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第二章 冒険者ギルド

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「当たり前でしょ? パーティーなんだから。おじいちゃんやおばあちゃん達とも泊まったり野営したりしたんじゃないの?」
 アルカンタの予想外の反応に首を傾げるミルリーフ。

「そ、そりゃもちろん泊まったことはあるが……アイツらはガキの頃から知ってたし……」
 歯切れが悪くなり、顔を赤くするアルカンタラ。

「あら? 何照れてんのよ? アルカンタラはお子ちゃまねぇ!」
「う、うるせぇ!!」
 いたずらに笑うミルリーフに怒鳴りつけるアルカンタラ。

「俺はその辺の原っぱで寝る!」
「何言ってんのよ! 今は100年前じゃないのよ! 街中で寝てたらすぐに自警団が飛んでくるわよ!」
「く、くそぉ……住みづらい世の中になったもんだ……」
 アルカンタラは頭を抱え、自分が本当に100年間眠っていたのだと再認識をした。

 そうして2人は手ごろな宿にチェックインする。
 
 はじめての近代的な宿にアルカンタラは興奮した。
 アムハイナ王国で過ごした王宮の一室ほどではなかったが、小綺麗な二人部屋だった。

 蛇口をひねれば熱いお湯の出るシャワーには、壁の裏に炎魔法使いでもいるのじゃないか? と不思議に思った。

 お湯に温めたり、電気のエネルギーは今ではすべての資源エネルギーを使っていると言う説明をミルリーフを再度した。

「だから今では魔法使いじゃなくても、火も電気も使えるわ」
「うーん、本当に便利な世の中になったもんだな」

 100年前にはなかったことだ。戦士や魔法使いが弱くなった一方、科学の発展は目覚ましいものがあった。

「ふふ、目が覚めて結構たったけど、アルカンタラの目には今の時代はどう映る?」
 ミルリーフは宿の椅子に腰を下ろして質問をする。

 アルカンタラは少し考え込む。昔と比べ医療も発達し、怪我や病気で命を落とす人も減ったと言う話を聞いていた。
 食べ物に困ることもない、間違いなく良い時代だ。

「ああ、いい時代になったと思うぜ。これもソーサーが魔王倒したおかげだ」
「もう! アルカンタラもその勇者パーティーでしょ! もっと誇りを持ちなさいよ?」
 いつも通り勇者パーティー時代の自分に関しては自虐的なアルカンタラを叱りつける。

「ねえ、100年前の勇者パーティーにはどんなメンバーがいたの? おじいちゃん、おばあちゃんにアルカンタラだけじゃないでしょ?」
「ああ、俺たちは5人パーティーだった」
 勇者ソーサー、女賢者アゼリ、魔法使いのアルカンタラそして、ターナーとジャッジだ。

 アルカンタラは昔話を始めた。
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