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3、前世の両親と再会しました
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三日後、無理を承知で願えばネヴィアとの面会が叶う。どうやら向こうも途中で退席したセレナを心配していたようだ。
前回の非礼を詫びてから、セレナは何十枚にも渡る紙の束を差し出す。
「こちらを読んでいただけませんか」
「これは?」
「物語です」
緊張に震えながら差し出すと、手にしたネヴィアの瞳が見開かれる。
『王女セレスティーナは海を渡り幸せな結婚生活を送っている』
これはセレスティーナをモデルとした小説だ。ルクレーヌに生まれ、民を慈しみ、愛し愛された王女の物語。
ただし結末は悲劇ではない。異国に嫁いだ王女は幸せな結婚生活を送るというハッピーエンドの物語だ。
ネヴィアはすぐに物語に没頭した。虚ろだった瞳は食い入るように文字を追っている。その間、セレナは緊張のあまり硬直していた。
(だって、誰かに自分の小説を見せるなんて初めてなのよ!)
それも実在する人物をモデルとしている。本人の許可、というより本人が書いているのだが。気分を害する恐れがあると不安にもなるだろう。
それでも伝えたかったのはセレスティーナが幸せだったという想い。生まれ変わったことに意味があるとしたら、それを伝えるためだったのかもしれない。
(そういえば……)
『命を救うことはできないけれど、せめて――』
(あれはこのことを意味していたの?)
どこの誰かは知らないけれど奇跡を起こしてくれたのなら感謝しよう。
そんなことを考えていると、最後のページを読み終えたネヴィアの手が止まる。
「ありがとう。とても素敵な物語だったわ」
顔を上げたネヴィアは涙に濡れた瞳に笑顔を浮かべる。それはルクレーヌの人々が長年求めてきた輝きだ。
「これは貴女が書いたもの?」
「はい。どうしても王妃様にこの物語をお届けしたかったのです」
「そう……。付いてきて、貴女に見せたいものがあるわ」
あとを追えば、城の奥へと向かっているようだ。ネヴィアが戸惑いを見せたのはわずかな間で、何かを決意したように、しっかりとした足取りで場内を進んで行く。
見慣れた景色のあちこちにセレスティーナとして生きた思い出がある。城の構造は今でも完璧に憶えているようで、だからこそ戸惑いを感じていた。
(この先にあるのって……)
目的地に到着したネヴィアの足が止まり、大切そうに取り出した鍵で沈黙する扉を開く。
「どうぞ入って」
セレスティーナだった頃は当たり前に出入りしていた部屋に、セレナは失礼しますと断りを入れて入室した。扉の向こうに広がっていたのは懐かしい光景だ。
(ここは私の、セレスティーナの部屋!)
広く開放的な空間は落ち着いた白の壁紙で統一されている。細部に施された花の模様が目を引き、部屋の中央にあるのはゆったりとした肘掛椅子だ。そこから天井のシャンデリアを見上げると、まるで妖精界にいるように幻想的で、セレスティーナだった頃はそうしてよく夢を見ていた。
棚は本を読むことが好きだったセレスティーナの趣味で埋め尽くされ、日当たりのいい窓辺には読書用のテーブルと椅子が並んでいる。続き部屋の奥には寝室があり、柔らかな寝具が一日の疲れを癒してくれた。
部屋は十五年の歳月を感じさせないほど、あの頃のままだ。今も誰かが生活しているように手入れが行き届いている。
「あの頃のままでしょう。どうしてもね、捨てることができなかったの」
ネヴィアの瞳はセレナを映し、目の前の相手に語りかけている。その眼差しは笑顔を忘れ虚ろだった頃とは違う。はっきりと意思を持ち、美しく輝いていた。
「貴女、セレスティーナね」
穏やかに微笑まれてもセレナは動揺するばかりだ。
「とても信じられないことだというのはわかっているの。でもね、この物語の中にはあの子がいた。まるでセレスティーナが生きているようだったわ。こんなこと、貴女がセレスティーナでなければ説明がつかない」
文章を通じてネヴィアはセレナがセレスティーナであることを感じ取ってくれたのだ。それにと、愛しそうにセレナが紡いだ物語を撫でる。
「貴女とセレスティーナの文章、とてもよく似ているわ」
ネヴィアはセレスティーナの本棚に向かうと、迷いなく本を引き抜いた。
(ん? その棚にあったものは嫁入り前に処分したはずでは?)
それにしては見慣れた装丁だ。重厚な雰囲気を感じさせるが、中身は白紙となっていて、当時セレスティーナの創作ノートとして使っていたものに似ている。
「これはあの子が書いていた詩や小説なのだけど、とても素敵なのよ。貴女も読んでみない?」
美しい笑みとともに差し出された本から目が離せなくなった。
(え……だって、あれは、全部処分して……)
人間、驚きすぎると声が出なくなるらしい。そうしてあとから湧きあがるのは秘密を知られた恐怖だ。
「処分される寸前にね、当時の侍女が気付いてくれたの。これもあの子の思い出だからって、届けてくれたのよ」
(なぜそのまま燃やしてくれなかった!?)
