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第1章 妹と新学期

第6話 妹はウドンと戦う

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 剣の素振り中に先生と鉢合わせた。

なんでここに来るんだよ!しかもこのタイミングで!

剣の素振りはかなり汗をかく、よって上半身裸である。

しかもニヤニヤと見てくる。何が楽しいんだよ。

そろそろ恥ずかしくなってきた。

でも先生はやめない。

「その剣かっこいいね国宝?」

なんて聞いてきた。国宝であっているが何故分かったんだ?

”人の軌跡”には武器の情報は乗ってないはずなんだが…

そういえば先生は何の武器を使っているんだろう。

俺の剣の価値が分かるってことは剣なのか?

まだまだ見るのをやめる気配がないので俺は聞く。

「……先生はどんな武器を使うんですか?」


      ◆◆◆


 みんなには先に教えてしまおう。

わたしは刀を使うよ。親友のくれた刀をね。

ヒノモトノクニだけのはずの刀をなんでかアリシアがくれたんだ。

それ以来ずっと使ってる。

それなりに心得はある方だと思うよ。

「えっとね、刀だよ」

そう言うとファルカは、

「あの鎖国しているヒノモトノクニのか?どうして持ってるんだ?」

「ファルカくん。先生には敬語を使いなさい。」

「は、はぁ…」

「アリシアがくれたんだ~なんでなのかは知らないけどね」

「見てみたい…」

ファルカはこぼすように言う。

まぁ見せても減るもんじゃないし見せようか。

「良いよ」

わたしは空間収納から刀を取り出す。

白と青で統一された束に、美しい白の刃渡り。

わたしの愛刀が出てくる。

「すごい…これ、国宝級だぞ…」

知らんけどファルカがそう言うならそうなんじゃない?

だってこの子、王子様だし。

「名前はついているのか?」

お、興味ある?かっくいい名前だよ?

「名刀  白露しらつゆ…だよ!」ドヤぁと言わんばかりの笑顔で言った。

「もしかして自分でつけたな」

返ってくるのは冷めた返事。

「そうですけど?良いでしょ?」

「センスない」

「ひどい!」

めちゃくちゃ考えてつけた名前なのに!

てか敬語は?まあ良いけど。

「先生が持つにはもったいないんじゃないんですか?」

くすくすと笑いながら言ってくる。

「失礼な、君よりかは適しているよ」

ファルカめ、めちゃくちゃ言ってくるじゃんか。

わたしは持っていたパンを食べ終え、見回りに向かうようにする。

「先生、もう行くんですか?」

「ん、そだよ。見回りしないといけないからね」

その時だった。

空が突然暗くなり、辺りは騒然となった。

急なサイクロンではない。だったらスコールか?と思うだろう。

だが、ここは熱帯に属しているわけではない。

そして人々は空を見上げる。そこには美しい鱗を持つ、輝かしい龍がいた。

生徒や人々は、

「終わりだ…」「早く逃げないと!」「今日が命日か」

などと騒いでいる。

その中で1人的はずれな人物がいた。

「……ウドンじゃん」

そう、わたしである。


      ◆◆◆


 「サリア様どうなさいます?」

王国騎士の1人バルカンは英雄王を前にしてそう言った。

先程、魔法学園に現れた白龍の対処について報告をしているのだ。

「そうだね…でも学園には信頼できる教師が2人もいる」

サリアは戦友と妹を思い浮かべて言う。

学園の方に目をやると白龍と対峙する少女が見える。

「一部だけでも兵を出したほうが…「その必要はない」

サリアはバルカンの言葉を遮って言う。

「シアなら簡単に終わらせれるさ」

「さ、左様ですか…」

バルカンは笑顔のサリアに戸惑いつつも、その場から去っていった。

「さてさて、シア、頼んだよ」


      ◆◆◆


 「誰がウドンだ?小娘?」

え、聞こえてたんですか?てか、ウドン知ってるんだ。

「いやー似てたもん」

「黙れ、儂に物申すなど500年早いわ」

うっっざっっ!!

思ったこと言っただけでキレましたよ、このじじい!

「で、何が目的なの?」

わたしはイライラしつつも目的を聞く。

「蹂躙だ。意味はない」

「止めるって言ったら?」

「殺すに決まっておろう」

この老害はダメだ。まるで話が通じない。

王都をめちゃくちゃにされる前に殺ってしまおう。

白龍は高度を上げ、見下ろす。

「人間ごときが龍の住処に手を出して、ただで済むと思うなよ…!」

おっと、何か事情があるようだ。

半殺しで許してやろう。

「残念、止めるからね」

ファルカに、下がっててと言ってから戦闘態勢に入る。

こうなればドラゴンスレイヤーになりましょう!


