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第三話 着火マンは薬草採りをする
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「いくぞ、ハカセ遅れるなっ」
子供はドドドと走るので齢二十二の私も小走りでついて行くこととなる。
街の正門でギルドカードを門番さんに見せて通っていく。
私も冒険者カードを門番さんに見せた。
「あんたは良い大人なのにF級(仮)なのかい? はい通っていいよ」
「ありがとうございます」
そのまま銀のグリフォン団の四人は草原に駆け込むのか、と思ったら門の近くの屋台に飛びこんだ。
「ハカセ、昼食を買っていくぞ」
「そうなのか」
「お前は初入団員なので、俺が奢ってやんよっ」
「ありがとう」
満面の笑顔でフロルはおばちゃんから焼肉パンを二つ買い、私に一つ渡してきた。
なんだかフロルはリーダーらしく良い奴だな。
そのまま、子供達はでででと走って草原に分け行っていく。
私も焼肉パンの袋を持ったまま小走りで付いて行く。
「じゃあここで三時まで薬草採取な、スライムが出たら大声を出す事、もしも狼がでたら全速力で街に逃げろ、いいな」
「「「了解!」」」
「了解した。狼は良く出るのか?」
「出た事無いけど、念の為だよ」
おー、良いリーダーしてるね。
早速薬草を採るかなと思ったら子供達は草原に座り込んでお昼ご飯を食べ始めた。
私も岩の上に座って焼肉パンをかじった。
おお、まだほんのり暖かくて美味しいな。
「美味いだろうハカセ、あそこの屋台は穴場なんだぜ」
「これは良いね、味付けも美味しい」
「ハカセは貴族なんだろ、口に合うの?」
盗賊のチョリソがソーセージパンを噛みながら聞いて来た。
「もう勘当されてしまったから平民だよ、それに貴族だからって美味しい物ばかり食べている訳じゃないさ」
「博士号まで取ったのに、勘当されたのかあ、何したんだ?」
「やめろチョリソ、聞いてやるなよ」
「そ、そうかごめんハカセ」
「いや良いよ、うちは魔導伯爵家だったのに、攻撃魔法を覚えなかったから父が怒ってね、勘当されちゃった」
ちびっ子達は目を丸くして、おおとつぶやいた。
「そりゃ、魔法騎士の元締めの家だとしょうが無いかもなあ、どうして覚えなかったんだい?」
「アセット魔法は覚えてもあまり使い道無いしね、戦闘しかできないから」
「アセット?」
「色々な魔法要素を一つにして登録してある魔法をアセット魔法って言うんだよ。私が唯一使える【着火】もアセット魔法だよ」
「【着火】だったら俺も使えるぜっ」
「私もー」
フロルと僧侶のラトカが同時に【着火】と詠唱し、手の平の上に小さな炎を出した。
これは生活魔法とも言われ、基本的に焚き火の種火とかに使われる魔法だ。
「そうそう、それが零階層のアセット魔法だよ、火属性の【着火】、水属性の【水出】、土属性の【穴掘】、風属性の【涼風】、光属性の【灯】、闇属性の【眠】 があって、だれでも使えるね」
「おかーさんに習ったー」
「俺は爺ちゃんだっ」
基本的にアセット魔法の零階層は家族に習う物だよね。
私は乳母に習ったのだけれど。
「ハカセ~、大学の魔法使いって、すごい階層の魔法を覚えて冒険するんじゃないの?」
「ええとね、大学の魔法使いさんたちは、魔物と戦うのも、戦争で戦うのも嫌なので、アセット魔法は覚えずに、小さい魔法を自分で作って、いろいろな仕事を開発しているんだ」
「小さい魔法?」
「そう、生に近い少ない魔力で、畑に肥料を発生させたり、反射炉を作って鉱石を溶かしたりね、産業に近いみんなの幸せに役に立つ魔法を開発したりしてるんだよ」
四人のちびっ子冒険者は酸っぱい顔をした。
「……なんか地味だな」
「攻撃魔法じゃないと魔法使いっぽくない」
「大学の魔法使いは駄目魔法使いだわ」
「ほら、大学の魔法使いってお貴族さま出身の人が多いからさ」
ああ、何と言うか良くある庶民の偏見だなあ。
英雄的に魔法を使って冒険の旅をする魔法使いの像が民衆の楽しむ物語とかで多いからねえ。
大学で研究している魔法使いさんたちの物語はあまり面白くないしね。
魔法の専門家であるべき魔導伯爵家の父でさえ、同じ偏見だったしなあ。
だけど地味な研究は大事なんだぞ。
「ハカセは大学に戻れないの?」
「戻れるけど、ちょっと調べたい事があってね」