少し前に前世の創作物を惜しんだけれど、やはり灰になっていてほしかった。
「ま、まさか、読ん、読んで!?」
「何度も読み返しているわ」
「いやぁぁぁぁぁ!!」
素早く黒歴史を回収し、人の目から隠す。数秒前は思い出を大切にしてくれて嬉しいと懐かしさを噛みしめていたけれど、今はどうして全て焼き払ってくれなかったのかと恨んだ。
「わ、私は、セレナ・レスタータです。顔も、声だって、王女様とは違います」
色々あって泣きそうなセレナは涙目で訴える。乱心しておきながら無関係を主張しても手遅れだが、これを見られたあとでは誤魔化されてほしいと思う。
しかしセレナが動揺すればするほど、ネヴィアの声は穏やかになっていく。
「そうね、あの子と貴女は似ていない。それなのに不思議でしょう? あの謁見の時、私には貴女と娘の姿が重なって見えた。驚いて取り乱してしまうほどにね。貴女もそうだったのではない?」
そのために流れた涙だったのではと核心を突いてくる。
「セレスティーナ。いいえ、セレナ。名前が変わろうと姿が変わろうと、貴女は私の娘。そんな奇跡があるはずないとわかっていても、貴女が私の娘であると否定できないの」
母の笑顔を前に抑えていた心が溢れる。
名前も姿も変わってしまったけれど、確かにここにはセレスティーナの心がある。
「もう一度娘に逢えた。これは私にとって都合のいい夢? 私が可笑しくなってしまっただけ?」
優しい母は嘘でも構わないと言う。否定という逃げ道まで用意してくれた。それでも娘であればいいと望まずにはいられないのだ。
セレナも覚悟を決める。
「私、願いました。最期に、暗い海の中で」
冷たく暗い海に沈みながら、浮かぶのは家族の顔ばかりだった。優しい民たち。温かな国。もう二度と戻ることのない日々。
「故郷に帰りたい。もう一度、家族に逢いたいと」
セレナはネヴィアの胸に飛び込んだ。必死に訴える声は震え、再会を喜ばずにはいられない。本当はずっと、ここにいると気付いてほしかった。
「お母様!」
「ええ。また逢えて嬉しい」
セレナは黒歴史ごと抱きしめられ、ここが謁見の間ではなくてよかったと心から思う。今生は王妃と伯爵令嬢。ここでなら親子の再会を邪魔されることはない。
セレナは自身がセレスティーナの生まれ変わりであること、先日対面で記憶を取り戻したことを伝える。その間もネヴィアは涙を拭いながら十五年ぶりの再会を喜んでくれた。
前回の非礼を詫びてから、セレナは何十枚にも渡る紙の束を差し出す。
「こちらを読んでいただけませんか」
「これは?」
「物語です」
緊張に震えながら差し出すと、手にしたネヴィアの瞳が見開かれる。
『王女セレスティーナは海を渡り幸せな結婚生活を送っている』
これはセレスティーナをモデルとした小説だ。ルクレーヌに生まれ、民を慈しみ、愛し愛された王女の物語。
ただし結末は悲劇ではない。異国に嫁いだ王女は幸せな結婚生活を送るというハッピーエンドの物語だ。
ネヴィアはすぐに物語に没頭した。虚ろだった瞳は食い入るように文字を追っている。その間、セレナは緊張のあまり硬直していた。
(だって、誰かに自分の小説を見せるなんて初めてなのよ!)
それも実在する人物をモデルとしている。本人の許可、というより本人が書いているのだが。気分を害する恐れがあると不安にもなるだろう。
それでも伝えたかったのはセレスティーナが幸せだったという想い。生まれ変わったことに意味があるとしたら、それを伝えるためだったのかもしれない。
(そういえば……)
『命を救うことはできないけれど、せめて――』
(あれはこのことを意味していたの?)
どこの誰かは知らないけれど奇跡を起こしてくれたのなら感謝しよう。
そんなことを考えていると、最後のページを読み終えたネヴィアの手が止まる。
「ありがとう。とても素敵な物語だったわ」
顔を上げたネヴィアは涙に濡れた瞳に笑顔を浮かべる。それはルクレーヌの人々が長年求めてきた輝きだ。
「これは貴女が書いたもの?」
「はい。どうしても王妃様にこの物語をお届けしたかったのです」
「そう……。付いてきて、貴女に見せたいものがあるわ」
あとを追えば、城の奥へと向かっているようだ。ネヴィアが戸惑いを見せたのはわずかな間で、何かを決意したように、しっかりとした足取りで場内を進んで行く。
見慣れた景色のあちこちにセレスティーナとして生きた思い出がある。城の構造は今でも完璧に憶えているようで、だからこそ戸惑いを感じていた。
(この先にあるのって……)
目的地に到着したネヴィアの足が止まり、大切そうに取り出した鍵で沈黙する扉を開く。
「どうぞ入って」
セレスティーナだった頃は当たり前に出入りしていた部屋に、セレナは失礼しますと断りを入れて入室した。扉の向こうに広がっていたのは懐かしい光景だ。
(ここは私の、セレスティーナの部屋!)
