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第一章 魔術学校編
第29話 巨人族のプライド
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────少し昔の話をしよう。
人族とは違った巨体を持つ巨人族。
巨人族とは今は人族の中の1種族とされているが、かつては魔物の1種であった。
その大きな理由は天から授かる魔術を持つのが人族に対し、彼らは地から魔術を授かるのだ。
その結果、地属性の魔術を扱うことで魔物扱いされていたのだ。
ではなぜ今は人族の仲間入りを果たしたのか。
それは数百年前にも遡ることになる。
今よりずっと魔物との対立が激しく、そこかしこで戦闘がされていた時代の話だ。
巨人族も同じ地属性の魔術を扱うもの同士のはずの魔物から虐げられていた。
他の人族と同じように彼らもまた、魔物と対立関係にあったのだ。
しかし、その時の人族は尊き天の力を持つもの以外の人族を良しとしなかった。
地の神から授かる地魔術は魔物の証だと、その体躯から『│地魔《グランドデーモン》』の1種だとも言っていたほどに、人族達は自分たちとは違う者を認めたくはなかったのだ。
そんな折魔物たちは魔物によって襲撃を受けることになる。
普段の魔物であったなら彼ら巨人族が負けることは無い。ただ魔物には圧倒的な物量があったのだ。
いくら彼らと言えども、ほぼ無限と言って差し支えないくらいの魔物が相手では分が悪いのだ。
巨人族はその力を奮ったがついには魔物に敵わず、住んでいる地を捨てなくてはならなくなった。
そうなるとどこに住み着くかという話になる。
今まで通り森を切り開いて集落を作るか?
平原に建て直すか?
人族の街を訪ねるか?
巨人族はそのどれも選択することは無かった。
彼らは彼らでプライドがあり、今まで住んでいた地を離れて暮らすつもりはなかったのだ。
それではどうするか?
戦って戦って奪い返すしかあるまい。
そうして巨人族は日夜構わず襲ってくる魔物に対して、ひたすら抵抗を始めた。
地魔術を使ったり、その巨体で押し潰したりと様々な方法を取った。
そうしていくと巨人族の身は傷でボロボロにはなるが、なんとか……なんとか魔物を退けることに成功した。
したように思っていた。
なんとか無限とも思える物量を押し返した巨人族達は、自分たちの住処を奪還した事に喜びあっていた。
しかし、魔物達はそれらに敵わぬと判断するや否や巨人族の集落を諦めて人族の方へと向かった。
本来なら……いつもならばそれ幸いと巨人族は自分達の暮らしを優先させるのだが、彼らのプライドが今回ばかりは許さなかった。
自分たちの怨敵が目標を変えて別のところに行こうと言うのだ。
巨人族は、自分達を襲った敵は自分達でケリをつけたかったのだ。
たしかに今戦って勝てるかは分からない、もしかしたら負けて死んでしまうかもしれない。その相手がかの魔物と同じ扱いをしている人族であっても、それは関係がなかった。
あの魔物の量では人族も勝てるかどうか怪しいものであった。
その物量に押され始めた頃、辺境の町で食い止めているものが居ると話題にあがる。
その時の町の人々はこう語っていた。
『彼ら巨人族が助けてくれたのよ』
『傭兵ギルドのないこの町では戦える人は少ない。そんな時に彼らの存在は大きかった』
『あの巨大であらゆる魔物を殴り飛ばしてるのを見るのは壮観だったわ』
巨人族からしてみれば自分達のプライドを守っただけに過ぎない、だが奇しくも人族は守られてしまったのだ。人族と認めていなかった巨人族に。
それが故意であれたまたまであれ、その事実は覆ることは無かった。
その町の人々はその時から巨人族との交流を始め、噂とは違った種族だということを思い知った。