      ◆◆◆


 白龍は刀を構えたわたしに向かって嘲笑する。

「小娘、死にに来たのか?」

「なめられてもらっちゃ困るなあ」

「図に乗りおって!」

うっわ、すぐキレる。これだから老害は。

白龍は焔を吐く。

「焼き散れぃっ!」

「水魔法  マイムウォール」

水の障壁で焔を遮る。

あんなん食らったら服が焼けちゃうじゃん。

それじゃお返しと行こう。

龍の硬い皮膚には炎、雷、風といったものが通らなくなっている。

それがこの世界で龍が強いと言われる所以だ。

だから、わたしは”普通の魔法”は使わない。

無属性魔法ゼロマジック  アイアンレクトッ!」

瞬間、淡い水色の衝撃が白龍を襲う。

舐めきっていた龍だが、鱗は完全に壊れてしまっている。

「貴様ぁ…どこからそんな魔力が…」

「さあね。でも龍さんはそれより強いんでしょ?」

「何を根拠にだ」

「”人間ごとき”の魔力だからねぇ~」

「その減らず口!封じてやるッッッ!」

減らず口はどっちのことやら。

しかし、わたしも煽りすぎたかもしれないや。

龍は再び口を開き、そこに凄まじい魔力が溜まっていく。

「ディメンションコラップス!!!」

そして放出。

魔族と変わらないほどの高威力。

これを食らってしまえば、いくらわたしといえど危ない。

よって全力で防ぐ。

「エクリプスヴァニッシュ」

放たれた光線はわたしに届くこと無く消失していく。

わたしが持てる最強の防御魔法 エクリプスヴァニッシュ。

これは向かってきた魔法攻撃全てを無かったことにできる。

相手の魔力もその分回復するけど自分にダメージはない。

「儂の攻撃が消え失せただと…」

「さてさて、終わりにしますか」

わたしはニヤっと口角を上げると刀を持ち直す。

せっかくのいい機会だ。ファルカに剣技を見せてやろう。

空中であろうと関係ない。

さあ、とくと見るが良い!

わたしは龍に斬りかかる。

正面

もちろん躱される。

しかし、正面から斬るのが目的ではない。

すぐさま左手に持ち替える。

逆手持ちで斬りかかる。

斬撃が発生し、龍の首筋をかすめる。

「ぐおぁっ!」

鮮血が吹き出し、バランスを崩す龍。

「あ、やばい」

龍は落下していく。

思っていたよりアイアンレクトが効いていたようだ。

落下地点には寮があり、生徒たちがまだ避難の最中だ。

「風魔法  風天の導き!!」

わたしは風魔法で龍をとらえる。

風のヴェールが包み込み、上昇していく。

「とりあえずっと…」

わたしは辺りを見渡し、開けたところを探す。

「あったあった!」

騎士団の訓練場がたまたま空いていたのでそこにしよう!

怒られるでしょ?だって?

まぁ…お兄がなんとかしてくれるでしょ!

この龍重いからもう落ちそうだししょーがない!

ドッガアアアアアアーーーーーンッッッ‼‼‼

騎士団の訓練場に巨大な音が響いた。


      ◆◆◆


 「なんだなんだ!」「敵襲か!」

ぞろぞろと騎士たちが出てくる。

なんかすいませんねぇ。

「この龍倒したんですけど、置くところがなくて~」

軽い感じで言う。

「は?」「ウソだろ」「あんなチビっ子じゃ勝てるわけねえよ」

誰も信じてないやんけ。

こっちは被害が出ないように頑張ったんですけど!?

「お前ら、サリア様の妹君になんてことを言うんだ!」

騎士のうちの1人がそう言った。

誰ですか?

「バルカンはこんな子が倒したって信じるのか?」

「サリア様はシア様が龍と対峙しているのをを見て、我々を動員させなかったのだ」

「頭の固いやつめ」

呆れたようすで騎士は、バルカンって人に言ってるけどさぁ

頭が固いのはお前らだからな!

なんて腹を立てていると陽気な声が聞こえてきた。

「シア~1日ぶり~」

そこにはお兄、サリア・レスターヴがいた。

「「「「サ、サリア様ぁっ!?」」」」

まぁその反応はしょうがない。

「お兄、なんで来たの?」

「だって、勲章ものレベルの偉業を達成したからね。王が出向かないといけないでしょ」

「ただ来たかっただけなんでしょ」

「そうとも言うよ」

全く…おせっかいな人だ。



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