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第一章 勇者パーティーの魔法使い

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 いよいよアルカンタラと見るリーフの旅立ちの日が来た。

「待たせてすまんかった。ほらアルカンタラ、お主の身分証明書じゃ。」
 アルカンタラは国王から身分証明書を受け取る。羊皮紙にビッシリと文字が書かれている。

「お、サンキュー。これが例の身分証明書ってやつか……ん?」
 アルカンタラは身分証明書をいぶかしげな目で見る。
「おい……俺の誕生日882年なのに982年になってるぞ……」

「仕方ないじゃろ。本当のことを書いたら大変じゃぞ? お主の見た目で118歳なんて怪しい男を入れてくれるギルドなんてないわ」
「うー、まぁそうか。しかしまさか100歳もサバを読むことになるとはな……まあ助かったぜ」
「こらアルカンタラ! こんな身分証まで作っていただいて、しっかりお礼を言いなさい」
 ミルリーフはアルカンタラの頭をぐいっと下げる。

 こうしてアルカンタラは無事、身分証明書(偽造)を受け取り、『アムハイナ王国公認 王宮魔法使い』というを肩書を手に入れた。
 これがなければ冒険者ギルドに登録することもできないのだ。

「無くしちゃダメよ! 大事に持ってなさい」
「うるせえな、お前は俺の保護者か? わかってるっつーの」
 そう言いアルカンタラはもらったばかりの身分証明書を雑にポケットに押し込む。

「……ねぇ、たった今、大事に持ってなさい、って私が言ったのを忘れたの……?」
 グシャっと音を立てしわくちゃになる身分証を見て、ミルリーフは大事なものは私が保管しよう、と思った。

「まったく、こんな雑な原始人と冒険なんてできるのかしら……」
 先行きに不安を感じるミルリーフだった。

「それでは気をつけて行ってくるんじゃ。何か困ったことがあったらアムハイナに戻ってくるんじゃぞ?」
 優しいねぎらいの言葉をかける国王。

「ふふ、気をつけて行ってこい。ワシがもう少し若ければ一緒に行きたいところだったんだがな」
 ペドロ長老も見送りに来ていた。

「おう、いろいろと助かったぜ」
「それでは、行って参ります!」

 アルカンタラとミルリーフは王宮を後にする。
 最新の鎧ももちろんあったのだが、アルカンタラは元々の古い鎧のまま出発した。
 今では古い鎧だが、仲間たちの思い出の詰まった鎧で冒険に出たいという気持ちがあったのだ。
 魔法陣の入れ墨はしっかりと包帯をグルグル巻きにして、外から見えないように隠した。

 ◇

「そういえば……」
「ん? どうしたの?」
 ミルリーフはアルカンタラが何かを言いたそうにしているのに気づく。

「いや……実は出発の前に一度ソーサーやアゼリの墓参りにでも行こうかと思っていてな」
 アルカンタラは少し恥ずかしそうに言う。
「あー、確かにそうね! アルカンタラにしては名案じゃない。これから世界を救いに行くって言うんだから、勇者に報告しに行くのは当然よね! おじいちゃん、おばあちゃんもアナタが来てくれたら嬉しいと思うわ」

 こうして2人はアルカンタラは発つ前にソーサーとアゼリの墓に寄ることにした。
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