魔物とは違い言葉が通じ、同じ認識を持つ。ただ大きいだけの人間そのものだった。
違う点と言えば地魔術を扱うところだが、町を救われた人族にとってはそんなもの関係がない。結果としてその力に守られてしまったのだから気にも思うまい。
そしてその町の人々は巨人族は人族だという噂をひたすらに立たせた。
最初こそ反発されていたのだが、その町に来て実際の様子を見た人々からその反発は薄れていった。
そうして長い年月をかけて巨人族は、人族の仲間として受け入れられ始めた。
全ての偏見や思想が収まったとは言えない。
それでも人族の中枢から魔物扱いされなくはなったのだ、これは大きな進歩だった。
やがて時が経つにつれその事を知るものは少なくなり、今や巨人族は大きい人族という認識となるのだ。
────時は戻り選抜大会本戦。
その巨人族と相対するのは、筋肉を鍛えた人族。
その体格は人族としては大きい方で常人なら見上げるほどである。
その人族からみても3倍近い体躯を持つ巨人族を前にして意気揚々としていた。
「おぉ! こうして見ると大きいな! 兄者よ!」
「うむ! 我らの筋肉がどれだけ敵うか試させてもらうとしよう」
チーム『マッソウ』を見下ろす巨人族『ギガント』はその出来上がった筋肉を見て感心していた。
「おいあれ見ろよ。人族のくせしてすげぇ筋肉だぜ?」
「あぁ、あれは我らも楽しめそうだ」
舞台の上で見合う2チームは今か今かと開始の宣言を心待ちにしていた。
レント達参加者は観客席には行けないが選手控え室でリアルタイムで見れるようになっている。
1回戦ということもあり全ての人がその瞬間をしているかの如く唾を飲み込む。
「ふむ、準備はいいようだな。それでは開始といこうか」
レイスターが舞台上に上がった。審判も務めるのだろう。
2チームを交互に見て頷くと、開始の宣言をした。
「それでは第1回戦! 始め!」
その声と同時に「マッソウ」のリーダーを務めるファイが前に出る。
彼ら3人は魔術も使えるが主に近接戦闘が得意らしく、魔術は補助として使っているらしい。
ファイはこの3人の中で1番の年長者らしく2人の兄として振舞っている。
そんな彼の得意とするのは『攻撃』だ。
残り2人より攻撃に秀でた火魔術に鍛え上げられた筋肉。そこから生み出されるパワーは無限大だとか。
「最初にこいつをお見舞してやるぜ」
『火炎烈瞬脚!!』
火の魔術により足を盛大に覆う炎が出現した。
その足を空を蹴るとその炎は龍の如く力強さで巨人族へと放出された。
「いい魔術だ。こちらも少し力を見せよう。アリエス 」
「そうですね。俺が出ましょう」
アリエスと呼ばれた巨人族は2人の壁になるように前に出た。
そして、その力を解放させた。
『│巨岩金剛盾《きょがんこんごうじゅん》』
巨人族の扱う魔術は地属性だ。正確には魔術ではなく神術と言うらしいがそこまで大きな違いはないようだった。
地魔術と言うと魔物のイメージがあるせいで名前が変わっているだけらしい。
その神術は目の前に大きく透明な壁を作り出し、あらゆる攻撃魔術を吸収する。吸収限界はあれど強力な防御手段だ。
「ふんっ、そんなもんっ!」
ファイも負けじとそのまま壁に向かって蹴る、蹴る、蹴る。
しかし、その壁はかなりの硬さを誇るようで傷一つつかない。
「はははっ! この神術は世界最高硬度の物質を作り出す神術だ。生半可な蹴撃では傷一つ付けられんよ」
「うちの弟はなかなかやるだろう? ん?」
守りに徹するならこれほど頼れるものも少ないだろう。突破されない安心は何者に変え難いものだ。
「くっ……兄者! 俺たちと一緒に!」
「あぁ、仕方ない。やるぞウィドー、サンディ」
『攻撃』の要である『蹴撃』のファイに対するは『遊撃』のウィドーと『鉄甲』のサンディ。
