無敵の【着火】マン ~出来損ないと魔導伯爵家を追放された私なんだが、しかたがないので唯一の攻撃魔法【着火】で迷宮都市で成り上がる~

川獺右端

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第24話 【着火】マンはE級の本当の意味を知る

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 ペネロペが掲示板の前で腕組みをして依頼票を見ていた。

「E級の依頼は、ドブ掃除とか、荷物の配達とかばかりだな。ギルマス、討伐依頼はないのか、ゴブリンの首ならいくらでも取ってこれるぞ」
「ありません、E級は基本的に街の雑用です。あと、薬草採りも大人は出来なくなりました。マレンツ博士は特例です」
「薬草採りも、ちまちましていて気が進まないな。これらは依頼を受けて執事とかに任せても良いのか?」
「駄目です、あくまで本人の作業となります」

「アルモンド侯爵領に冒険者ギルドは無かったのかい?」
「あ、ああ、魔物狩りは良く行ったが冒険者登録はしていなかったんだ。自領なら無理を言って等級を上げて貰ったのだがな」

 冒険者ギルドは国際的な組織だから、余所の街の冒険者ギルドで発行されたギルドカードの等級はゼラビス大迷宮でも使える。
 基本的なルールは世界共通なのだが、各街によって冒険者ギルドの規約は微妙に違う。
 ゼラピスのギルドは他の街に比べると、ちょっと厳しい感じだね。

「文句がありましたら、余所の街で昇級なさってください」
「しょうがねえなあ」

 さて、こちらは薬草の納品も終わったので二回目に行くか。

「先生、よろしかったらランチをご一緒しませんか?」

 リネット王女が昼食に誘ってきた。

「いえ、これから二回目の薬草採取なので、お気持ちだけ」

 王女様と一緒となると、迷宮都市の一番のホテルのレストランとかに連れて行かれてしまうからね。
 フロルたちと一緒に焼肉パンを食べていたほうが楽しい。

「あらそう……」

 リネット王女は寂しそうだ。

「ではまた、晩餐はどちらで取っていらっしゃるの?」
「主に酒場ですね」
「朝から晩までここなんですのね」
「学者なんざ、食事は楽しみじゃあ無いのさ」

 失礼な、私だって美味しい物は好きだぞ。
 ただ、四六時中同じ食事でも苦にならないだけだ。

 王女と別れを告げて冒険者ギルドを後にしたら、ペネロペが付いて来た。

「また草原に付いてくんのか、ペネねえちゃん」
「いや、ちょっとE級の仕事を見に行く。楽でポイントが高い仕事をするつもりだ」
「お、偵察とは意外にマメだね、ペネロペねえちゃん」
「狩りに行くなら獲物の事を知らないとな」
「ドブ掃除は獲物じゃないけどね~」

 ギルド前から坂を下りていくと、大きめの側溝でドブさらいをしている冒険者がいた。
 体の半分を側溝に入れてスコップでドロをすくっている。
 大変だなあ。

「お、ちょうど……、なんだ流星じゃん」
「な、なんだクソガキどもっ!」
「真面目にドブさらいしてんだな、えらいえらい」
「うるせえっ、やらないと街を追い出すってアルバーノさんに言われたからなあっ、しょうがねえんだっ!」

 流星はスコップを使い、泥まみれになってドブ掃除をしていた。

「お前、スコップ使いの方が堂にいってんな」
「ああ、まあな」

 流星の元の職業は農民かな、鉱夫かもしれないな。
 故郷を捨てて、迷宮都市に一旗揚げに来たんだろうなあ。

 ドブに面した家から太ったおばちゃんが出てきた。

「お疲れ様、もうお昼だから、コレたべなさいよ」

 そういっておばちゃんは流星に包みを差し出した。

「な、なんだよこれ?」
「つまんないパンだけど、食べなさい」
「……、ど、どうしてだよ」

 おばさんはふんわりと笑った。

「私はね、冒険者の人がE級の依頼をしているのを見るのが好きなのよ。ああ、街の為に頑張ってくれてるなあって、ありがたいなあって思ってね、だからお礼よ」
「あ、ありがとうっす」

 流星は側溝から出てきて【出水】の魔法で手と足をざっと洗い、パンを受け取って食べ始めた。

「うめえ……」
「そう、良かったわ、E級の人は誰もお腹を空かせているからね」

 流星は味わってパンを食べていた。
 ちょっと涙ぐんでいる。

「今は辛いけど、迷宮に入れるようになったら稼げるからがんばりなさい。迷宮の中で辛いことがあっても、ここがあなたの居場所なんだから、必ず帰ってらっしゃい、いいわね」
「は、はい」

 流星は顔をゆがめてポロポロと泣いた。

「なるほどなあ、流民を都市へ帰属させる為か」

 ペネロペがつぶやいた。
 そうか、根無し草の冒険者が、この街の人間の役に立っているって解らせる為のE級の仕事なのか。
 良く出来てるなあ。

「ありがとうおばさん、ありがとう」
「良いのよ、がんばってね」

 おばさんは家に帰っていった。

「俺は故郷でも、こんな優しい言葉を掛けて貰った事ねえよ……」
「冒険者は助け合いだし、この都市の市民はみんな冒険者のお陰で食べてるからな、みんな優しいぜ」
「俺は間違ってたぜ、おばさんが悲しまないように、真面目に働くぜ」

 流星は側溝に戻り、猛然とドブさらいを始めた。

「おお、何だこりゃ」

 側溝に壊れた手押し車が落ちて流れをせき止めていた。

「くっそ重いっ」
「手伝おう」

 私は手押し車の残骸に近づいた。

「げえっ、ハカセ、服を汚したら一発屋が泣くぞ」
「いや、手押し車を分解するだけさ、【着火】ティソダー

 ズドン!

 【着火】ティンダーを撃って手押し車をバラバラにした。

「おお、ありがてえっ、助かるぜハカセ」
「うん、がんばれよ流星」
「おう、俺はがんばるぜっ!」

 手押し車の残骸を片付ける流星に手を振って、私たちは坂を下りきった。

「で、ペネロペはドブ掃除するのかい?」
「やらねえよ、臭いのに。配達か、道路工事かな」
「ペネちゃんはご令嬢なのに大変よね」
「ははは、エリシア、そう言うな、生まれてからこっち令嬢らしい事なんか一つもしてねえし」

 なんだか知らないけど、女性陣とペネロペが仲良くなっているな。
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