無敵の【着火】マン ~出来損ないと魔導伯爵家を追放された私なんだが、しかたがないので唯一の攻撃魔法【着火】で迷宮都市で成り上がる~

川獺右端

文字の大きさ
12 / 47

第10話 【着火】マンは侯爵軍を撃退する

しおりを挟む
 ガキンガンガンと剣と剣が打ち合わされる。
 ペネロペとウゴリーノさんが超高速で打ち合いをしている。
 なんというか……、もの凄く綺麗な動きだ。
 凄いな鉄拳令嬢、S級冒険者と互角に戦っているぞ。

「おーう、なかなか強いな」
「くくく、ありがとう、あんたもな」

 踏み込み、跳ね返し、回転し、切り結んでいる。

「私のマレンツ博士を返せ~~っ!!」

 ウジェニーさんが地獄の底からのような声を出して詠唱を始めた。

『大地の動く力に仮託された不可視の衝撃を我が敵に与えたまえ』
「いけない、土風属性混合第三階層! 『雷光嵐』ライトニングストーム!!」

 レイラさんが詠唱を読み取って味方に声をかけた。

「矢だ、矢で射貫けっ!!」

 アルモンド侯爵が弓隊に号令した。
 ウジェニーさんが危ないっ!

【着火】ティソダー!!」

 弓隊の前の地面に【着火】ティンダーを掛ける。
 ズドンと立ち上がった青い火柱に、うおおと声を上げて弓隊はびびった。

 そこへ、ウジェニーさんが雷の塊を投げつける。

 バリバリバリバリ!!

「「「「うぎゃあああっ」」」」

 電撃に撃たれ弓隊がバタバタと倒れていく。

「ぎょああ」

 私も地面を伝った雷に撃たれ、足に激痛が走った。
 効果範囲から外れているのに何と言う威力か。
 そしてこれが『雷光嵐』ライトニングストーム
 生まれて初めて食らったぞ。
 とても痛い。

「私からマレンツ博士を奪おうとする奴らは全員、殺す!!」

 すごい形相でウジェニーさんは侯爵を睨んだ。
 こ、こわい。

「くそう、たかが冒険者が、貴族を舐めおって、貴族を舐めた奴は、殺すっ!!」

 迷宮都市側と、侯爵軍側の間で殺気が溜まり空気が重く沈んで行く。
 これは困った、人死にが出るぞ。

 殺伐とした雰囲気に関わらず、脳筋令嬢と脳筋冒険者は楽しそうにガンガンと剣を交わしていた。

 よし、もう、焼こう。
 うん、それが良い。

【着火】ティソダー

 ズドム!

【着火】ティソダー

 ズドム!

【着火】ティソダー

 ズドム!

「……」
「……」
「……」
「……」

「おー、あれが博士の【着火】か」
「ウゴリーノ、貴様っ!! 真面目にやれっ!!」

 暢気なのは脳筋組だけであった。
 他の人間は皆、私の撃った【着火】ティンダーの効果に黙り込んだ。

 軍隊の物資を焼いてやったぞ。
 部隊が動く時は食糧や代えの武器を荷馬車に積んで後方に置いておく。
 これがやられると軍隊の力は半減するってわけさ。
 【着火】ティンダーに吹っ飛ばされた幌馬車の残骸が三台、轟々と音を立てて燃えていた。

「侯爵閣下も焼かれたいですか?」
「ぐ、ぐぐぐっ」
「やったぜっ!! さすがは【着火】マンだっ!! 筋が通ってるぜっ!!」
「【着火】マン、【着火】マン!!」
「【着火】マン万歳~~!!」

 銀のグリフォン団のメンバーが私を讃えてくれた。

「く、くそう、これで勝ったと思うなよっ! ギルドマスターよ、また来るからなっ、全軍、ペトラガルドへ引くぞっ!!」
「「「「はっ」」」」

 軍隊が頭を返して街道を退いていった。

 ペネロペが剣を引きこちらに向かって歩いて来た。
 すかさずウジェニーさんが取られまいとするように私の腕を取って密着した。

「マレンツ、お前が気に入った、我が婿となれ、一緒に領都もり立てようぞ」
「そそそそ、そんなのは駄目ですっ」
「お前には言ってない、行き遅れめ」
「あ、あんたも同い年でしょうにっ!!」
「私は私より強い男が居なかったので婚姻をしなかっただけだ」
「わ、私だって私より頭が良い男性がいなかったから婚姻しなかっただけですからねっ」

 なんだか、双方、残念女子の気がするなあ。
 見目麗しいのに、性格に難があるね。

「私はいま、研究に忙しいので、結婚は考えてませんね」
「何……!! ふ、振られた……!!」
「そんなあ~~~」

 いや、君たちは、なぜあのプロポーズで了承されると思ったのか。

「俺は独身だぞ、ペネロペ」

 ウゴリーノの言葉にペネロペは嫌そうな視線を向けた。

「お前は戦うのは楽しいが、領都は発展しない、却下だ」
「なにいっ!!」

 ペネロペは軍馬に跨がり片手を上げた。

「では、また来る、首を洗って待っていろマレンツ」

 彼女は軍馬に拍車を入れて撤退していく侯爵軍を追っていった。

 はあ、何とかなったな。

「ペネロペか、良い女だな、へへへ」
「もう、ウゴリーノの女好きっ」

 私の腕を取ったまま、ウジェニーさんが偉丈夫に毒づいた。

「ありがとう、助かりました」
「おう、俺は『黄金の禿鷹』の重戦士タンク、ウゴリーノだ。うちのウジェニーが迷惑をかけてるな、先生」
「いえいえ、ウジェニーさんにはお世話になってます。魔法学者のマレンツです」
「よろしくなっ」

 私はウゴリーノさんと握手を交わした。
 がっちりとした力強い手であった。

「ほわー、ウゴリーノ師匠だ、うはー」

 フロルがウゴリーノさんを憧れの目で見ていた。

「坊主も頑張ったな」
「あ、ありがとうございますっ、師匠!!」
「よせやいっ、がははっ」

 ウゴリーノさんは気持ちの良い好漢のようだな。
 というか、暑苦しいのでウジェニーさんは離れてくれないかな。

「あぶなかったですね、マレンツさん」
「レイラさんもありがとうございました」
「いえ、糧秣を焼いて頂いて助かりました、視界の中なら自由になんでも焼ける【着火】ティンダーはやはり凄いですね」
「いえ、故事に【着火】ティンダーで糧秣を焼く事例がありまして、思いだしただけです」

 まあ、ゴサンゴの戦いでは、糧秣に油を撒いてからの、普通の【着火】ティンダーだったけどね
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

処理中です...