「何を調べるの~、ハカセ~」
「アセット魔法の仕組みをね」
ちびっ子達がまた酢を飲んだような顔になった。
「そうか」
「がんばってね」
「さすが研究者、なんの役に立つか解らない研究を嬉々としてやるんだ」
「ハカセは浮世離れしているわね~」
うん、ちびっ子たちにはアセット魔法の研究の意義についてピンとこないようだ。
「アセット魔法って誰が作ったの~?」
「良い質問だね、エリシアくん、アセット魔法の成立は今から三千年前、太古魔法文明の元で成立されたと考えられているんだ」
「すげー」
「そんな大昔からあるのね~」
「つーか学者さんて暇だよなあ」
興味なさそうな相づちを打って、子供達は立ち上がり、膝を叩いてパン屑を落とした。
「さあ、薬草を採るぞ~」
「「「「はーい」」」」
フロルの号令でちびっ子達は別れて薬草を摘み始めた。
私も腰をかがめて薬草を探す。
学生時代は錬金術の実習もやっていたから薬草採りは経験がある。
この草原の薬草は魔力が高くて品質がよさそうだね。
迷宮から魔力が漏れ出してくる関係で、近所の森とか草原には特殊な植物が生える事が多いんだ。
その分魔物も発生するんだけど、この草原だと遠くでスライムが何匹か跳ねているぐらいでわりと平和みたいだ。
「ハカセは薬草を採るの上手いね」
「ありがとう、大学でやってたからね」
僧侶のラトカが声を掛けてきた。
彼女の持つ袋にも薬草が沢山入っている。
うん、切り口も良いし、ラトカも上手に採るね。
「薬草とり結構好きなの、煮詰められてポーションになって冒険者の役に立つと思うと嬉しいのよ」
ああ、良い子だねえ。
とても僧侶っぽい、教会の子供かな。
「ハカセ~、大丈夫か~、ちゃんと採れてるか~」
フロルが袋をぶらぶらさせながら寄ってきた。
「きちんと採ってるよ団長」
「お、なかなか上手いな、すごいぞハカセ」
「ありがとう」
私が微笑むとフロルも吊られたように笑った。
「きゃああああっ!!」
エリシアの悲鳴が聞こえてきた。
「どうしたっ!!」
「く、熊ーっ!!」
エリシアの指さす方を見ると、確かに大きな熊が林からのっそりと姿を見せていた。
「なっ、ハンターベアじゃんか、どうしてこんな所にっ!」
草原には他の人影は無かった。
大熊はこちらを目がけて疾走してくる。
な、なんでだ?
「みんな街に逃げろっ!!」
フロルが大声で皆に命令を下した。
子供はドドドと走るので齢二十二の私も小走りでついて行くこととなる。
街の正門でギルドカードを門番さんに見せて通っていく。
私も冒険者カードを門番さんに見せた。
「あんたは良い大人なのにF級(仮)なのかい? はい通っていいよ」
「ありがとうございます」
そのまま銀のグリフォン団の四人は草原に駆け込むのか、と思ったら門の近くの屋台に飛びこんだ。
「ハカセ、昼食を買っていくぞ」
「そうなのか」
「お前は初入団員なので、俺が奢ってやんよっ」
「ありがとう」
満面の笑顔でフロルはおばちゃんから焼肉パンを二つ買い、私に一つ渡してきた。
なんだかフロルはリーダーらしく良い奴だな。
そのまま、子供達はでででと走って草原に分け行っていく。
私も焼肉パンの袋を持ったまま小走りで付いて行く。
「じゃあここで三時まで薬草採取な、スライムが出たら大声を出す事、もしも狼がでたら全速力で街に逃げろ、いいな」
「「「了解!」」」
「了解した。狼は良く出るのか?」
「出た事無いけど、念の為だよ」
おー、良いリーダーしてるね。
早速薬草を採るかなと思ったら子供達は草原に座り込んでお昼ご飯を食べ始めた。
私も岩の上に座って焼肉パンをかじった。
おお、まだほんのり暖かくて美味しいな。
「美味いだろうハカセ、あそこの屋台は穴場なんだぜ」
「これは良いね、味付けも美味しい」
「ハカセは貴族なんだろ、口に合うの?」
盗賊のチョリソがソーセージパンを噛みながら聞いて来た。
「もう勘当されてしまったから平民だよ、それに貴族だからって美味しい物ばかり食べている訳じゃないさ」
「博士号まで取ったのに、勘当されたのかあ、何したんだ?」
「やめろチョリソ、聞いてやるなよ」
「そ、そうかごめんハカセ」
「いや良いよ、うちは魔導伯爵家だったのに、攻撃魔法を覚えなかったから父が怒ってね、勘当されちゃった」
ちびっ子達は目を丸くして、おおとつぶやいた。
「そりゃ、魔法騎士の元締めの家だとしょうが無いかもなあ、どうして覚えなかったんだい?」