ウィドーは影打ちや意識外からの攻撃に長け、サンディはその拳を鉄の如き硬さに変えて敵に向けて叩きつける。
この「マッソウ」は防御という概念はなく、ただひたすらに敵を攻撃する事を是とするチームだった。
「巨人族相手に戦えてかなり有意義な時間ではあるが」
「俺達は上に進まなくちゃいけねぇんだ」
「その道を開けてもらうぜ!! 行くぜ愚弟達よ!」
「うす!」「おう!」
『│蹴拳暗刀《しゅうけんあんとう》・│水死之顎《みなしにのアギト》』
ファイによる炎の蹴撃、ウィドーの風の暗殺術、そしてサンディが繰り出す雷の拳。
それらが作り出すは獣と思しき巨大な顎。
その莫大な魔術はいかに硬度に優れた壁であっても容易に崩すことさえも可能だろう。
実際に巨人族の作り出した壁はその顎により砕かれ、そのまま巨人族へと向けて攻撃は続けられていた。
「やるなぁ! おい、アリエス! カプル!」
「いきますよ?」
「わかってんぜ、兄さん!」
『地神術・│絶碧《ぜっぺき》』
『地神術・│灰獣石《かいじゅうせき》』
アリエスは巨人族きっての『防御』の使い手、あらゆる魔術から仲間を守る鉱石の盾は色々な性質を併せ持つ。
しかし、今回はさらに弟のカプルのサポートとして使用していた。
そのカプルはと言うと人より大きい狼のような石像を作り出していた。
彼はその場にあるもので所謂『ゴーレム』というものを作り出せるのだ。
「兄さんのおかげでかなりいいわんころが出来たぜ」
「まぁまぁだな」
「そんなぁ……ってそろそろ来るぞ」
「あぁ!」とカプルがゴーレムに指示を出すとその狼のゴーレムはアリエスの出した壁その身に吸収した。
これにより硬さが増して、より攻撃を耐えることができる。
「マッソウ」達の攻撃がまさに着弾するぞというその瞬間の出来事であった。
そのゴーレムは果敢にも魔術に飛び込んでいき爆発四散したのだ。
否、爆発したのは魔術の方だ。
ゴーレムは壊れかけてはいるもののまだまだ動くことは可能なようだ。
「兄者……アレ止められたらどーすんだっけ?」
「ぉぉおおおお俺にはわからねぇなぁ!?」
「兄者ぁぁぁぁぁぁ!!」
「マッソウ」達は今の攻撃をまともに受け止められたことにショックを受けてあたふたしていた。
今まであれを防がれたことがなかったのだろう。
「では、今度はこちらから行くぞ」
そう言うと巨人族の1番でかい人……長兄が構えをとる。
巨人族は巨人族と言っても大きさにかなりの差異がある。
アリエスやカプル達みたいに2~3mの者もいれば、今回の長兄のような4mの者、大きい人は2桁まで行く者もいるらしい。
その長兄……バランはこの三兄弟の中で1番攻撃に特化しており、その力はミラとの予選で見た通りだ。
「さて、お前たちとの戦いに感謝を示してこの神術で終わりとさせてもらおう」
「兄者! 俺達に防御って使えたっけ??」
「なに、筋肉が守ってくれるさ」
「そうは言っても兄者! 足が震えてるぜ!?」
そんなこんな一応防御の構えをすると、それに向かって問答無用だとばかりに神術が飛んでくる。
『地神術・│大地烈槍《だいちれっそう》』
バランから扇状に広がるそれは、地面から槍と化した岩を飛び出させる神術だ。
無惨にもそれをまともに食らった「マッソウ」達は、空に打ち上げられてそのまま舞台から落ちてしまった。
「そこまで!」
レイスターが直ちに終わりの宣言を下す。
試合終了のひとつの敗北条件・舞台からの落下だ。
「チーム「マッソウ」! 舞台落下により敗北、よって勝者は「ギガント」!!」
「うおおおおおおおおお!!」
観客席から怒涛の歓声が飛んでくる。
興奮を抑えきれないようだ。
かく言うレントも戦ってみたさでうずうずは止まらない。
「それでは休憩の後、第2回戦を行う。選手はそれまでに舞台にくるように」
ひとまず第1回戦は終わりということで20分のインターバルが始まる。
