ふつつかものですが鬼上司に溺愛されてます

松本尚生

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4、対決! ペンギンさんvs俺!?

4-3

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 行人は翔太の唇をチュッと音をさせて軽く吸った。
「ユキさ……」
 翔太は行人のバスローブの袖をキュッと握った。身体の底の甘い疼きに耐えられず、行人の腕を引いてその唇にキスをした。息継ぎも苦しいほど唇を、舌を味わっていると、もう何もかもが分からなくなる。ふたりは口づけを交わしながらベッドの上にくずおれた。
 行人の長い指が、バスローブを避けて翔太の太腿に触れた。翔太は思わず行人の唇をかんだ。力を逃がして行人を傷付けないようにするのが精一杯だ。行人の指が翔太の柔らかいところをじらすようにゆっくりとなぞる。
 唇が離れると、翔太はその名を呼んでしまう。
「ユキさん……」
 熱を帯びた行人の声が翔太の耳をくすぐる。
「ショウちゃん……、ショウちゃんは、どうして欲しい?」
「え……?」
「何をして欲しいか言ってごらん。その通りにしてあげる」
 翔太は唇をかんだ。行人から与えられる感覚なら、痛みすら快と感じる。そういう身体になっている。行人になら何をされても。
「声……」
 翔太は小さく言った。
「ん?」
「俺のアパートは安普請だから、大きい声出すと隣に聞こえちゃうんで。今日はその心配、ないんですよね」
 翔太は目を伏せ、行人のバスローブの袖に顔を隠した。
「行人さんにされて、こらえないで声出したい」
 恥ずかしい。口にするだけで膝が震えそうに興奮する。その興奮は身体の変化を伴って、行人に全部バレてしまう。そして翔太は羞恥に震える自分の姿が、行人には理性を弾き飛ばすほど可愛く見えていることを知っている。
「じゃあ、いっぱいあんあん言わせてやるよ」
 行人は翔太の耳を甘く噛んだ。翔太ののどから声が漏れる。
「ん……っ」
「可愛い声」
 行人は嬉しそうにバスローブごと翔太の身体を抱きしめた。
「ほら、もっと声出させてあげるから。どこをどうして欲しいか言って」
「んん……」
 翔太は、自分の身体をじらすように揺らす行人の背中を握りしめた。
「言わないの? 朝までこのまま抱っこしてようか?」
 翔太は自分の耳の後ろから自分の拍動を聞いた。身体の中を欲望がふくれあがって、出口を求めて氾濫している。
「……どうしてそんなに俺をいじめるんですか」
 自分の声が恥ずかしいほど濡れていた。行人はのどの奥で笑った。
「いじめられるの、好きなくせに」
 翔太は首を振った。
「ユキさん……」
 翔太は脚の付け根に硬く押し当たる行人の欲望をまさぐった。翔太の手の中で行人はびくんと大きく震えた。
「俺のも……」
「ん?」
 翔太は恥ずかしさに顔をそむけて、息も絶え絶えに短く言った。
「俺のも触って」
 行人の指が繊細に動いた。
「あ……っ」
「触るだけでいいの?」
 行人に触れられて反応したときに、バスローブの前がはだけた。露わになった胸の突起を行人は見逃さず歯と舌で責めた。
「イヤ……あぁ」
「じゃあ、して欲しいこと全部言って」
 行人は翔太の胸に舌を這わせたままそう言った。鋭い感覚に翔太の羞恥が飛んだ。
「口でして」
「それだけでいいの?」
「口でしながら、俺の後ろを指で開いて。そして……」
「そして?」
「……ユキさんのであんあん言わせてぇ……」
 行人は感に堪えないといった風情で大きく息をついた。
「可愛い……! ショウちゃん、おねだりもメチャクチャ可愛かった」
 翔太はまた首を振った。もうこれ以上じらされたらおかしくなる。
「ユキさぁ……んっ」
 お願いと言ったか。早くと急かしたか。翔太はもう自分の口が何を言ったか分からなかった。
 夜半には、翔太の願った通りに、翔太ののどは甘くかすれていた。

 ホテルの駐車場から車を出すと、眩しさで目が回りそうになった。
 運転席の行人も同じだったらしく、
「さすがにこの歳になると、遊びすぎるとこたえるな」
と額を押さえた。翔太は唇をとがらせた。
「俺なんかユキさんより二回も多かったのに」
「年の差を考えろ」
「三つしか違いませんよ」
「二十代の前半と後半だぞ」
 時間の縛りもないので、高速に乗らず、あちこち寄り道しながら帰ることにした。アイスを食べ、コーヒーを飲み、ちょっとした野菜を買って夕方札幌に着いた。
「今日、泊まってもいいか」
 行人はそう訊いた。翔太の部屋が近付いていた。昨日から非日常をともに過ごし、離れがたい気持ちになっていた翔太は、「はい」と大きくうなずいた。翔太と同じように行人も、このまま別れを言う気にならなかったのだ。
 行人はハンドルを切った。食料を買い込み車をコインパーキングに入れ、翔太の部屋へ。夜更けに翔太は大きくため息をついて言った。
「広いベッドって、いいですよね……」
 ほんの短い夏の盛り。
「シングルにふたりは、さすがに暑いしな」
 ベッドの下から行人が答える。夜中まで気温の下がらないほんの数週間、少し手足を伸ばして眠りたいとき、そんなときは、どちらかがベッドから降りて床に寝る。翔太はいつも行人にベッドを譲ろうとするのに、大体いつも行人が勝って譲らせてくれない。
 翔太は行人の体温が恋しくなって、ベッドの上から手を伸ばした。行人はベッドから垂れてきた翔太の手をそっとつかんだ。
「俺ももう少し、大きなベッドを置きたいです。そしたらユキさん、もっと泊まっていきやすくなると思うし」
 行人は翔太の指をキュッと握りしめた。
「広いベッドっていうか……」
「何です? ユキさん」
 翔太はベッドから頭を出した。行人は翔太の指に唇を触れた。
「ショウちゃん、俺が来ないとき、ロクなもの食べてないんだもん」
「え……」
「ウッカリ多いし、遅刻しそうだし。俺、いつもついて見てないと……って心配だよ」
 翔太の指から一瞬力が抜け、そして、もう一度翔太の方から行人の指をギュッと握り返した。翔太は自分の声が震えないよう、細心の注意を払って、言った。
「じゃ、いつもついててくださいよ」
 そう言ってしまってから、翔太はギュッと目を閉じ、行人の反応を待った。
「カワイイー!!」
「へ?」
 行人はバサッと勢いよく起き直り、翔太の頭をくしゃくしゃとかき回した。
「何そのカワイイ反応! どんな顔してそんなこと言ったの? ショウちゃん、ほらほら、顔をよく見せて!」
「待ってユキさん、ちょっと、離してください」
 行人はいつもの調子でキャーキャー喜んでいる。
(これは、はぐらかされたのか、な)
 翔太は行人にもみくちゃにされながら、内心落胆していた。決死の思いで言ったのだったのに。
(一緒に住みたい)
 夜通し一緒のベッドで眠って、朝も一緒に目覚めて。時間を気にする行人が、翔太を置いていってしまうことのない生活。そんな暮らしを、してみたかった。
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