無敵の【着火】マン ~出来損ないと魔導伯爵家を追放された私なんだが、しかたがないので唯一の攻撃魔法【着火】で迷宮都市で成り上がる~

川獺右端

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第17話 【着火】マンは新衣装を褒められる

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 新しい服で銀のグリフォン団に連れられて、装具屋や武器防具屋を回った。
 冒険者用の道具を色々と揃える。
 熊の臨時収入があって良かったな。

 新しい赤いリュック、ロープとクサビとハンマー、水筒、などなど。
 私はアセット魔法を使わないので、誘導の為の杖やロッドは必要が無い、一応護身用に大型のナイフを一本買った。
 みんな小さいのに冒険者なので、装備や道具に詳しい。
 色々と教わった。

「あ”あ”あ”、かかかか、格好いいですねっ、マレンツ博士っ!!」

 街でウジェニーさんに見つかってしまった。
 新衣装を気に入ってくれたみたいだ。

「ありがとう、派手じゃないかな?」

 ウジェニーさんは首がちぎれる勢いで横に振った。

「格好いいですっ、素敵です、大丈夫です、冒険者なんて目立ってなんぼですから。あーあー、なんだか素敵すぎて胸が苦しいですよう」

 ありがとう、でも興奮して密着してこないでね。
 なんだか、圧が凄いし。

「ウジェねえちゃんは何してんだー?」
「ぶらぶらしてたよう、明日までお休みなんだー」
「明日からダンジョンアタックですか?」
「そうなのー、深い所まで潜るから一週間ぐらい穴蔵暮らしなの」

 仕事とはいえ、魔物がうろつく迷宮で一週間は大変だなあ。
 迷宮深部のアタックは垂直の旅な感じだね。

「気を付けて行って来て下さい」
「うん、がんばりますようっ。か、帰って来たらデートしてください、それを心の支えにして頑張りますのでっ」
「良いですよ、お芝居でも行きましょうか」
「ぴゃーっ!! ほほほ、本当ですよっ!! か、必ず帰って来ますからっ!! 絶対ですよっ!!」

 ああもう、逆上してなんだか演劇の中で、戦争で死んでしまう仲間みたいになっているね。

「はい、ですから安全に気を付けていってらっしゃい」
「は、はいっ、がんばりましゅっ!!」

 盛大に噛んで顔を真っ赤にしてウジェニーさんは駆けていった。

「ハカセはやり手だわ」
「イケメンの余裕を感じるぜ」
「そ、そんな事は無いよ」
「ハカセはウジェニーさんの事どう思ってるのー」
「なんだか可愛い人だなあって思ってますよ」

 女の子二人がキャーっと悲鳴を上げて喜んだ。
 小さい頃から女の子は恋のお話が好きだね。

「ハカセは筋が通ってるからな、モテモテだぜ」
「ウジェニーさんと鉄拳令嬢か……、俺はあんまりうらやましく無いな」
「ま、まあ、そう言ってやるなよ」

 フロルがチョリソーをたしなめた。

 楽しい日曜日はあっという間に過ぎていく。
 空がだんだん暗くなり西の方が赤くなっていく。

「そいじゃ、また明日な、ハカセ」
「お母さんが今度、ご飯を食べに来てって言ってたよ」
「俺んちも、かーちゃんがご馳走作るって」
「そんな、悪いよ」
「悪く無いよう、ハカセが居なかったら命がなかったかもだから、みんな感謝してるのよ」
「そうだぜっ、うちの親父も挨拶に来るってさ」

 団員の家族にも挨拶しておいた方が良いかな。
 子供の事だから、私の人柄を見ないと心配だろうしね。

「じゃあ、来週にお伺いします、って伝えておいて」
「わかった、伝えておくよー」

 銀のグリフォン団のメンバーは手を振って家に帰っていった。

 楽しい日曜日だったな。
 そう思って私は冒険者ギルドに入った。

「わあっ」
「な、なんですかレイラさん」
「格好いいですね、一発屋ですか?」
「良くわかりますね」
「迷宮都市名物のお店ですから。なんだか、熟練冒険者って感じになりましたね」

 レイラさんにも一発屋の服は好評のようだ。

「おお、【着火】マンが冒険者な格好になったぜっ」
「おお、地味な服やめたんだな、仲間になった、って感じがするぜ」
「イケメンだから良く似合ってんな」

 酒場で飲んだくれているベテラン冒険者に寸評されてしまった。
 そうか、冒険者の格好というのもあるんだな。
 それらしい格好をすると仲間に入った感じなのか。
 人の所属意識みたいな感じだな。
 面白いね。
 フロルたちが服を買えと言ったのは、そういう目的もあったんだろうな。
 良い子たちだ。

「よお、【着火】マン飲まねえか?」
「ちょっとだけでしたら」
「そうこなくっちゃな、おらゴメス詰めろ詰めろ」
「おうよ、よろしくな【着火】マン」

 ベテランのおじさん四人組パーティのようだ。

「どうして、このギルドでは、私に絡む人が居ないんですか?」

 読み本などでは、冒険者ギルドに初めて入った男はハゲで筋肉のオヤジに絡まれるのが定番だったのに、なんだか迷宮都市の冒険者はあっさり私を受け入れてくれて、それが不思議だったのだ。

「そりゃあ、おめえ、なあ」
「【着火】マンはおめえ、子供に優しいからなあ」
「余所から来た馬鹿はたいてい子供冒険者を虐めるのよ、他の街にはあまり無いからな」
「そうなんですか」
「何代か前のギルマスが始めたんだよ、冒険者は育てないとってな。で、薬草採りさせてんだが、ほら、冒険者って余裕がない奴とか居るだろ、良く喧嘩になってアルバーノさんにつまみ出されたりすんのよ」

 フロルたちも大変なんだなあ。

「フロルがさあ、あんたに蹴りを入れた時に、みんな思ったさ、ああ、貴族のボンボンを蹴りやがった、揉めるぞってな」
「したらまあ、なんだ、あんたはニコニコ笑ってさ、フロルに話しかけてよう。ああ、この人は良い貴族なんだなって一発で解ったよ」
「ああ、それでなんですか」
「そうさあ、それで子供を守ってハンターベアを討ち取った、あんたはもうこのギルドの仲間なんだぜ」
「そうそう、仲良くしてくれや」
「わかんないことや、困った事があったら言ってくれな」
「はい、よろしくおねがいいたします」

 ああ、なんだかとても嬉しいな。
 そうか、銀のグリフォン団のお陰で私はゼラビス大迷宮ギルドに受け入れられたんだ。
 幸運だったんだなあ。
 そう思いながら私はエールをすすった。
 ……、酒は水っぽいな。
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