘ってるの? どんな計算?」
そう耳に吹き込まれて、翔太は恥ずかしさでいたたまれなくなる。
「ご、ごめんなさいユキさん。俺……」
「それが計算じゃなくて天然なんて。ホント、ズルいよショウちゃんは」
行人は翔太の耳を甘くかんだ。
「んっ……」
「頭おかしくなりそうだ」
声に凶暴さが混じり、行人は乱暴に翔太の首筋に歯を立てた。翔太の控えめな抵抗を無視し、かみつくように荒っぽいキスを首に肩に降らせながら、行人は翔太の身体を抱えて狭い部屋を横切った。
「ユキさん……」
ふたりで奥の部屋のベッドに倒れ込むと、行人は翔太の肩から自分の白いYシャツを剥ぎ取った。
「ショウちゃん、俺、ホントに頭おかしいよ。ショウちゃんが何をしても、何を言っても、可愛くて可愛くて、全身の血が沸騰する」
「ユキさん……」
「ギュウギュウに抱きしめて、食べちゃいそうに噛みついて、ショウちゃんのこといじめたくなる。ショウちゃんが嫌がっても泣いても、きっと止められない。どうしよう……こんなじゃ俺、いつかショウちゃんに嫌われちゃうよ」
そう言って、行人は泣きそうな顔で翔太にしがみついた。
翔太はふっと笑って、しがみついてくる行人の濡れた髪を指で梳いた。
「大丈夫ですよ、ユキさん。俺、嫌がりも泣きもしませんから」
「ショウちゃん……」
「だから安心して、俺のこといじめてください。ユキさんのしたいように、して……」
翔太の言葉が、行人の最後の理性、そのカケラを吹き飛ばした。行人は翔太の身体にしたいことをしたいだけして、翔太はその感覚に溺れ、意識を失った。
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