レントの戦いはまだまだ先ということもあり、今の戦いを元に戦い方を考えることにした。
レントの相手はあの妖精族だ。
まともに戦っては暖簾に腕押しになる事はみんなが分かりきっている事だった。
人族とは違った巨体を持つ巨人族。
巨人族とは今は人族の中の1種族とされているが、かつては魔物の1種であった。
その大きな理由は天から授かる魔術を持つのが人族に対し、彼らは地から魔術を授かるのだ。
その結果、地属性の魔術を扱うことで魔物扱いされていたのだ。
ではなぜ今は人族の仲間入りを果たしたのか。
それは数百年前にも遡ることになる。
今よりずっと魔物との対立が激しく、そこかしこで戦闘がされていた時代の話だ。
巨人族も同じ地属性の魔術を扱うもの同士のはずの魔物から虐げられていた。
他の人族と同じように彼らもまた、魔物と対立関係にあったのだ。
しかし、その時の人族は尊き天の力を持つもの以外の人族を良しとしなかった。
地の神から授かる地魔術は魔物の証だと、その体躯から『│地魔《グランドデーモン》』の1種だとも言っていたほどに、人族達は自分たちとは違う者を認めたくはなかったのだ。
そんな折魔物たちは魔物によって襲撃を受けることになる。
普段の魔物であったなら彼ら巨人族が負けることは無い。ただ魔物には圧倒的な物量があったのだ。
いくら彼らと言えども、ほぼ無限と言って差し支えないくらいの魔物が相手では分が悪いのだ。
巨人族はその力を奮ったがついには魔物に敵わず、住んでいる地を捨てなくてはならなくなった。
そうなるとどこに住み着くかという話になる。
今まで通り森を切り開いて集落を作るか?
平原に建て直すか?
人族の街を訪ねるか?
巨人族はそのどれも選択することは無かった。
彼らは彼らでプライドがあり、今まで住んでいた地を離れて暮らすつもりはなかったのだ。
それではどうするか?
戦って戦って奪い返すしかあるまい。
そうして巨人族は日夜構わず襲ってくる魔物に対して、ひたすら抵抗を始めた。
地魔術を使ったり、その巨体で押し潰したりと様々な方法を取った。
そうしていくと巨人族の身は傷でボロボロにはなるが、なんとか……なんとか魔物を退けることに成功した。
したように思っていた。
なんとか無限とも思える物量を押し返した巨人族達は、自分たちの住処を奪還した事に喜びあっていた。
しかし、魔物達はそれらに敵わぬと判断するや否や巨人族の集落を諦めて人族の方へと向かった。
本来なら……いつもならばそれ幸いと巨人族は自分達の暮らしを優先させるのだが、彼らのプライドが今回ばかりは許さなかった。
自分たちの怨敵が目標を変えて別のところに行こうと言うのだ。
巨人族は、自分達を襲った敵は自分達でケリをつけたかったのだ。
たしかに今戦って勝てるかは分からない、もしかしたら負けて死んでしまうかもしれない。その相手がかの魔物と同じ扱いをしている人族であっても、それは関係がなかった。
あの魔物の量では人族も勝てるかどうか怪しいものであった。
その物量に押され始めた頃、辺境の町で食い止めているものが居ると話題にあがる。
その時の町の人々はこう語っていた。
『彼ら巨人族が助けてくれたのよ』
『傭兵ギルドのないこの町では戦える人は少ない。そんな時に彼らの存在は大きかった』
『あの巨大であらゆる魔物を殴り飛ばしてるのを見るのは壮観だったわ』
巨人族からしてみれば自分達のプライドを守っただけに過ぎない、だが奇しくも人族は守られてしまったのだ。人族と認めていなかった巨人族に。
それが故意であれたまたまであれ、その事実は覆ることは無かった。
その町の人々はその時から巨人族との交流を始め、噂とは違った種族だということを思い知った。
魔物とは違い言葉が通じ、同じ認識を持つ。ただ大きいだけの人間そのものだった。