広く開放的な空間は落ち着いた白の壁紙で統一されている。細部に施された花の模様が目を引き、部屋の中央にあるのはゆったりとした肘掛椅子だ。そこから天井のシャンデリアを見上げると、まるで妖精界にいるように幻想的で、セレスティーナだった頃はそうしてよく夢を見ていた。
棚は本を読むことが好きだったセレスティーナの趣味で埋め尽くされ、日当たりのいい窓辺には読書用のテーブルと椅子が並んでいる。続き部屋の奥には寝室があり、柔らかな寝具が一日の疲れを癒してくれた。
部屋は十五年の歳月を感じさせないほど、あの頃のままだ。今も誰かが生活しているように手入れが行き届いている。
「あの頃のままでしょう。どうしてもね、捨てることができなかったの」
ネヴィアの瞳はセレナを映し、目の前の相手に語りかけている。その眼差しは笑顔を忘れ虚ろだった頃とは違う。はっきりと意思を持ち、美しく輝いていた。
「貴女、セレスティーナね」
穏やかに微笑まれてもセレナは動揺するばかりだ。
「とても信じられないことだというのはわかっているの。でもね、この物語の中にはあの子がいた。まるでセレスティーナが生きているようだったわ。こんなこと、貴女がセレスティーナでなければ説明がつかない」
文章を通じてネヴィアはセレナがセレスティーナであることを感じ取ってくれたのだ。それにと、愛しそうにセレナが紡いだ物語を撫でる。
「貴女とセレスティーナの文章、とてもよく似ているわ」
ネヴィアはセレスティーナの本棚に向かうと、迷いなく本を引き抜いた。
(ん? その棚にあったものは嫁入り前に処分したはずでは?)
それにしては見慣れた装丁だ。重厚な雰囲気を感じさせるが、中身は白紙となっていて、当時セレスティーナの創作ノートとして使っていたものに似ている。
「これはあの子が書いていた詩や小説なのだけど、とても素敵なのよ。貴女も読んでみない?」
美しい笑みとともに差し出された本から目が離せなくなった。
(え……だって、あれは、全部処分して……)
人間、驚きすぎると声が出なくなるらしい。そうしてあとから湧きあがるのは秘密を知られた恐怖だ。
「処分される寸前にね、当時の侍女が気付いてくれたの。これもあの子の思い出だからって、届けてくれたのよ」
(なぜそのまま燃やしてくれなかった!?)
少し前に前世の創作物を惜しんだけれど、やはり灰になっていてほしかった。
「ま、まさか、読ん、読んで!?」
「何度も読み返しているわ」
「いやぁぁぁぁぁ!!」
素早く黒歴史を回収し、人の目から隠す。数秒前は思い出を大切にしてくれて嬉しいと懐かしさを噛みしめていたけれど、今はどうして全て焼き払ってくれなかったのかと恨んだ。
「わ、私は、セレナ・レスタータです。顔も、声だって、王女様とは違います」
色々あって泣きそうなセレナは涙目で訴える。乱心しておきながら無関係を主張しても手遅れだが、これを見られたあとでは誤魔化されてほしいと思う。
しかしセレナが動揺すればするほど、ネヴィアの声は穏やかになっていく。
「そうね、あの子と貴女は似ていない。それなのに不思議でしょう? あの謁見の時、私には貴女と娘の姿が重なって見えた。驚いて取り乱してしまうほどにね。貴女もそうだったのではない?」
そのために流れた涙だったのではと核心を突いてくる。
「セレスティーナ。いいえ、セレナ。名前が変わろうと姿が変わろうと、貴女は私の娘。そんな奇跡があるはずないとわかっていても、貴女が私の娘であると否定できないの」
母の笑顔を前に抑えていた心が溢れる。
名前も姿も変わってしまったけれど、確かにここにはセレスティーナの心がある。
「もう一度娘に逢えた。これは私にとって都合のいい夢? 私が可笑しくなってしまっただけ?」
優しい母は嘘でも構わないと言う。否定という逃げ道まで用意してくれた。それでも娘であればいいと望まずにはいられないのだ。
セレナも覚悟を決める。
「私、願いました。最期に、暗い海の中で」
冷たく暗い海に沈みながら、浮かぶのは家族の顔ばかりだった。優しい民たち。温かな国。もう二度と戻ることのない日々。
「故郷に帰りたい。もう一度、家族に逢いたいと」
セレナはネヴィアの胸に飛び込んだ。必死に訴える声は震え、再会を喜ばずにはいられない。本当はずっと、ここにいると気付いてほしかった。
「お母様!」
「ええ。また逢えて嬉しい」
セレナは黒歴史ごと抱きしめられ、ここが謁見の間ではなくてよかったと心から思う。今生は王妃と伯爵令嬢。ここでなら親子の再会を邪魔されることはない。
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