「アセット魔法は覚えてもあまり使い道無いしね、戦闘しかできないから」
「アセット?」
「色々な魔法要素を一つにして登録してある魔法をアセット魔法って言うんだよ。私が唯一使える【着火】もアセット魔法だよ」
「【着火】だったら俺も使えるぜっ」
「私もー」
フロルと僧侶のラトカが同時に【着火】と詠唱し、手の平の上に小さな炎を出した。
これは生活魔法とも言われ、基本的に焚き火の種火とかに使われる魔法だ。
「そうそう、それが零階層のアセット魔法だよ、火属性の【着火】、水属性の【水出】、土属性の【穴掘】、風属性の【涼風】、光属性の【灯】、闇属性の【眠】 があって、だれでも使えるね」
「おかーさんに習ったー」
「俺は爺ちゃんだっ」
基本的にアセット魔法の零階層は家族に習う物だよね。
私は乳母に習ったのだけれど。
「ハカセ~、大学の魔法使いって、すごい階層の魔法を覚えて冒険するんじゃないの?」
「ええとね、大学の魔法使いさんたちは、魔物と戦うのも、戦争で戦うのも嫌なので、アセット魔法は覚えずに、小さい魔法を自分で作って、いろいろな仕事を開発しているんだ」
「小さい魔法?」
「そう、生に近い少ない魔力で、畑に肥料を発生させたり、反射炉を作って鉱石を溶かしたりね、産業に近いみんなの幸せに役に立つ魔法を開発したりしてるんだよ」
四人のちびっ子冒険者は酸っぱい顔をした。
「……なんか地味だな」
「攻撃魔法じゃないと魔法使いっぽくない」
「大学の魔法使いは駄目魔法使いだわ」
「ほら、大学の魔法使いってお貴族さま出身の人が多いからさ」
ああ、何と言うか良くある庶民の偏見だなあ。
英雄的に魔法を使って冒険の旅をする魔法使いの像が民衆の楽しむ物語とかで多いからねえ。
大学で研究している魔法使いさんたちの物語はあまり面白くないしね。
魔法の専門家であるべき魔導伯爵家の父でさえ、同じ偏見だったしなあ。
だけど地味な研究は大事なんだぞ。
「ハカセは大学に戻れないの?」
「戻れるけど、ちょっと調べたい事があってね」
「何を調べるの~、ハカセ~」
「アセット魔法の仕組みをね」
ちびっ子達がまた酢を飲んだような顔になった。
「そうか」
「がんばってね」
「さすが研究者、なんの役に立つか解らない研究を嬉々としてやるんだ」
「ハカセは浮世離れしているわね~」
うん、ちびっ子たちにはアセット魔法の研究の意義についてピンとこないようだ。
「アセット魔法って誰が作ったの~?」
「良い質問だね、エリシアくん、アセット魔法の成立は今から三千年前、太古魔法文明の元で成立されたと考えられているんだ」
「すげー」
「そんな大昔からあるのね~」
「つーか学者さんて暇だよなあ」
興味なさそうな相づちを打って、子供達は立ち上がり、膝を叩いてパン屑を落とした。
「さあ、薬草を採るぞ~」
「「「「はーい」」」」
フロルの号令でちびっ子達は別れて薬草を摘み始めた。
私も腰をかがめて薬草を探す。
学生時代は錬金術の実習もやっていたから薬草採りは経験がある。
この草原の薬草は魔力が高くて品質がよさそうだね。
迷宮から魔力が漏れ出してくる関係で、近所の森とか草原には特殊な植物が生える事が多いんだ。
その分魔物も発生するんだけど、この草原だと遠くでスライムが何匹か跳ねているぐらいでわりと平和みたいだ。
「ハカセは薬草を採るの上手いね」
「ありがとう、大学でやってたからね」
僧侶のラトカが声を掛けてきた。
彼女の持つ袋にも薬草が沢山入っている。
うん、切り口も良いし、ラトカも上手に採るね。
「薬草とり結構好きなの、煮詰められてポーションになって冒険者の役に立つと思うと嬉しいのよ」
ああ、良い子だねえ。
とても僧侶っぽい、教会の子供かな。
「ハカセ~、大丈夫か~、ちゃんと採れてるか~」
フロルが袋をぶらぶらさせながら寄ってきた。
「きちんと採ってるよ団長」
「お、なかなか上手いな、すごいぞハカセ」
「ありがとう」
私が微笑むとフロルも吊られたように笑った。
「きゃああああっ!!」
エリシアの悲鳴が聞こえてきた。
「どうしたっ!!」
「く、熊ーっ!!」
エリシアの指さす方を見ると、確かに大きな熊が林からのっそりと姿を見せていた。
「なっ、ハンターベアじゃんか、どうしてこんな所にっ!」
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