違う点と言えば地魔術を扱うところだが、町を救われた人族にとってはそんなもの関係がない。結果としてその力に守られてしまったのだから気にも思うまい。
そしてその町の人々は巨人族は人族だという噂をひたすらに立たせた。
最初こそ反発されていたのだが、その町に来て実際の様子を見た人々からその反発は薄れていった。
そうして長い年月をかけて巨人族は、人族の仲間として受け入れられ始めた。
全ての偏見や思想が収まったとは言えない。
それでも人族の中枢から魔物扱いされなくはなったのだ、これは大きな進歩だった。
やがて時が経つにつれその事を知るものは少なくなり、今や巨人族は大きい人族という認識となるのだ。
────時は戻り選抜大会本戦。
その巨人族と相対するのは、筋肉を鍛えた人族。
その体格は人族としては大きい方で常人なら見上げるほどである。
その人族からみても3倍近い体躯を持つ巨人族を前にして意気揚々としていた。
「おぉ! こうして見ると大きいな! 兄者よ!」
「うむ! 我らの筋肉がどれだけ敵うか試させてもらうとしよう」
チーム『マッソウ』を見下ろす巨人族『ギガント』はその出来上がった筋肉を見て感心していた。
「おいあれ見ろよ。人族のくせしてすげぇ筋肉だぜ?」
「あぁ、あれは我らも楽しめそうだ」
舞台の上で見合う2チームは今か今かと開始の宣言を心待ちにしていた。
レント達参加者は観客席には行けないが選手控え室でリアルタイムで見れるようになっている。
1回戦ということもあり全ての人がその瞬間をしているかの如く唾を飲み込む。
「ふむ、準備はいいようだな。それでは開始といこうか」
レイスターが舞台上に上がった。審判も務めるのだろう。
2チームを交互に見て頷くと、開始の宣言をした。
「それでは第1回戦! 始め!」
その声と同時に「マッソウ」のリーダーを務めるファイが前に出る。
彼ら3人は魔術も使えるが主に近接戦闘が得意らしく、魔術は補助として使っているらしい。
ファイはこの3人の中で1番の年長者らしく2人の兄として振舞っている。
そんな彼の得意とするのは『攻撃』だ。
残り2人より攻撃に秀でた火魔術に鍛え上げられた筋肉。そこから生み出されるパワーは無限大だとか。
「最初にこいつをお見舞してやるぜ」
『火炎烈瞬脚!!』
火の魔術により足を盛大に覆う炎が出現した。
その足を空を蹴るとその炎は龍の如く力強さで巨人族へと放出された。
「いい魔術だ。こちらも少し力を見せよう。アリエス 」
「そうですね。俺が出ましょう」
アリエスと呼ばれた巨人族は2人の壁になるように前に出た。
そして、その力を解放させた。
『│巨岩金剛盾《きょがんこんごうじゅん》』
巨人族の扱う魔術は地属性だ。正確には魔術ではなく神術と言うらしいがそこまで大きな違いはないようだった。
地魔術と言うと魔物のイメージがあるせいで名前が変わっているだけらしい。
その神術は目の前に大きく透明な壁を作り出し、あらゆる攻撃魔術を吸収する。吸収限界はあれど強力な防御手段だ。
「ふんっ、そんなもんっ!」
ファイも負けじとそのまま壁に向かって蹴る、蹴る、蹴る。
しかし、その壁はかなりの硬さを誇るようで傷一つつかない。
「はははっ! この神術は世界最高硬度の物質を作り出す神術だ。生半可な蹴撃では傷一つ付けられんよ」
「うちの弟はなかなかやるだろう? ん?」
守りに徹するならこれほど頼れるものも少ないだろう。突破されない安心は何者に変え難いものだ。
「くっ……兄者! 俺たちと一緒に!」
「あぁ、仕方ない。やるぞウィドー、サンディ」
『攻撃』の要である『蹴撃』のファイに対するは『遊撃』のウィドーと『鉄甲』のサンディ。
ウィドーは影打ちや意識外からの攻撃に長け、サンディはその拳を鉄の如き硬さに変えて敵に向けて叩きつける。
この「マッソウ」は防御という概念はなく、ただひたすらに敵を攻撃する事を是とするチームだった。
「巨人族相手に戦えてかなり有意義な時間ではあるが」
「俺達は上に進まなくちゃいけねぇんだ」
「その道を開けてもらうぜ!! 行くぜ愚弟達よ!」
「うす!」「おう!」
『│蹴拳暗刀《しゅうけんあんとう》・│水死之顎《みなしにのアギト》』
ファイによる炎の蹴撃、ウィドーの風の暗殺術、そしてサンディが繰り出す雷の拳。
それらが作り出すは獣と思しき巨大な顎。
その莫大な魔術はいかに硬度に優れた壁であっても容易に崩すことさえも可能だろう。
実際に巨人族の作り出した壁はその顎により砕かれ、そのまま巨人族へと向けて攻撃は続けられていた。
「やるなぁ! おい、アリエス! カプル!」
「いきますよ?」
「わかってんぜ、兄さん!」
『地神術・│絶碧《ぜっぺき》』
『地神術・│灰獣石《かいじゅうせき》』
アリエスは巨人族きっての『防御』の使い手、あらゆる魔術から仲間を守る鉱石の盾は色々な性質を併せ持つ。
しかし、今回はさらに弟のカプルのサポートとして使用していた。
そのカプルはと言うと人より大きい狼のような石像を作り出していた。
彼はその場にあるもので所謂『ゴーレム』というものを作り出せるのだ。
「兄さんのおかげでかなりいいわんころが出来たぜ」
「まぁまぁだな」
「そんなぁ……ってそろそろ来るぞ」
「あぁ!」とカプルがゴーレムに指示を出すとその狼のゴーレムはアリエスの出した壁その身に吸収した。
これにより硬さが増して、より攻撃を耐えることができる。
「マッソウ」達の攻撃がまさに着弾するぞというその瞬間の出来事であった。
そのゴーレムは果敢にも魔術に飛び込んでいき爆発四散したのだ。
否、爆発したのは魔術の方だ。
ゴーレムは壊れかけてはいるもののまだまだ動くことは可能なようだ。
「兄者……アレ止められたらどーすんだっけ?」
「ぉぉおおおお俺にはわからねぇなぁ!?」
「兄者ぁぁぁぁぁぁ!!」
「マッソウ」達は今の攻撃をまともに受け止められたことにショックを受けてあたふたしていた。
今まであれを防がれたことがなかったのだろう。
「では、今度はこちらから行くぞ」
そう言うと巨人族の1番でかい人……長兄が構えをとる。
巨人族は巨人族と言っても大きさにかなりの差異がある。
アリエスやカプル達みたいに2~3mの者もいれば、今回の長兄のような4mの者、大きい人は2桁まで行く者もいるらしい。
その長兄……バランはこの三兄弟の中で1番攻撃に特化しており、その力はミラとの予選で見た通りだ。
「さて、お前たちとの戦いに感謝を示してこの神術で終わりとさせてもらおう」
「兄者! 俺達に防御って使えたっけ??」
「なに、筋肉が守ってくれるさ」
「そうは言っても兄者! 足が震えてるぜ!?」
そんなこんな一応防御の構えをすると、それに向かって問答無用だとばかりに神術が飛んでくる。
『地神術・│大地烈槍《だいちれっそう》』
バランから扇状に広がるそれは、地面から槍と化した岩を飛び出させる神術だ。
無惨にもそれをまともに食らった「マッソウ」達は、空に打ち上げられてそのまま舞台から落ちてしまった。
「そこまで!」
レイスターが直ちに終わりの宣言を下す。
試合終了のひとつの敗北条件・舞台からの落下だ。
「チーム「マッソウ」! 舞台落下により敗北、よって勝者は「ギガント」!!」
「うおおおおおおおおお!!」
観客席から怒涛の歓声が飛んでくる。
興奮を抑えきれないようだ。
かく言うレントも戦ってみたさでうずうずは止まらない。
「それでは休憩の後、第2回戦を行う。選手はそれまでに舞台にくるように」
ひとまず第1回戦は終わりということで20分のインターバルが始まる。
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